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青い自販機と黒い猫(後編)

どこへ行くのか聞いてくる親を適当にあしらって、俺は家を飛び出した。

 途中のコンビニで猫用のおやつを買って、そのままあの場所へ向かう。

 傘と体を斜めにして坂を駆け上がる。

 靴に踏まれた水が勢いよく跳ね上がる。

 自販機につくと、そこには猫の姿は無かった。俺はとりあえず、猫の逃げていった雑木林の方を探すことにした。

 夜の雑木林はかなり暗くて、気をつけないとあちこちに張っている木の根につまづきそうになる。スマホのライトをつけながら探すことにしたが、充電はあと30%しか残っていなかった。少しでも早く見つけないと、と焦るのを我慢して慎重に歩く。

 時間が経つにつれて、だんだん雨が強くなっていくのがはっきりと分かった。雨粒が木の葉にぶつかる音と時折近くの道路を通る車のヘッドライトが、俺をよりいっそう不安な気持ちにさせる。靴にもじわじわと雨水が染み込んで来た。

 だめだ、全然見つからないと途方にくれていたその時、一瞬、遠くの暗闇の中で緑色のものがキラリと光った気がした。居た!俺は駆け出したい気持ちをぐっと堪えて、ゆっくりとそちらへ向かう。 草むらの茂みの中で小さくなっていた。

 俺はさっき買った猫用のおやつを開けてやった。黒猫はちょっと匂いを嗅いだあと、むしゃむしゃ食べ始めた。夢中で食べている隙にそっと背中を撫でてみると、温もりが伝わってきた。


 長かった梅雨も終わり、夏がやってきた。

 部活のみんなはやっとプールで練習できると喜んでいたけれど、俺は少し憂鬱だった。他のみんなに勝てる気がしないからだ。

 準備運動が終わり、プールに入ると久しぶりに冷たい水の感触が出迎えてくれた。

 泳ぎだすと、想像とは違って予想以上にすいすい泳げている気がする。前よりも明らかに泳ぎが安定していた。タイムを計ってもらってもう一度泳いでみると、前の自分のベスト記録よりもずっと速かった。「いつの間にか出来るようになってるよ」、という声がどこからか聞こえた気がした。


 今日もいつものように自転車に乗って学校へ行く。予想は、もちろん“居る”だ。

 坂に入る前に目いっぱい助走をつける。太ももに力を入れ、ペダルを回す。太陽がジリジリと背中を照りつけ、汗がにじんでくる。でも、不思議と嫌じゃない。―行ける。坂の上が見えてきた。もうちょっと。

 そして、青い自販機の上には黒い猫が・・・居る!

 両方とも“勝ち”だ、と思って自然と笑う。百円玉を入れ、ボタンを押した所である事に気が付く。



 ――息があがってない!



 ガコン!!

 という音と共にジュースが落ちてくる。

 それを1口飲むと、火照った体に冷たさが行きわたるのが分かった。もうすぐ初めての大会だ。けど大丈夫、俺ならいける。青い水でいっぱいに満たされた会場のプールで泳いでいる自分を想像していると、黒猫が近寄ってきてくれた。また口に何かくわえている・・・なんだか嫌な予感がする。

 俺の前まで来て自慢げな顔でポトリと落としたのは…まさか、また、トカゲ!?

 いや、違う…これは…ヤモリ……!?!?


 って、そういう問題じゃないっての〜!!


 俺の叫びが夏に吸い込まれていった。

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