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第3話(別視点)

 「こんな数、何処に居たんでしょうねぇ・・・」


「知らないわよ!」


なんで!?

何でこんな事になってるわけ!

あたしは人を助けて街まで同行と言う名の護衛までしてあげて、善行してるはずよ?

まぁ後で手間賃ぐらい・・・とは思ってるけど。

それがどうして、助けられてた人とおおよそこの辺りに棲んでるモンスター全種類のしかも大群に襲われて囲まれ背中合わせに睨み合いしてるわけ!?


「ん〜ざっと、200匹ぐらいですか・・・」


「この状況で数なんてどうでもいいわよ!!あんたの防御障壁は大丈夫なんでしょうねぇ!?」


「・・・えぇ、大丈夫です。」


「その間が嘘臭いんだけど!?」


あたしは人を助けその人と共に町に帰る途中だった。

助けたこの男がココ変ですよと帰り道から踏み外さなければ。


「ちょっと、何処に行くのよ。」


「あぁすみません、そこに妙に歪んだ結界らしきモノがあるので・・・」


「ふぅん・・・て、そんなモノほっといて帰るわよ。」


「ぁ〜ちょっと、遅かったようです。」


その後は前述の通り、男が近づいた所為せい?で壊れた結界らしきモノの中からモンスターが湧くわ湧くわ湧くわ・・・。

助けた男が慌てて障壁を張ってくれなければ今頃あたし達はあのモンスター達の餌になってたはず。

悔しいけどあたしは目の前の事だったのにもかかわらず度肝を抜かれて棒立ち状態だったわ・・・。

それほど突然だったのに障壁展開を間に合わせたその男は、良く言えばおっとり・・・な人。

顔はそこまで悪くはないけど、背もそれほど高くない中肉中背で闇に溶け込みそうな黒髪黒目、全体的に印象が薄いというか間者にぴったりな顔というか・・・。

まぁ悪くは・・・言わないでおくわ、今はそのおっとりな人が障壁を張っているからこそ生きていられるのだから。


「ところで、今更な気がしますけど・・・お名前は?」


「・・・、・・・ハァ!?」


生き残れたら・・・改めてこの男を地獄へ送ってやろう。

そう心に決めて、一度だけコノ男を睨みつけてから周りをもう一度見てみる。

今モンスター達は一生懸命障壁を壊そうとガンガン攻撃してて、わずか10cm程の距離しかないその薄そうな障壁の破壊とその後の自分達の末路を想像して・・・それはそれは恐ろしい状況だったりするのよ。

もう少し間を取って障壁を張って欲しかったと思うと共にコレが破れたら一巻の終わりという緊張感があたしの神経を徐々(じょじょ)にり減らしていく。


「じゃあ・・・えっと、俺は居ないと考えて・・・ん〜貴方一人なら何匹イケますか?」


そんな状況の中でもまだ話す気なのかおっとりと質問してくるこの男にイライラしてくるわ。


「・・・あんたコノ状況でそんな質問する!?全く、あんたが変だからって近づくからこんな事になってるのよ!?あんたどうにかしなさいよ!」


たかぶりながらも磨り減ってる神経におっとりと間の抜けた様な台詞にいい加減ウンザリしていたあたしは・・・えぇ、醜くくも八つ当たりしましたとも。

でも返ってきた返事は驚くほど冷静で冷徹な言葉だったわ。


「・・・えぇ、貴方の言うとおりですね。もちろん、私が殲滅するつもりです。・・・では合図と共に真上に10mほど飛んで頂く事は可能ですか?」


「ぇ、えぇ・・・できるわよ?」


八つ当たり的な反応だと分かったはずなのにも関わらずおっとりとその中に隠された冷静さと冷徹さを失わずに居るその男にちょっと、ちょっとだけよ?・・・畏怖する。

だって、術を編んでいる事が見た目で分かる程の力って・・・そうそうお目にかかれるものじゃないの。

そんな、あたしの反応すら認知外だとでも言いたげに1つ首肯を返すのみで何やら魔術を放とうとしているその男。


「ん、準備できたんですけど貴方の方は大丈夫ですか?」


2秒と掛からず声をかけられたのでちょっと慌ててしまう。

200匹程も居るモンスターを一撃でどうにかするのなら最低でも上級の術を使う必要があるし、それはギルドランク+A+のあたしでも10秒以上はかかるものだから。


「えっ?ぁ、待って。・・・いいよ?」


「じゃぁ・・・5・4・3・2・1・ハイ![変則障壁 円斬]っ!」


言われた通り10m程ジャンプしてみたんだけど・・・上から見たその光景は・・・虐殺・・・に等しいものだったわ・・・。

下を見るあたしの視界全てを光るモノが円状に駆けていったかと思うと、あたし達を囲んでいたモンスターの群れを真横(地面と平行に)に一刀両断・・・本当に殲滅、だったわ。

硬さを特徴とするモンスターも居たのにアッサリと。

でも一番驚いたのはそこじゃなくて、その光の中にあった樹木が一切無傷っぽいって事。

つまり術を高度に制御して害をなすモノだけに術の効果を与え、硬さに関わらずに斬ったという事。


     ストッ


「ちょっと!今の何よ!!?見た事も聞いた事も無いし、準備時間にしてはありえない威力でしょ!」


着地した途端に詰め寄ったわよ!

だってそんな普通の人には高度な術が使えるのならあんな崖の先で追い詰められてるわけがないもの。

それにあたし、魔術剣使いだけどあんな術見た事ない・・・。


「えっ?ぇっと・・・何、ナニどうしたの??」


いきなりのあたしの剣幕に驚いてるみたいだけどそんな事あたしの知るところじゃないわ!


「どうしたのじゃないわよっ!今の術はなんなの!?あんなの持っててなんでたった3匹のモンスターに追い詰められてたわけ!?そもそもアンタ何者!!?」


あたしもそこそこ名の知れた、国内第3位のファスゴト州じゃ1番のハンターだという自負は持ってた。

それに自分の属性に関していえばほとんどの術はまだ使えない物もあるけど知識として持っているとも思ってたわ。

それが何、両方ともばっさりと覆されてるじゃないのよ・・・そりゃ問い詰めるわよ、あたしのアイデンティティーに関わるもの。

と、自分の正当性を無理やり構築してみる。


「・・・ぁ〜、・・・あれはただの初級物理障壁[ウォール]、だよ?ただ使い方と効果範囲を変えただけで。それに追い詰められていたわけじゃない、考え事があって放置していたんだ」


えぇ、衝撃の事実にあたしは何処かのお馬鹿さんの様にただポカンとしてしまいましたわ。

誰しもが一度は使った事のある、ただの物理障壁・・・しかも初級。

そもそも障壁系や結界系の術に関しては、エネルギーをそのまま固めたりして使うのでどんな属性を持っていても習得できる術。

もちろん、属性専用の障壁術や結界術の[水のカーテン]や[台風の目]といった術もあるけど。

しかもモンスターを放置ですってぇ!?

まぁあの[ウォール]の使い方からして多分その通りなんでしょうと思えてしまうのだけど・・・なんか悔しいわ。


「・・・使い方と効果範囲・・・」


「そう。ぁ、立ち話もなんだし歩きながらで・・・」


そう言って、今度は彼が先に街に向かって歩きだした。


「ちょ、ちょっと待ちなさいよ。」


彼について歩きながら混乱気味の頭の中を整理してみる。

あたしが属する魔術剣使いとは、力石と呼ばれる空気中のエネルギーが固化して出来た石を加工して武器に埋め込み、術の効果を武器に付与して戦う戦士を指す職業。

本来は魔術科(魔術か精霊術で魔術の方を持って生まれた人)の術資質の乏しい人間が武器の補助を受けて行動する職業。

因みに精霊術科の人がそれをやると精霊術剣使い・・・契約してる精霊が力石に入ってもらって術を使うと・・・まぁそのままね。

つまり、剣がなければ術を知らないただの剣士とほとんど差が無いのよ。

あたしの場合はそこそこっていうか上級魔術を扱えた上で、好きで目指した魔術剣使いだからいいんだけど。

っと、問題はこの男が使った術が誰でも使えれば属性専用術がとてつもなく色褪いろあせるという事。


「・・・うん、ある程度分かってるみたいだから言うけど。私の術は自分の属性術を知識だけに留めて障壁術や結界術に絞って修練した結果だからねぇ〜」


「なるほど・・・ねぇ〜、じゃぁあんたは・・・その・・・術資質が・・・?」


「ん?いや、むしろ豊かな方でしょ」


聞きにくい事を聞いたのにあっけらかんと、しかも自分で上位の方だと言うコノ男・・・

言われて思い出したわ、このあたしが畏怖してしまう程の術波動を・・・


「はぁ?つくづく分からない人ね・・・ぁ、軍人?」


術資質というのはこの国では重要なの。

何故ならこの国は精霊術師によって建国された国、だから術資質=権力となりやすいのは世の理ってわけよ。

しかも法の縛りで上級術以上を使役可能な人は軍か国営ギルドや宮廷術師に所属する事が義務付けられているわ。


「ん?違うよ?」


「じゃぁギルド?ファスゴト州じゃあんた見た事無いけど・・・」


「まぁね、私はそのギルドに登録する為に旅してるんですよ。」


この国は円形に近い国土のほぼ中央に王都があり、その外周を東西南北を境目にして4州・・・そのまた外周を10州が囲む国で、ギルド登録は首都かその外周の4州でしか出来ない。


「あら、そうなの。・・・ところで、あたしはケイナ。あんたの名前は?」


「・・・えぇ〜と、ケイ?」


「ケイナよ、あんたは?」


「だから・・・ケイ、ケイナルド」


「・・・、・・・。わかった・・・ケイ、って呼ぶ事にするわ・・・」


「ん、了解・・・」


・・・ほぼ同名って事が発覚した瞬間だったわ・・・。

はい、ん〜暇をみつけては書いて書き直して・・・

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