第22話 魔術
「ん…」
そう声を上げながら目を開けたのはアクトである
「ここは…あぁ医務室か…どうりで見たことある天井だと思った…」
ついこの間来たばかりだと言うのに医務室が妙に懐かしく感じてしまうのは何でだろうななどとどうでもいいことを考えながら周りを見渡してみるとカーテン越しに人影が見え、自分以外にも寝ている人とがいることに気がついた
「誰だろ…?今日は休日のはずだけど…あれ?それとなんで俺ってまた医務室にいるんだろ?」
「起きたんだねアクト君、君たちが“記憶共有”の反動で気絶したから私たちで医務室に運んできたんだよ」
「ってことは…このカーテン越しにいるのは…」
「あぁ、クリフェン君とセレス君、シャドウ君だ」
「っ!なんか…頭がパンクするみたいに痛いんですが…」
「それはそうだろうね、なんせ魔法の概念と多少忘れられた世界の歴史を直接脳内に送り込んだんだ。まぁ一気に送りパンクしないようにソフィアが情報量の調節を行なっているけどね」
「そうなんですね…あの…それともう一ついいですか?」
「ん?なにかね?」
「10年ほど前にここ、「ユーステリア学園」にメーディアという女の子が来ませんでした?俺の妹なんですが…それと父さん、エデューって人知りません?」
『アクト!?思い出したのですか!?』
「どういうことだソフィア!思い出したって…いつの…まさか10年前のあの出来事をか!?」
『えぇそのようです!なんせ…あの事件より前のことはエデューの“記憶封印”で鍵をかけていたはずですから』
「ちょっ…ソフィアとユカルドさんだけで話進めないでもらえます?俺にも…あクリフェン!」
話についていけず文句を言おうとしたらちょうどクリフェンが起きたのでアクトはクリフェンの方へ行ってしまった
「アクト君!まだソフィアと話があるから行かれると困る…」
「この世の理を歪めこの世ならざるモノよ今この場に姿を現せ!魔術“降臨”!」
アクトが魔術“降臨”を発動させた途端目の前に円形の光の柱が唐突に出現した次の瞬間、その光の柱の中に見た目だと同い年の18歳くらいの少女が現れた
銀髪の腰くらいまである髪にスラッと伸びた手足の美しい少女だった
そしてその顔は驚愕に包まれており、ユカルドも同じ表情をしていた
「これで俺が行っても問題ありませんよね?」
「んな!?ユカルド!今の魔法は…いや魔術とっ!」
「あ、あぁ…しかも“降臨”とか言っていたな…これは至急クルトとギシュルを呼んで話合わねば…!」
「私はクルトを呼びます!ユカルドはギシュルを…」
などと色々騒いでいるがアクトからしたらそんなことはどうでも良かった
「大丈夫か?クリフェン」
「あ、あぁ大丈夫だけど…それよりお前さっきのなんだよ?魔法か?」
「いや…実は俺にもよく分からないんだが魔法とは違う魔術ってやつらしい」
「魔術…?よく分からんがアクトに使えたんなら俺も使えるかもな…!」
『おークリフェン楽しそうだねー!あたしも手伝うから一緒に頑張ろー!』
ファニファが「おー!」と両手に上げて叫んでいて「ここ医務室だから静かにね?」とクリフェンが諭しながら頭を撫でた
「魔法とか魔術のコツを知りたければいつでも聞けよ?でもクリフェンのことだからまず最初は自分で色々やってみたいんだろ?」
「さすがは俺の親友!分かってる!」
アクトとクリフェンがキリッとした表情でハイタッチをした
それをファニファ興味深そうに眺めたあと
『クリフェンあたいともそれやろー!』
「よし、行くぞ!」
そして鳴った音は「パンっ」という気持ちの良い音…ではなく「バキっ」というクリフェンの腕の骨が折れる音だった
「痛ぁぁぁぁぁぁ!!!」
「クリフェン!?」
『え、あ、ごめんクリフェン!』
「スキル“キャリッジリターン”発動!」
「あ、あれ…?痛みがなくなった…というか治った!」
声がした方を見てみるとそこには片手をクリフェンに向けているセレスの姿があった
「クリフェンが苦しんでる顔を見ているアクト様が苦しそうだったから」
「セレス…いやもしかしてニトか…?」
「アクト様…もしかして昔のことを…!」
「なぁアクト…もしかして俺もことも…」
「いや…悪いなクリフェン、まだ全部思い出したわけじゃないんだ」
「そうか…」
クリフェンの寂しそうな顔をみると罪悪感が込み上げて来た
「あ、そうだ!シャドウいるか!?」
「呼んだかい?アクト君」
アクトの呼びかけにその場にいた全員がアクトの後ろにいるシャドウを“認識”し始めた
「ははは、さすがはシャドウ…影の体現者だ。他人からの認識という光を魔力消費を最低限にまで押さえて使えるパッシブマジックにして操作する才能…賞賛に値するよ」
「アクト君…?何言ってるの…?」
「ん?もしかしてシャドウは自分の正体を覚えてないのかい?うーん…あ、そうだ!出ておいでムサシ、魔術“降臨”」
すると先程と同じように円形の光の柱が唐突に出現した
そしてさらに先程と同じように光の柱の中に人が出現した
見た目年齢だと二十代半ばくらいだろうか、着物と呼ばれる物を着ており腰には刀と呼ばれる剣のようなものが両側に一本ずつ…つまり二本刺されていた
「おいアクト…誰だ?この変な格好した奴」
「それにアクト様…その魔法…いや魔術は…?」
「あ…さっきから聞こえてたうるさい声が消えた…というか僕の中にあった何かが消えたような……」
「さすがシャドウだな。そうムサシだよ、シャドウの中に転生していた」
「アークトルディア様ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!拙者に魔術を使っていただき、感謝するのですよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
「ムサシ落ち着け?まぁ…また前みたいに俺の右腕としてよろしく頼む」
「それじゃあアクト君、全員集まったことだし悪いがもう一度説明してもらえるかな?」
場所は変わらず医務室でその場にはアクトを筆頭にクリフェン、セレス、シャドウ、ユカルド、ギシュル、クルト、エザール、ソフィア、ファニファそしてムサシが集まっていた
「あ、分かりました。と言ってもまだはっきりとは思い出せていないのですが…」
そこからアクトは思い出したばかりの10年前に自分の身に起こったことを話した
「へー!エデューってアクトのお父さんだったんだー!あたい、知らなかったなー!」
「ファニファが知らなかったのも無理ありませんよ…あいつは自分の身を隠しながらアクトとメーディアを育ててんたんですから」
ファニファは少し驚きを表しつつも長らく行方不明だったエデューのことを知れて喜んでいた
「なぁ…アクト、そのお前の父親のエデューさんが今どこにいるとか知ってるのか?」
「おいクリフェン、話聞いてたのか?エデューは…父さんはあのときに…!」
「でも亡くなったところはみてないんだろ?」
「ねぇクリフェン君!アクト君のことこれ以上苦しめたら許さ…」
あまりにデリカシーのないクリフェンのことをシャドウが怒ろうとしたがそれさえ遮って……
「バステルを素手で殴り飛ばすって話さ…うちの担任、エリウィン先生のゴリラモードっていう噂と一致してないか?」




