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第14話

 一悶着ひともんちゃくあった昨日とは違い、ファスゴトを出て二日目の今日はもう夕方だと言うのにモンスターの一匹すら出てこない。


「・・・暇すぎる」


昨日はあの後もモンスターの襲撃に遭ったり、休憩中にクフトが王都から来た大きな商団といさかいを起こしたりと話題?には事欠かなかった。


「旅なんてそんなものですよ」


馬車の中でケイナは昨日と同じく熟睡、クフトも昨日の説教と言う名の拷問を半日以上受けダウンしている。

クフトは昨日、一睡もしていないし、昼飯・夕飯・今日の朝飯と丸三食抜かされている。

弄られキャラだろうなぁとは思っていたけど、ココまでとは思わなかった。


「そうなんですけどね」


クフトをココまで追い詰めたカロリアさんは・・・至って普通に、寝ている二人の邪魔にならぬよう御者台に私と二人で座っている。


「・・・クフト、大丈夫ですかね」


「気にしなくても良いわ、いつもの事よ」


チラッと振り返ってクフトの惨状を一瞬視界に入れ、何事もなかったかの様に馬車の手綱たづなを握る。

昨日、クフトの失言の所為せいでドレン傭兵団がこちらの事情をほぼ確実に察した事が分かった。

あの後、ケイナの一言で森を抜けた所で休憩し後ろに居た3組の商隊を先に行かせたのだが・・・その3組の商隊にドレン傭兵団のメンバーが付いていたのだ。

本来、たったあれだけの時間を足止めしたぐらいで慰謝料的なものなど一切発生しない。

せいぜい頑張って謝罪、諸事情で半日以上とか丸一日、足止めさせたのなら話は分かるのだけれど。

となれば、あの団長が余程誠実かバカかこちらを意識しての行動・・・位しか思いつかない。

それを見た私が口を滑らせた所為でもあるのだがそれはそれ、弄られキャラとしての役割をという事で。

自分を納得させつつ先程チラリと見た、ボロボロになってまるで死体の様に眠りこけるクフトにほんの少し同情した私・・・今度は気取けどられぬよう視線だけを動かしてカロリアさんを見る。


「・・・何かしら?」


「いいえ・・・」


カロリアさんを怒らせるのはやめよう・・・多分、それが身の為だ・・・

流石さすがに、気付かれるとは思ってなかったので少しだけ、心の中で慌てた。


「ぁ、確かもうしばらく行くと左側に池が見えてくるわ、今日はそこに泊まりましょう」


「了解です」


「・・・ところで、・・・」


そう言うといきなり私の目の前まで身体ごと顔を寄せてくるカロリアさん。

らせて最低限の距離を保ったがカロリアさんの顔の表情がとても真剣で、何か後ろに聞かれては不味まずい話でもあるようだと察してこちらも構える。


「・・・何でしょう?」


「・・・どうして私だけ、妙に、硬い言葉使いなのです?」


それはそうとカロリアさん、こんな仕種しぐさいつ覚えたのだろうか・・・と邪智じゃちしつつさてどうしようか・・・

カロリアさん、実は年下らしいし最年長私だったりするし・・・

実力でも私が上というのはクフトのお陰で知られているし・・・

ここで「あー」とか「うー」とか、挙動不審な事はしてはいけない。

そうすると色々な・・・フラグが立つから。


「・・・んー」


だから、どう説明しようかな?・・・どう言ったら分かってもらえるかなぁ?的な雰囲気を出す事が重要。

肝心なのは言うべき答えはある、だがどう説明すればベストなのかを考えていると思わせる事だ、そうすれば・・・


「・・・何?何が言いたいのかしら?」


と、少し心配させるが機嫌は損ねずに時間が稼げる。

こういった心の機敏は、元の世界に居た時付き合ってた彼女から色々とパターンで教えられたのだが・・・役に立つ時が来るとはつゆ程にも思わなかった。


「んー・・・カロリアさんがカロリアさんだから、でしょうね・・・」


「・・・は?」


「すみません、考えたんですがこれ以上の言葉が出てきませんでした」


で、その後は「貴方がアナタだからあなたなのだ」と言った抽象的な答えを出し、「これ以上の言葉は見つからない」と〆(しめ)る。

すると・・・


「はぁ・・・なんとなく分かったような・・・?」


と、なにやら自分で勝手に有耶無耶うやむやな結論を出してしまうのだ。


「あ!あの池ですね?・・・あの木の横で良いですか?」


「ぇ、えぇ・・・そうね」


結論を出した頃合ころあいをみて話題を変えればもう完璧。



 野営の準備をしてから夕飯を摂った私達。


「・・・それじゃ、行ってくるねー」


女性陣二人が近くの池に水浴びに行く事になった。

なんでもココを通る時にはいつもココで水浴びをしているとの事。


「覗いたら・・・ありえないわね、なんでもないわ」


そう捨て台詞を吐いて池に向かったケイナ、とそれを警護する為についていったカロリアさん。

ありえないわね、はおもにクフトを見て言った言葉なのでそういう方面に対する信頼はあるのだろう。

一方馬車近くの焚火周りに残った私とクフト、する事もなければ物凄ものすごく空気が悪い。

このクフトの妙な敵対心というかライバル心というか・・・どうにかならんものか・・・

と思っていたところへバカが二人現れたのを確認する。


「なぁクフト・・・」


「なんだっ?・・・っ、貴様きさまが呼び捨てにするな!」


話しかけただけでこれだ・・・


「・・・そんな事はどうでもいい、あんたなんで槍なんだ?その体格なら斧とか斧とか斧とか・・・」


「待て!斧しか言ってないじゃないかっ、しかも私にそんないかつい武器は似合わぬわ!!」


けっしてゴリラの様な体格とかではなかったのだが・・・あまりの敵意に思わずいじってしまった・・・


「まぁそれはどうでもよくて・・・」


「・・・貴様という奴はぁ〜っ!」


激昂し立ち上がって焚火越しにそばに置いていた槍を構えるクフト。


「・・・本題だが、立ち上がったついでにあっちからケイナ達をノゾキしに行ったバカ二人の対処を」


そう言い、王都方向の少し離れた所に同じく泊まっている一団を指差す。


「何っ!!もっと早く言えっ!」


一団の位置を確認したクフトは最短で接敵せってきするべく池と一団の間に向かって走り出す。


「・・・こと戦闘に関しては、なんだよねぇー」


と思った途端、バカの一団の方から口笛らしき音。

どうやら残った奴、もしくは奴等やつらが見張りの役割を負っていたらしい。

ノゾキの常習犯、って事なんだろうけど・・・なんだかなぁー

どこの世界に行ってもこういうのは居なくならないのだろうか・・・と自分もそういった意味で健康な男である事を棚に上げて思う。


「なぁ、そうは思わないか団長さん?」


「っ・・・何がだ?」


背後から、多分今着いて私を見つけたので近づいてきたのであろうドレン団長に話しかけてから振り返る。

無論私の心の中なんて分かるはずもなく、罰が悪そうに立ち止まっている。

多分、驚かそうとしたのか気配を断ち音もなく近づいてきたのに逆に驚かされた事でそんな表情なのだろう。


「いや、なんでもない・・・で、何か用?」


「あ・あぁ・・・部下が迷惑かけたからな、正式に謝罪しとかねぇと」


「ふぅん・・・・・・・・・・・・ま、いいけど。ケイナならしばらく待ってれば帰ってくる」


髪の毛から爪先つまさきまでじっくりと団長が居心地悪そうにするまで見て、値踏ねぶみしてから謝罪と言う名の営業活動にゴーサインを出す。

まぁ、私も一応雇われの身なので拒否する事は出来ないのだが・・・。


「では待たせてもらおう」


私が拒否出来ない事を分かっているのかこちらが待つ事を了承した途端、一言言って焚火のふちに座り込む団長。

そして座るとおもむろに火にかかっていたポットから勝手にお茶をぎ、完全にくつろいでいるこの人。

待っていても良いとは言ったがくつろいでいろと言った覚えはないのだがな・・・


「・・・ところで、依頼主ってこたぁあんた王都までの仕事だろ?」


「あぁ、そうだな・・・」


「やっぱりな、じゃぁその後俺に雇われねぇ?いやさ、あんた若ぇくせになかなか見所あるって思ってよぉ」


この団長に遠慮とかそういうたぐいの言葉はあるのだろうか・・・と一応顔には出さずに考えていると今度は傭兵団に勧誘ときた。

この世界だと団長の感覚で物を喋るのが一般的なのか・・・?


「そうだなぁ・・・、あんたは若ぇけどなかなか使えそうだから給金は・・・一日に1エル。どうだ?」


この遠慮の無さというか図々(ずうずう)しさにまだこちらに来て日の浅い私がてられ、閉口していると何を勘違いしたのか話を進めるこの団長さん。

いやあなた、まだ名前も知りませんよ?・・・と元の世界の常識をきたくなってくる。

というか、一日1エル・・・素泊まりの宿が一日4000〜5,000ドン、安い定食屋の食事が大体一食500ドン・・・微妙な金額だな・・・というか元々やる気ないし。


「・・・今回の契約、4日で50エルだけど?」


「はぁ!?マジ?」


「うん、それにお金に困る事はこの先一生無いし」


「おいおいどこの坊ちゃんだよっ!!」


断るつもりで、というか雇われる気は全然無いが今の契約の話をちょっとした嗜虐しぎゃく心+で言ってみた。

うん、この人も結構面白い人っぽい・・・芸人で言うツッコミ、だな・・・


「いや坊ちゃんも何も「マテッ!」・・・何?」


「それ、国営ギルドの腕輪だよな?」


それ、と団長が指差したのは私の左手首に着いているギルド所属証明となるギルド証。


「そうだが」


ふと、先程の嗜虐心が少しばかり戻ってきたが今度は自重じちょうする。

こういう傭兵団は仕事があれば全国何処どこへでも行く、その先々(さきざき)で触れ回られたらたまったもんじゃない。


「あんた、実は結構実力者かなんかだろ?」


「いや、あのバカ二人にった日に登録した」


「はぁ?3日前??ありえねぇし」


「事実ですが・・・」


「バカ言ってんじゃねぇよ、マジありえねぇって・・・」


手をヒラヒラとさせ全く、微塵みじんも信じていない団長さん。


「彼の言っている事は本当よ」


自分と私とは別の声が聞こえ、団長さんが背後に振り返る。

私はかなり前から気付いてきたがそこにはケイナ、そのすぐ後ろにカロリアさんとクフトが居た。

ハハハ…月一ペース…orz

難しいのねぇ…物書きって、と凹みまくっているこの頃…orz

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