第7話 魔法
特に言うこともないのでシンプルに行きましょう
それでは第7話…お楽しみください!
「学園長…どこにいるんだろう…?」
もう少しで日が暮れそうな時間に学校の廊下を歩きながらポツリと呟いたのは例に漏れずアクトである。
夢?の中で会話したソフィアが学園長に聞けば教えてくれると言っていたがその際違う名前で呼んでいたのだ。
「ユカルド・ユーステリアか…ユーステリアって学園の名前と同じ…?」
ソフィアの言っていたことを思い出しながらどんどんと疑問の渦に飲み込まれていき…
「アクト様?」
セレスに声をかけられてなんとか自分の中の疑問の渦から脱することができた。
「セレス…どうしたんだ?」
「どうしたも何もやることがなくてとりあえず歩いていたらアクト様を見かけたから声をかけたのよ。」
どうやら抜け出したのがバレたわけではないらしいと少し安堵した。
「アクト様、少し時間をもらってもいいかしら?」
「別に構わないけど…」
「善は急げよ!ほら、こっちこっち!」
時間をくれると言われすごく嬉しそうに満面の笑みを浮かべながらアクトの手を引いて走り始めた。
「え!ちょっ!待てって!」
セレスに連れてこられた場所は学園の屋上だった。
「なんとか間に合った…ほら見て、アクト様!」
そういいながらセレスは指をさしていたのでその先を目線で追った。
「ほぉ…こりゃすごいな…」
そこには世界をオレンジ色に染め上げんと輝きながら地平線の彼方へ沈んでいく太陽が見えたのだ。
セレスのほうに視線を向けながら感想を述べると「でしょ?」といいながら笑いかけて来た。
夕陽に照らされながら笑うセレスに思わずドキッとして慌てて視線を逸らした。
「どう、アクト様?少しは落ち着いたかしら?」
セレスに言われて自分の中の疑問の渦がいつのまにか消えていたのに初めて気がついた。
「あぁ、落ち着いたよ。ありがとな」
素直に感謝を伝えると照れたように顔をうつむかせながら「アクト様のためなら…」などとぶつぶつ言っていたけど今はなぜかそういうところも可愛らしく感じたが口にはしない。だって…それで調子に乗られると面倒だから…
その後セレスは行かなければならない場所があるとのことで別れ再び学園長探しを再開した
「さてと…セレスのおかげで落ち着いたし改めて学園長のいるところは…」
学園長のいそうなところなどもうすでに全部まわったあとなのでどうしようか悩んでいるいちにソフィアとの会話を思い出した。
「魔法「念話」か… ソフィアにも聞いてみようかな?念話って言ってるくらいだし念じれば出来るのかな?」
やり方を聞かなかったことを軽く後悔しながらとりあえずソフィアに向かって念じながら声をかけてみた。
『ソフィア?聞こえるか、ソフィア!』
『うるさいですね…一回呼べば聞こえますから…』
呆れたように返事を返してくれてホッと安心しながら早速本題に入ることにした。
『早速で悪いんだけど学園長がどこにいるかわかる?』
『まだ会ってなかったのですか…少し待ちなさい』
『え、あ、あぁ分かった…』
『なるほど、こんな場所にいたらアクトでは見つけられないわけです。』
『どこか分かったの!?』
『えぇ、場所は…空間と空間の狭間ですね』
『………どうやって行くのさ!?』
『どうせそろそろ出てくるので座標的にいうと学園長室という場所で待っていれば会えますよ』
『分かった、ありがとうソフィア』
『……なぜ念話を終了させないのですか?』
『どうやって終了させるのか分からなくて…』
『はぁ…適当に「終了」とか言えば終われますよ』
『あ、ありがとう。終了!』
最後が投げやりっぽかったが無事(?)に終われたからよしとして学園長室に向かい始めたアクトだった…
アクトが学園長室に向かい始めた頃…ユーフェイは空間の狭間でスキルの鍛錬が一段落付き魔法の実験を開始しようとしていた。
「この体ではどのくらいまでの魔法が使えるかな?まずは初級魔法と」
再び1人に戻ったユーフェイはそんなことをいいながら詠唱を始めた。
「我は己の炎を使い、我が敵を討ち滅ぼさん!“フレイムボール”!」
前に出していた手に50前後の火球が現れてそのままいつのまにか出現していた2mくらいのゴーレムに直撃し完全に粉砕してしまった。
ゴーレムはスキルで作り出したものだがスキル「生成」とは微妙に違う。
なぜならユーフェイの持つスキル「生成」は進化し、スキル「創造」になっているからである。
スキルは進化することで全ての性能を大幅に上昇させる。ユーフェイはスキルの鍛錬を終了し魔法の実験を始めたくせに実験体をわざわざスキルで作るという…なんとも真面目な努力家である……
『全く…相変わらずですね、ユカルド』
『その声はソフィアか、よく私のことが分かったね』
念話でソフィアと会話しながらゴーレムを「創造」し、無詠唱での魔法発動ができるか実験をしていた。
『アクトの記憶を見ましたからね…にしても体を変えたなんて聞いてませんよ?』
『そのことを報告しようと思ったんだけどね…この体にまだ慣れてなかったんだ。許しておくれよ』
『はぁ…まあいいでしょう。その代わりに学園なんて立ち上げた理由を教えなさい』
『簡単なことだよ、伝説級装備の核たる「神の一部」を集めるためだ。』
『なるほど…でもあなたのことです。どうせまだあるのでしょう?』
『さすがはソフィア…確かにもう一つあるけどそっち側は全然進んでないからまた別の機会にでも話すよ』
『ではその機会とやらを楽しみに待つとしましょう…あ、それとそろそろアクトがくるのでその狭間から出てきてください』
『あー…分かった。この魔法の実験が終わったら出るとしよう』
念話を終了させて魔法の詠唱を開始した。
「我は主の騎士なり。ゆえにいついかなる時もすぐに馳せ参じる。そのために長き距離を瞬く間に移動する力を与えたまえ!長距離転移魔法 “ディスタンス メタスタシス”!」
詠唱が終わりトリガーとなる魔法名を唱えた途端ユーフェイの体が光ったと思った瞬間別の場所に移動した。
「ほぅ…100kmくらい転移できたか…この体は意外に魔法適性があるのかもな」
少し笑いながら狭間から出ていこうとして立ち止まった。
「…待てよ?詠唱ありで100kmだとしたら10kmくらいなら無詠唱でも行けるか?」
そうして再び魔法の実験が始まったのだった…
「ソフィアは学園長室にいるって言ってたけど本当にいるのかな?」
ソフィアに念話で学園長は座標的に学園長室にいると言われ「座標的に」というのが微妙に気になりながらもとりあえず向かっていた。
「ア〜クト!」
そんな陽気な声と共に後頭部に何かがぶつかり吹き飛ばされた。
「っ…!クリフェン!何しやが…ひぃ!」
声から犯人を言い当てながら後ろを振り返ったら確かにクリフェンがいた。
いたのだが…さらにその後ろに大量の針みたいなものが生えている何かが…でも凄まじい威圧感を放つ何かのせいで糾弾も止まり代わりに情けない悲鳴のようなものが出てしまった。
「さてさてアクト?最後に何か言いたいことは?」
「最後に…そうだな、クリフェン。俺はお前の秘密をいくつか知っている。それをバラされたくなかったらとりあえず落ち着け」
「俺の秘密?どうせブラフだろうが言ってみろ」
会話している間にもクリフェンの後ろにある何かの姿がはっきりしてきた。
そこには……千手観音がいた。針のように見えていたのは千手観音の手だったらしい。そしてしばらくすると手の一本一本が何かしらの武器を装備し始めたのである。
「ク、クククククリフェン?とりあえず後ろにいる千手観音をしまってくれないか?」
「うるさい、話をそらすな。」
千手観音、全ての手に装備完了。顔は「殺る?殺る?」と言っているようにも思える…
「ひぃぃぃぃぃ!分かった!俺が知ってるお前の秘密ってのはお前がこっそりセレスに告白したことがあるってことだよ!!」
言い終わった時に後悔した。なんせクリフェンと背後に控えてる千手観音からの殺気が一気に膨れ上がったように感じられたからである…