第9話 派生スキル
学園長室のドアがゆっくりと開く…少しずつ少しずつ開くたびに緊張感が膨れ上がっていく…
「ちょっと待てよぉ」
「「!?!?」」
聞き覚えのある…どころではない声と特徴的な喋り方…アクト達に初の対人戦闘を経験させた男…エザールがドアの隙間から出てきた。
「なっ…!エザール!?お前は俺が…」
「俺もアクトが殺したところをしっかり見たんだ!なんでここに…!」
「まあまあ2人とも落ち着きたまえよ」
「「っ…!」」
ユカルドがそう言うとまるで体が操られたように動かなくなった。
『わざわざ魔法「言霊」まで使って…しかも無詠唱ってどれだけその体に馴染んでいるんですか…はぁ…』
魔法「言霊」は自分の言葉に魔力を乗せ相手を従わせる魔法である。事前に詠唱をしておき発動させず待機させておくのだが普通なのだがユカルドは無詠唱で即時発動したらしい。
「うおぅ!?頭に直接声が聞こえてきやがる!」
エザールはソフィアの声に驚いたように言ったがどこか少しだけ懐かしむような表情をしていたのをユカルドは見逃さなかった
「随分と懐かしそうな顔をするんだね、過去に同じような経験をしたことでもあるのかい?例えば…ギルド《コフィン》内の通信に使われてたとか」
「…!はぁお手上げだ。さすがは学園長様見抜かれちまうのかよ…」
「エザール…てめぇあのねちっこい喋り方はどうしたんだよ?」
特徴的な喋り方じゃなかったことが気になったのかクリフェンが聞いてしまった…少し空気読めよ、クリフェン。まあ俺も気になったけどさ……
「あの喋り方のことか?あれはキャラ作りのためにやってきただけだ。」
「「!?!?」」
まさかキャラ作りのためにやっていたとは思わず驚きを隠せないアクトとクリフェン。ユカルドとソフィアは実に見事なジト目を向けている。
「ま、まぁそんなこと…ってほど軽くはないがそれはおいておいて…《コフィン》内で使われていた物について教えてくれるか?」
「学園ちょ…ユカルドさん、そんなすんなり教えてくれますかね?」
ユカルドが質問したことは《コフィン》の重要機密のはずだ。そう簡単に教えてくれるとは到底思えない。そう思い質問したアクトに同意を示すようにコクコクと頷くクリフェン。
「さすがにそれを教えることはできねーな」
「ユカルドさん…」
案の定拒否されてどうするのかと思いユカルドの顔色を見た。が、ユカルドはそんなことは想定内と言わんばかりの表情をしていた。うん…すごく嫌な予感…
「そうか…それは残念だ…この魔法を使わなくてはならないとは…」
「ちょっ、待て!魔法ってなん…」
「我は主の代わりに汝の言の葉の真偽を探る“リサーチメモリー”」
エザールが魔法という聞いたことのないものについて聞こうとしているのを遮るように必要のない詠唱を見せつけるように行い魔法を発動させた。
「うっ!」
エザールは何かが頭に無理矢理侵入し勝手に覗かれるような気持ち悪い感じに襲われ苦悶の声を上げた。
「ふむふむ…なるほど?通信系統のスキル持ちがいて経験したことあったと…通信系統とはこれまた珍しいスキルだ。あとで使えるか実験してみたいな…」
最後の声は非常に小さくほとんどの者は聞こえなかった。まあそれは耳を使って聞いていたからであり念話を通して会話しているソフィアにはバッチリ聞かれていたわけである。
「そういえばユカルドさん、魔法ってなんなんですか?」
「あぁ、そういえばまだ説明していなかったね」
「それと同時に出来れば俺の新しいスキルの派生スキルも教えて欲しいんですが…?」
アクトがユカルドに質問したのを機と見たのか結局まだ教えてもらっていない自分のスキルについて聞いたのは言わずもがな、クリフェンである。
「では最初にクリフェン君のスキルについて教えるとしよう。」
ゴクッと生唾を飲んで次の言葉を待つクリフェン…アクトは…魔法について自分なりの仮説を立てるなどしながらユカルドの話を聞いている。
「さっきも言った通りスキルの名前は「守護神現化」だ。そして派生スキルは3つあり1つ目は「明確化」、2つ目は「戦闘可能化」、そして3つ目は「武装化」だ。」
さすがに3つもあったことにユカルド自身も驚いているらしく声色がいつもと少し違った。そしてそのスキルを持っている当の本人はと言うと…もう訳の分からない表情をしていた。
“訳が分からない表情”ではなく“訳の分からない表情”である。感動と畏怖、アクトに対するドヤ顔や自分がこんなにすごいものを手に入れてもいいのだろうかと言う困惑など…そのほか色々な表情が混ざり合い“訳の分からない表情”なのだ。
頼むからもっと説明のしやすい表情を…なんて贅沢は言わないからせめてどうリアクションを取ればいいか分かる表情をしてくれ…
その後はクリフェンにそのスキルの使い方等をユカルドに教わった。
…ユカルドさん、スキルがバレるだけじゃなくて使い方まで分かっちゃうなんて…この人だけは絶対に敵対しちゃいけないな、うん。
一通り使い方を教わり終わったときにユカルドが再び喋り始めた。
「これでクリフェン君は2つのスキルを…アクト君はギリアスを多少は使えるようになったわけだ…」
「は、はぁ…」
「確かに…」
「じゃああとは訓練あるのみだよな?」
「「…!」」
その発言に嫌な予感を感じつつ次の言葉を待った。
「クルージオ先生とダイヤス先生に作ってもらった訓練場もあることだし早速訓練しようじゃないか。せっかくだから実戦訓練をな」
「実戦訓練って…今からですか!?」
「訓練場…?それに作ってもらったって…」
時刻はとっくに午後9時をまわっておりユカルドと話していることを知らない男子寮を管理しているイシュト先生への言い訳にはユカルドではなく学園長としての顔を使って手伝ってもらわなければ長い長いお説教が始まってしまう…あの人一度お説教が始まると話を聞かないんだよなぁ…
「もうそんな時間だったかでは明日にしよう。明日の午前7時にここ、学園長室に来るように」
「あ、ちなみに実戦の相手っていうのは…?」
「それは明日になってからのお楽しみだ」
『はぁ…』
どこか察した様子のソフィアに聞こうと思ったらクリフェンがユカルドに別の質問をした。
「あ、あの…そういえばエザールはどこですか?」
「あぁ彼かい?彼なら話の最中に襲おうとしていたからつい今さっき私の魔法で空間の狭間に閉じ込めておいたよ」
その後学園長の説得もありイシュト先生のお説教を回避できアクトとクリフェンは部屋に戻った。
「なぁアクト、明日の実戦の相手って誰だと思う?」
「そうだな…BHF職員の誰かだろうな…」
「BHF職員…?なんだそれ」
「そういえばクリフェンは知らなかったな、学園にそういう対バステルの秘密施設の総本部があってそこに所属している人たちのことをBHF職員って呼ばれているんだよ」
「所属しているのになんで職員なんだ?」
「これは驚くぞ?なんせBHF職員は全員学園の教師なんだから!」
そんな感じでBHFのことをはなしていたり違う話題になったりと2人で話していたらあっという間に11時を過ぎてしまい寝ることになった。
「っともうこんな時間か、明日は実戦訓練もあることだしもう寝るか…って明日の授業どうすんの!?」
「明日の学園は休みだろ?」
「あ、そうだった。ふぁぁぁ…もう眠いし俺は寝るよ」
「じゃあ俺も寝ようかな…おやすみクリフェン」
「おやすみアクト」
明日はユカルドが提案した実戦訓練…無事に終わることを長いながら2人は静かに眠るのであった…




