第3話 侵食型装備《ギリアス》
どうも皆さん!
最近書こうとしてもどうやってストーリーを進めたらいいのか分からなくなりつつあるかいです…
まぁそんなメタい話はおいておいて…
それでは第3話…お楽しみください!
「《ギリアス》…ってまさか幻の伝説級装備の侵食型装備のことかぁ!?」
侵食型装備は伝説級装備の中で唯一の液体装備であり最強にして最凶と恐れられていた。《ギリアス》は侵食型装備と言われるだけあってありとあらゆるものを侵食することができるが扱いが難しく常に暴走のリスクがあるため扱えたものはいなかったのだが何者かに持ち出されてたらしく、それ以来所在の掴めない幻の伝説級装備となっていた。
「くっ…がぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「アクト!」
アクトの心臓の位置から黒いモヤのようなものが体を侵食するように溢れ出てきた。
「ガァァァァァ!!」
アクトの叫び声が獣の雄叫びのようなものに変わっていた。
歯や爪が獣のように鋭くなり威圧感が跳ね上がっていくのをエザールは感じた。
本能で逃げろと、理性でも逃げなければと分かっているが恐怖で動けないのだ。
「オレノ、テキハ、コロス!!」
アクトの声とはかけ離れた…例えるなら獣の雄叫びのような、腹の底が直接振動させられていると錯覚させるほど低い声で殺意のこもった視線をエザールに向けていた。
「「え?」」
と次の瞬間エザールの首と胴体は分かれていた。あまりのはやさにクリフェンはもちろんエザールでさえ視認すらできず間抜けな声をあげるしか出来なかった。
「ガァァァァァ!」
そう叫ぶと今度はアクトの足元から黒いモヤが溢れ出てきた。
「くそっ!アクトのやつやっぱり暴走しやがった…!」
アクトは暴走すると《ギリアス》を制御できなくなりなんでもかんでも侵食、破壊し始める。そして暴走を止められるのは現状ではクリフェンだけなのだ。
クリフェンが使うのはもちろん普通の装備だ。だが対バステル装備には装着者の潜在能力を引き出しスキルを使えるように作られている。そこは伝説級装備も学園から支給される装備も共通して言えることだ。
そしてクリフェンのスキルは「抑制」実は毎晩アクトは《ギリアス》の制御を、クリフェンは自身のスキルの鍛錬をしていたのである。
「行くぞアクト!スキル発動「抑制」!!」
本来、スキルの発動には詠唱が必要だがそれを省略出来ることから熟練度の高さが分かるというものだ。
「ガァァァぁぁぁ…はぁはぁ…」
獣の雄叫びからアクトの声に戻っていき姿もアクトのものに戻っていった。
「ありがな、クリフェン…助かった」
「いやいや感謝するのは俺の方だ。助けてくれてありがとな」
お互いがお互いに礼を言いながら良い笑顔で寝っ転がった。エザールと遭遇してから決着がつくまで10分という長いようで短い時間が経っていた。
2人の戦闘の一部始終を影で見ながら笑っている人物がいるなど思いもしなかったであろう。
それから数分後…2人は複数の教師を連れてきたセレスたちにより保護された。全身怪我だらけのアクトとクリフェンを見て、そのあとに首と胴体が離れた死体を見て気絶するほど驚いたのは少なくはなかった…
まあそのうち約1名は実際に気絶したようだが
そこからさらに時間が経ち場所は先生のいない医務室
「今更だけどアクトの《ギリアス》って何度見てもエグいよな」
「その《ギリアス》の暴走を止められるクリフェンのスキルもなかなかにエグいけどな」
2人とも3時間しか経っていないのに怪我は全て治り体力のほうも冗談を言えるくらいまで回復していた。
とそのとき医務室のドアを叩く音がした。
「失礼するよ」
「どちら様ですか…って学園長!?」
予想外の訪問者に2人とも驚くしか出来なかった。
「2人とも体調はどうだい?」
「怪我の方は大丈夫です!まだ気怠い感じはしますが…」
いまだ硬直しているクリフェンに代わりアクトが答えた。
「まあそうだろうな」
「はい?と言いますと?」
学園長も物言いに疑問を感じたアクトが質問した。
「医務室の先生…エフト君のスキルは回復系でね。効果は対象の回復力を飛躍的に上昇させるというものでね」
「あぁ…だからすぐに怪我が治ったんですね!それとこの気怠い感じは回復力を上昇させたからですか…」
「おおかたその通りだが少し違う」
「どこが間違っていたのでしょうか?」
「確かに体力は使うが3時間も経てば回復する。だがアクト君は未だに回復しきっていない。なぜだと思う?」
「…っ!」
その理由には心当たりがあった。長時間ではなかったにしろ侵食型装備を使ったあとはいつも何もしたくなくなるほど疲れるのだ。だいたい2時間くらいで疲れは取れるが今回はエフト先生のスキルにより取れ切らなかったのだ。
「では単刀直入に聞こう。君は伝説級装備を持っているね?」
「……はぁやっぱりバレちゃいましたか」
アクトは降参と言わんばかりに手を上げながら認めた。
「そのことについてクリフェン君は知っていたのかい?」
「は、はい!俺のスキルとアクトの伝説級装備は相性が良さそうだから一緒に鍛錬しないかって誘われて…」
いまだに混乱から抜けきれていないクリフェンは独り言のように聞かれてもいない鍛錬の話をしてしたが長くなると察したのかアクトに向き直り質問の続きをした。
「その伝説級装備の名前を聞いてもいいかな?」
「あれ?ユーフェイ学園長ならスキルでもうご存知かと思ったのですが?」
ユーフェイ学園長のスキルは探知系スキルの中でも最上級クラスのレア度を持つ「能力探知」である。それは名前の通り相手の持っているスキルが分かるというものだがもちろん例外もある。
それは伝説級装備により引き出されたスキルである。伝説級装備が引き出すスキルは通常の装備で引き出す潜在能力よりもさらに深いところから引き出すために「能力探知」でさえ分からないのだがそのことを知っている人間は少ない。
「残念ながら私のスキルでは何か強い力を《メガトンヘイト》の近くで感じた程度だよ…」
「そうでしたか…でもそれならなぜ俺が持っているって分かったんですか?」
「あの場にはあのエザールを殺せるだけの装備、それだけの実力のある者は私のスキルで見た限りいなかった。アクト君、君を除いてね。」
「俺を…除いて?」
思わぬところで自分の名前が出てきて学園長が何を言っているのか分からなかった。
「君だけ私の「能力探知」を使ってもunknownと出るだけでほとんど分からなかったんだよ」
「まさかそのときから?」
「実は私のスキルにはみんなに知られていない弱点があるんだよ」
「弱点…ですか?」
唐突に学園長のスキルの弱点の話になり動揺しつつも好奇心が勝ってしまい聞き入ってしまった。
「このスキルは相手の総合力が自分より同等以下のときのみ発動するんだよ…」
「それってつまり…俺の総合力が学園長より高かったと…?」
予想外の事実に信じられず思わず聞き返した。なんせ学園長の総合力は学園内ではもちろん世界的にもトップクラスで高いのだ。
「はじめのころは私でも動揺したよ…でも君が伝説級装備の保有者であると分かった今では納得できるよ。」
「あ!そういえば俺の伝説級装備の名前でしたね。それは…」
「侵食型装備の《ギリアス》。だろう?」
「へ…?」
アクトが言おうとしていたことを先に言われてポカンとしてしまった。
「学園長…なぜそれを…?」
「私の「能力探知」の派生スキルだよ。たとえ相手がunknowであっても私から一定範囲内に5分以上いると派生スキルが発動して能力が分かるというものだよ。」
「スキルに派生スキルがあるなんて聞いたことありませんよ!」
「それもそうだろう…なんせ私が世界で初めて派生スキルを発現させたのだから」
そんなとんでもない事実をなんでもないかのように言ってのけるユーフェイ学園長、さすがっすと心の中でアクトは思っているのを知ってか知らずか話を続ける。
「派生スキルがあるのではないかという話は昔からあったのだよ…ただ誰も発現に成功しなかっただけだ。」
「その派生スキルって伝説級装備にもあるんですか?」
「あるだろうと推測はされているよ。ただ派生スキルの発現条件が熟練度が一定値以上に…つまりかなり使わなければならない。だが伝説級装備はかなりの負担があるから熟練度上げには向いていなくてね…」
「あぁ…なるほど…」
「学園長!学園長はいらっしゃいますか!?」
そのときドアをすごい勢いで開け放ちながら学園長のことを呼ぶ女性…アクトたちの国語の授業の担当であるレーニヴァルト先生が入ってきた。
「どうしたのかね、レーニヴァルト君?」
「学園長、ここにはアクト君とクリフェン君がいます。場所を移しましょう。」
「あ……」
レーニヴァルト先生の言葉でアクトはクリフェンの存在を思い出し目を向けると医務室のベッドで気持ちよさそうに寝ていた。自分には関係ない話ということで再び寝ることにしたのだろう。
「彼らになら大丈夫だ、それに急ぎなのだろう?ここで言いたまえ」
「はっ!小型バステルが30体ほど学園に攻めに来ているとのことです!」
「さ、30体!?レーニヴァルト先生、それって大丈夫なんですか!?」
「アクトさんは少し黙っていてください」
レーニヴァルト先生はいつも生徒に冷たいがそれはこの緊急事態でも変わらないらしい。
「それでユーフェイ所長、どういたしましょうか?」
「し、所長…?」
「小型バステルか…もちろん殲滅だ。迎撃システム3番を使え」
ニヤリと笑いながら学園長はそう言い放った。