クリラプ別話
ー別話
コウタとユリ子が手をつないで歩いていく。
微笑みながらタケガミは見送った。
警備員二人が目の前を通り過ぎる。
まばらな通行人が通り、エスカ地下街のジングルベルが寂しげだ。
18時30分にタケガミは撤収を決めた。誰も来そうにない。
春菜と小林のTwitterに報告する。
ーファンにクリスマスイブに予定の無い人は0でした!ー
カフェドクリエに入る。
ここの店員は若い兄ちゃんだった。
「ホットラテのトール……トーストを」
兄ちゃんはタケガミを見た。
「これ。僕から気持ちです」
トレイにクッキーが載せられた。
「ありがとう。振られたように見えます?」
「多分…」
タケガミは事情を話した。
「コウタさんとユリ子さん。忘れられないクリスマスイブになりましたね!」
「だろ?」
「僕。春菜さんと小林さん。チャンネル登録します。知らなかったけど、タケガミさんが応援してるなら、悪いはずありません」
「そう言うもんか?」
「そう言うものです」
「君は彼女は?」
「居るんですけど。大喧嘩してしまいまして。謝ったんですけど返事がなくて…つらいからバイト入れました」
「終わったら会いに行け。会ったら許してしまうから、会いたくないんだ。女の子ってそう言うもんだ」
「はい。タケガミさんの言う事なら信じられます!」
ラテだけ持って席でトーストを待つ。
先客のテーブルからひとつ開けて座った。
「今度はどんな女に入れあげてるの?」
ギョッとして、ひとつ向こうのテーブルを見る。
顔が上がった。
「邦子!お前何やってる?」
「イベントに来たんだけど?クリスマスイブに予定の無い近藤小林ファン。元カノは駄目って書いてなかったから来たけど?」
「次期社長の御曹司はどうした?」
「ロマンが無い男ってつまんない。予定調和のかたまり。やることも言う事も予想どうり。例え、小説の次でもロマンが有って予測不能な方がましだと気付いた」
「また。繰り返すのか?あのラブコメを?」
「最終回が要るでしょ?小説家さん?」
「お前。本気か?」
「本気だけど?書いてくれる?」
タケガミは天井を見た。
見下ろすと、邦子が目を閉じて唇を突き出していた。
「ズルイな……ラブコメの最終回にバットエンドなんて書けねえだろ?」
タケガミは顔を寄せて優しくキスをした。
クリラプ別話完結