クリラプ2話
ー2話
「コウタくんは、近藤さんのどこが良い」
「そうですね。歌が上手いです」
「うん。でも下手だとか、才能ないとか言う書き込みが有るんだよね」
「嫌がらせですよ!そんなの!」
「人の感じ方は違うんだな。自分が正しいと思う事を、違うと考える人もいる。どっちも真実だ。否定しちゃいけない。自分の信じる事を、信じない人に押し付けるとね……戦争になるんだ」
「タケガミさんは腹が立たないんですか?」
「君はいくつだい?」
コウタは戸惑った。
「17です」
「僕は55になる。17の時は腹が立った」
コウタはタケガミを見た。
「どうして、今は腹が立たないんですか?」
「意味がないと教えられた」
「誰に?」
「腹を立てて喚いてる連中にね。ただ喚くだけで、どれだけ喚いても何も変わらない。何も解決しない。気が済んだら放置する。そしてまた喚く。なら、何かを変える事を考えようよ。解決する道は有るのか考えようよ。喚く時間にね」
コウタは、ユリ子がマサキにクリスマスイブに誘われて断れないと言われた時、喚いた。
父親の仕事の取り引き先だからと言ったからだ。
確かに、喚いて何も考えなかった。ユリ子の気持ちも立場も。
「タケガミさん。僕。帰ります」
「さては予定を思いだしたな?」
「はい。大切な予定を」
タケガミさんは、コウタの肩をポンッと叩いた。
「急げ!まだ間に合う」
コウタは頷いて、タケガミさんの手を握った。
「僕。握手が好きになりました!」
「それは良かった!」
振り返ると、ユリ子がいた。
タケガミは言った。
「クリスマスイブに予定がない近藤ファンか小林ファンですか?」
「コウタとデートする予定の小林ファンです」
「お二人とも、参加資格を満たしていません。参加をお断りしますが?よろしいですか?」
くりすますイブらぷそでぃー完結