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第13話

 翌日、馬車の中。

クフトが若干寝坊し遅刻するというハプニングはあったものの、ほぼ予定通り1つ時(8時)過ぎには出発した私達。

いってらっしゃいませ〜と[宿の一階]の一家4人総出の見送りを受けつつの出発だった。


「全く、クフト・・・あなたという人は・・・」


宿の裏にめてあったケイナ達がいつも使っているという馬車に乗って街を出た所、カロリアさんの説教がひょんな事から始まった。

馬車に乗った時からなにやら2人で論戦とも口喧嘩ともとれる会話をしていたので何が切欠きっかけだったのかは分からない。


「いや、昨夜あれだけ姫様達が・・・」


「言い訳は聞きたくありません、親衛隊たる者1日や2日ぐらい眠らずとも・・・」


「いやしかしですね、あれだけ飲まされて・・・」


「言い訳は聞きたくないと先程・・・」


クフトが寝坊した訳、それはひとえに昨夜ケイナとカロリアさんがクフトを強制参加させた宴会。

私も参加させられたが今まで酔っぱらった私が何をしてきたか・・・懇々(こんこん)と話した途端に持っていたグラスをカロリアさんに取り上げられた。

おかげで私は初めの1杯、ほろ酔いの一番気持ち良い時にソフトドリンクに切り替わったので翌日もいつも通り起きられたのだが・・・その分クフトに回ったのだろう。

クフトは酔っぱらってテンションの上がった二人からほぼ強制的に酒を流し込まれていた。

それでも少し寝坊した、だけで済んでいるのはあまり飲めない私から見れば脅威としか言い様がない。

というかケイナもカロリアさんも結構、いやかなり飲んでたはず・・・

そんな馬車の中、私は御者席でこの馬車を操縦しケイナはその御者席の後ろで席にもたれかかって眠っている。

こんな説教の中よく眠れるなぁなんて思いながら王都に向けて馬車を走らせている。

ただ、仲が良い程喧嘩する的な空気がただよっているのでいつもの事なのだろう・・・と思う。

同期入隊だと聞くしケイナも何事もない様に寝ているし・・・と、そんな事を考えながら小高い丘を越え後ろに街が見えなくなった小さな森の手前、20人弱の人達がまるで関所の様に通る人達を監視している。


「ぁ〜お礼参りですか・・・」


初めは見るからに兵隊の一団が関所みたいな事をして何かあったのかと思ったがよく見ると昨日の2人が居るのでそう理解する。


「ケイナ、・・・起きろ」


馬車の中に知らせた方が良いかなとケイナを起こしにかかったのだが起きない。

熟睡しすぎ・・・


「姫様は馬車に乗るとそう易々とは目を覚まされぬっ」


それに気付いたクフトがそう言いながらケイナをまもるように触れていた私の手を払った。

無論、敵意丸出し。

・・・まだ根に持ってるのかこの人はっ・・・ってケイナ、何気にお約束持ってたのね・・・


「・・・・・・、昨日ケイナをナンパしようとして軽くあしらわれたやからがそこで仲間を集めて網を張っている様だが?」


「何っ!!?」


「あら・・・」


指を指して2人に教えたんだけど・・・顔の表情はほぼ同じ敵意を見せても言う台詞がここまで違うと滑稽こっけいに見えてくるから面白い。


「とりあえず、どうするの?」


「その様な輩なぞ「あんたは黙ってて」っ!」


「・・・、・・・で?」


カロリアにけ者にされたクフトは顔を真っ赤にしてわめいている、がカロリアさんが普通に無視しているので私も無視しておこう。


「こちらの身分を明かす事はケイナ様の指示がない限り出来ません」


「そのケイナは、馬車に乗ると寝てしまって起きない・・・と」


「はい、という事でよろしくお願いしますね?」


このカロリアって姉さん、私に丸投げしましたよ・・・

いつの間にか静かになっていたクフト、見ると私とカロリアさんの華麗な無視に心を折られたのか馬車の隅で落ち込み始めていた。



 「その馬車止まれ!!」


そうこう言ってる間に馬車はドレン傭兵団と名乗っていた2人の居る集団の近くまで来てしまい、数えたら17人の内の1人に停止命令を受けた。

というか、全員で道をふさぎ半円包囲してきたので止まらざるを得なかったというのが正解かな。


「何の騒ぎだ?」


「こいつか?」


「・・・あぁ、こいつだ。間違ぇねぇ!」


一応、知らぬ振りをして上手く抜けようとしてみたけど、相手はアッサリこちらを無視して停止命令だした男が昨日の男の1人に確認を取った。

やはり、確実に昨日の事だった。


「ふぅん、こいつがねぇ・・・おいてめぇ!」


それを見ていた団長らしき人が威勢良く啖呵たんかをきってくる。


「・・・」


ハァー、面倒臭い・・・


「昨日はよくも俺様の子分をやってくれたなっ!」


「・・・で?」


「てめぇ・・・、俺様は心が広い。慰謝料さえ払えば見逃してやる」


・・・笑って良いですか?


「・・・なんて言ってますけど?」


ごく普通に後ろを振り返ってカロリアさんに確認を取ってみる私。


「ちょっと、後ろ向いてていいの?」


カロリアさんは少しだけ慌てた様子だが、私としては既に対処済みなのでニッコリと微笑みながらタネ明かしする。


「はい、既に結界張ってますから。ほうっておけば勝手に息が出来なくなってあの人達死にます」


「「「「「「「「「「「「「「「「「っ!?なんだと!!?」」」」」」」」」」」」」」」」」


マジに笑って良いですかっ?物凄ものすごく綺麗にハモってますが・・・

それからしばらく、目の前に居る17人の『無駄な抵抗』を観察してみた。


「あの術、本当に破れぬから腹が立つ・・・」


ボソッとそうつぶやいたのはクフト。

うん、前に自分でやってるからねぇ・・・ところでクフト、顔が少し青いよ?

多分独り言だろうから私も心の中でクフトをいじるにとどめる。

いつの間にか復活してこの余興?を楽しんで?いる様子。


「おいお前」


5分程っただろうか、一人の男がドレン傭兵団の団長と名乗り声をかけてきたので視線を合わせる。


「何か?」


「名はなんと言う?」


「・・・ケイ」


「・・・ケイ、か。こんな事(結界)を無詠唱で出来るお前が何故なぜ内の者を?」


・・・納得。

昨日の2人自分の都合の良い様に話したのね。


「決まっている、その二人が私の依頼主に対し無礼を働いたからだ」


私のその一言と私の顔で団長も納得がいったらしく、部下に命じて結界の隅まで逃げていた二人を連れてこさせた。

手を出したのは私ではなくケイナだが、それは言ってしまうとまた面倒になるかもしれないので伏せておく。


「だ・団長・・・?」「ぇ、ちょっ・・・」


 ゴツッ ドゴッ


二人をひざまずかせ脳天に一発ずつ、いい音鳴ったねぇ・・・


「すまんが、これで許して貰えないだろうか?」


チラリと見ると、中々結構な一撃だったらしく二人共仲良く土下座しながら気絶している。


「・・・良いだろう、こちらとしては昨日で罰は与えたしココを通してもらえればそれで良かったのだが・・・」


「なに、ケジメだ。・・・それで、だ・・・」


「あぁ、既に結界は解いてある」


「「「「「「「「「「「「「「ふぅぅぅぅ」」」」」」」」」」」」」」


この人達、とても面白いんですけどっ!

気絶している2人と団長以外の14人、まるで森林浴にでも行ったみたいに深呼吸してるし。


「あ、姫様・・・ぁ」


どうやら馬車が止まってる事でケイナが起きたみたいだけど、クフト・・・


「・・・姫様?」


「クフト・・・」


後ろからカロリアさんの呼ぶ声、またカロリアさんの説教決定だねクフト。


「・・・で、なんで止まってるの?」


と言ってひょっこりと御者席に顔を出したケイナ。


「・・・何この状況・・・?」


馬車の周りには14人の仮想森林浴、土下座した状態でピクリとも動かない2人、ただ一人姫様の単語を聞いていぶかしげにケイナの顔を見ている傭兵団の団長。

クフトはしまったって顔で固まってるしカロリアさんもそれをにらみつけて動かない。


「身分がバレかかってる」


仕方ないので一番近くに居る私が自然な感じに上体じょうたいらし、小声で知らせる。


「・・・そう言えば、第二王女って確か・・・」


「・・・・・・どうしよう?」


ケイナが、・・・いやケイナまでも私に丸投げしてきたので仕方なく傭兵達の注意を引く。


「おい、団長」


「ぬ、なんだ?」


「いい加減、退いて欲しいのだが?」


後ろを指差しながら苦言を呈してみる。

団長は道の真ん中に立っているし、気絶中の二人もそのまま、他の14人も其々(それぞれ)立っていて、いまだ道はふさがった状態。

何気なにげに私達の後ろに3組のグループが何事かと様子を見に来ながら待っているのだ。



 「おいアスペンとニング、サイとフード、テイダとプランの6人」


「「「「「「ハッ!」」」」」」


「それぞれ二人一組で足止めしちまった3組の商隊に謝罪した上で、王都までの無償護衛を申し出ろ」


「それは・・・」


「いつも通り給金はこちらで出す」


「「「「「「了解!」」」」」」


「団長、この二人はどうしやす?」


「バカ二人か・・・傭兵団の装備だけがしてそこら辺に転がしておけ、クビだと書置きしてな」


「分かりやした」


あの後すぐに道を開けて王女様一行と足止めした3商隊を送り出したドレン傭兵団。

そのまま、すぐに準備を整えて出発した6人を見送る。


「団長、何のために?」


出発準備の指示を出しつつ脇に控えていた副団長がいぶかしげに聞いてくる。


勿論もちろん、俺達の食い扶持ぶちをつなぐ為さ」


第二王女がハンターになって南部を拠点にしてるとは聞いていたが・・・こうも早く出会えるとはな・・・

副団長にはそう言って、俺は隠しきれたつもりで王都に向かっていった王女様一行の方を見ながらほくそ笑んだ。

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