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彼女が笑っている明日  作者: 月曜放課後炭酸ジュース
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第一話

鬼の居る明日が第一作目。

こちらが第二作目です。

よろしくお願いします。


 僕は最低な人間だ。

 曖昧で、盲目で、いつも迷走していて、状況が変わるのが怖くて、戯言で有耶無耶にしながらも、信じられないくらい酷いことに良い人間になろうとしてる。

 特別な力も、根拠も無いのに誰かを救おうとしたり、敵に立ち向かおうとしている。

 その度に挫けて、助けてもらうどころか、誰かに助けてもらっている。

 そんな僕だ。惨めな人間なのだ。


 反国家組織に入ってから一ヶ月も経っていない、結乃と相棒になってからまだ日も浅い夏休み終わり近くに、僕が後輩を助けるために、信じるために抗う物語だ。

 駄目駄目な僕なんかには期待しないでおいてくれることをお願いする──だけども信じてはいてくれ。


 最低な僕はいつだって全力だ。

 そんな僕の冒険譚にも満たない苛烈な人生譚──信じながら見ててくれると僕は嬉しい。


 *


 夏休みも終わりかけていた頃、僕は黒髪の短髪で頭は良いが、何事も軽く考えてしまう癖のある少年であり、夏休みの間に一事件に巻き込まれた──塩竈しおがま 太和たいわと「夏休みはもう終わりだ! バイトをして稼いだ金を使って駅前で遊び尽くそう!」大会をしていた。


 ボウリング、ゲーセン、映画、カラオケを今日一日だけで全てやり尽くした。


 朝の六時から始まったこの酷い大会は男子二人だけでやったのだ。

 なので途中で虚しくなることも暫しあった。なんとか耐えたが。


 そんな感じで遊んでいるとあっという間に夕方という帰る時間になってしまったので、遊べる場所が沢山ある駅前から郊外の中の郊外にある地元に塩竈とバスで帰ろうとした。

 しかし塩竈は唐突にこんなことを言ってきた。


「あーすまん。俺はちょっと他の場所にまだ用事残しちまってるんだ。だから椴松は先に帰っててくれ」


 だから僕は仕方なく、一人でバスに乗って郊外の中の郊外である地元に帰ることなった。


 しかし、バスに乗ったアホな僕は、アホだからバスの椅子に座って数分したら、アホみたいに寝てしまっていた。

 うむむ、アホ満載になってしまった。


 そして目を覚ました時、僕は全く知らないバス停を過ぎようとしていた。

 「うわやべ! ここどこだよ!」とバスの中で言いそうになった僕は、その気持ちを抑えつつ、とりあえずバスから降りた。

 知らないバス停で降りた──と思っていた。


 しかしなんと降りてみたら、僕はその場所を知っていたのだ。

 僕が以前に通っていた母校の目の前にあるバス停だった。

 母校である十瀬文中学校とおせぶんちゅうがっこうのまんま目の前にポツンとあるバス停。


 とにかく。

 降りてみたら知っている景色で僕は安堵した。

 そりゃあそうだ。

 前まで毎日見てきた見慣れていた景色なのだから。

 今となっては「懐かしい」になってしまっているが、特段不安とかそういう負の感情にはならない。

 帰り道も普通に分かるし。

 よし、しかもここからなら歩いて帰れる。まだその範囲内だ。

 不幸中の幸いというものを実感する。


 そして僕は自宅の方向へ歩き始めた。

 折角だからって母校に寄るというのもなんだが面倒くさいし、恩師がいる訳でもないので、普通に帰ることにした。

 三十分ぐらい歩けば着く。


 *


 ちょっと話は変わるんだけど、僕の母校である中学校は割と大きな坂の上にあるのだ。

 しかも大半の生徒の通学路の途中にその坂はあっちゃったりする。



 そこは結構急な坂のため、自転車通学をしている人なんかは、この坂だけは自転車から降りて帰らなきゃけないのだ。

 確か以前は乗っても良かったのだが、一回交通事故が起きてしまい、駄目になったような話を聞いたことがある。


 まあ自転車通学ではなく、徒歩通学だった僕にはあまり関係の無い話だった。

 その坂を登校時間には登り、下校時間には降りていただけだったし。

 特段事件も見たことない。

 ……ん、いや今思えば、自転車に降りなきゃだけど、普通に乗っていた奴とかいたなぁ。


 有り体に言えば『校則違反をしていた』奴。

 先生も面倒くさいからなのか、だいぶ見て見ぬふりしてたから、違反してる奴らがいたんだろうなぁ……いやそれは違うか。

 違反を咎めない先生が悪いんじゃない。

 そもそも違反してる奴らが悪いんだ。

 先生に責任転換をしてしまうのは、それは違うな。

 そんな考えはよろしくないな。


 こんな風に僕がこんなつまらない話を脳内でしていた時、坂をほぼほぼ降り終えた時、ある人が……いいやある奴と言ってやろう。

 なんでってそれは今、話題にしていた自転車を降りなきゃいけない坂で自転車に乗っている『校則違反をしていた』奴なんだから。


 ポニテな奴なんだから。


「うおおぉぉ? お?! あれれれれ!」


 そのポニテな奴は僕を認知した瞬間に、奇声の様な元気な声を出したながら、僕に近づいてきた。


「先輩じゃないですか! 椴松 竜二先輩じゃないですか!! その横に跳ねてる変な髪型は!」


 僕の名前を呼びながら、彼女は僕の目の前で自転車のブレーキをかけて、止まった。

 そいつは──僕の中学の時の後輩である唄坂うたさか 望々《もも》だった。

 親友の一人でもある。


 てか変な髪型って、人のことを覚える目印をそんなのにするなよ……。


 *


 僕はほぼ半年ぶりの再開に一瞬彼女が誰か分からなかったが、分かった瞬間に「おぉ」と感嘆の声を漏らしてしまった。


「おま、お前はぁ!」


「ふふ、そうですよ! 椴松先輩の後輩ちゃんの唄坂 望々ですよ」


 希望を唄うかのような少女ですよ──と望々。

 決め台詞みたいな言葉を僕に言ってきた後、彼女は自転車から降りて、僕の横に経った。

 黒髪な彼女のポニーテールが揺れる。


 セーラー服は黒がメインで、ハッキリとした濃い赤のリボンが目立つ。

 しかし一番目立っているのは彼女のニッコリとした笑顔だ。

 彼女の眩しいぐらいの笑顔は確かに希望だ。希望を唄うかのような少女だ。


「どうしたんですか? こんな所で──はっ?! もしかして椴松先輩の頭が悪くて……悪過ぎてまた中学生になるんですか?」


「うるさい! 確かに僕は頭は悪いが、そこまでではないし、そもそもそんな事出来ないだろ! 普通は!」


 そういやこいつは生意気な奴だったんだ。

 希望というより生意気を唄う少女だった!


「で、結局なんでこんな所にいるんですか? 暇潰しに中学校にでも訪れてたんですか? 青春である夏休みの一日を持て余してたんですか?」


「──はぁ……」


 ニヤニヤと嫌な表情をしてくる望々後輩に僕は嫌気がさしながら、事のあらましを伝えた。

 変に生意気言われないようにハッキリとはさせず、有耶無耶に。

 曖昧に。


 *


 ふんふん、と歩き、僕の話を聞きながら頷く少女──望々はこう言ってくる。

 あ、因みに望々の自転車は僕が持っている。……というより、持たされている。


「成程ですね。やーっぱり先輩は頭が悪いだけじゃなく、アホだったと言う訳ですね」


 結局は生意気を唄われるんだなぁ、と思いながら僕は喋る。


「いやはやバスに乗るってのが慣れてなかったのか、ちょっとしたミスを犯しちまったんだぜ……」


「まあそういうおっちょこちょいというより、ちょっと抜けてる所も先輩らしくて私嫌いじゃないですよっ!」


「あーはいはい。ありがとうありがとう」


 はーーー……可愛いけど、ウザイ。ポニーテールは揺れてるけど、僕の怒りを堪える魂もウザさで揺れている。


「んもう! なんなんですか。その冷たい対応は!」


 私はですね──と言葉を繋げる望々。

 僕の瞳を上目遣いで見ながら、少しだけ頬を赤らめながら彼女は言う。


「私と仲良くしてくださってた赤倉先輩、塩竈先輩、椴松先輩……先輩方が卒業しちゃって、私……私……ちょっぴりだけど寂しかったんですよ!」


 OH! ──NOッ!

 んん、ちょっと衝撃でよろけてしまった。


「お、おう……。俺もお前みたいな大好きな後輩と関わる機会が激減してしまったのは、本当に寂しかったぞ」


 僕は戸惑いながらも、この不本意ながらにギャップ萌えをしてしまった事実が露出しないように極力冷静に言葉を紡いだ。


 僕の言葉を聞いた望々は「へへ、それは嬉しいですね」と言いながら、僕に一歩近寄ってくる。

 耳元とかに囁いてきた訳では無いが、望々は小声で次の言葉を言ってくる。起承転結なら転になりそうな台詞を──いや全体の物語的にはやはり起なのだろうか。


「それはそれとしてですね、椴松先輩。実は相談があるんですよ……あまり人には言えない系のやつなんですが……」


「……ん? 僕なんかが聞いてもいいのか?」


 僕は望々に問う。そうすると彼女は俯き加減に言ってくる。


「そうあまり自分を卑下しないで下さいよ。椴松先輩、私は先輩のことが好きなんですから──私は私が好きなものを無下、卑下されるのは許せないです」


 望々は下を向きながら、歩道を見ながら、真剣な顔でそんなことを言ってくる。


 いやお前自身が僕のことを無下にしまくってるじゃねぇか、卑下しまくってるじゃねぇか、と言いかけたが、僕はなんとか既の所で堪えることが出来た。


「おう、じゃあ分かった。なんでも話してくれ。相談は聞くし、もし僕が出来ることならお前を、望々の困り事を全力で解決してやるよ」


「はは。なんとも頼もしい。ありがとうございます。それでですね。椴松先輩。その相談というのは」


 悪魔についてなんですよ──と望々。


「踊りの悪魔についての相談なんですよ。──悪魔についての相談です」


 僕の足は止まる。彼女の足も。前に進むことをやめる。


「……は?」


 僕は素で返答してしまった。


 僕達の冒険譚にもならない人生譚がまた始まる、僕はそう感じた。

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