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【七人目】

 視界に映るセンサー系は全て無事。負傷箇所は左腕ぐらいのものか。

 喧騒と銃声が幾重にもなって充満する激戦区に、二人の機械人形(アンドロイド)が向き合っていた。

 片方は白、全身の色という色がすっぽりと抜け落ちてしまったかのような純白。髪も瞳も服装すらも白く、肌の色だけは若干人間らしく色づいているが、所詮はその程度。左腕を負傷しているようで、時折、折れ曲がった左腕から紫電が弾けた。

 対する相手は黒、どこまでも深い闇の色だ。かろうじて人の姿を保っているものの、こちらは無傷の状態だ。だが数発ほど白い機械人形から拳を貰っているのか、胴体部分がベコベコに凹んでいた。チカチカとつるりとした頭部らしい球体に、二つの赤い光が浮かぶ。


「【説明】それではもう動けまい。【推奨】投降」

「…………」

「【推奨】当機への降伏を」

「……………………」

「【疑問】聴覚機能に問題でもあるのか?」


 白い機械人形が何度か呼びかけるも、相手はうんともすんとも言わない。

 仕方なしに白い機械人形は右手に残した兵装を展開して、機関銃を装備した。残弾数は五。もうほとんど使えないと言っても差支えはないが、致し方ない。

 銃口を相手の機械人形に向けると、機械人形はベコベコに凹んだ胴体からなにか円筒状のものを取り出した。ガラスケースの中に収まったそれは黒々と輝いていて、白い機械人形の人工知能がすぐにあれの正体を予測する。


 ――【予測】大容量バッテリー。【戦術】当機を巻き込んでの自爆。【推奨】退避。

「【拒否】退避は認めない」


 人工知能が下した結論を跳ね除けて、白い機械人形は命令を更新する。


「【命令】【更新】対象機器の鹵獲(ろかく)

 ――【命令】【更新】対象機器の鹵獲、設定。


 自爆などさせるものか。

 いくら機械人形には感情がないと言っても、自爆だけはしてはならない。それは機械人形の尊厳を踏みにじるようなものだ。

 白い機械人形は自爆を止める為に突っ込む。機関銃で牽制するように相手の腕関節を狙って引き金を引き、銃弾は見事に相手の腕関節を破壊した。

 黒い光を放つバッテリーが飛んでいく。白い機械人形は転がるガラスケースに狙いを定めて、


「【展開】一方通行(アクセラレーション)


 踏みつける。

 ぐしゃり、とガラスケースは簡単に潰れて、自爆装置が起動する。だが白い機械人形が展開した兵装は、あらゆる攻撃を無視するものだ。爆発程度では傷一つつかない。

 はずだった。


「【驚愕】この数値は?」

 ――【予測】小規模のブラックホールと推定。【推奨】退避。


 足元から地面が崩れるような感覚に、白い機械人形は堪らず膝をつく。

 ブラックホールが意図的に作れるなんて聞いたことがない。そんな技術、いつのまにできたのか。

 嘲笑うかのように白い機械人形を見下ろす黒い機械人形は、用は済んだとばかりにくるりと身を翻した。

 その背中を追いかけたかったが、どうしてもブラックホールの呪縛からは逃れることができずに、白い機械人形はそのまま闇の中に飲まれて消えた。


 ――機械兵団第一大隊隊長、ユーバ・アインスの消失を確認。


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