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第10話

 マッコイさんから受け取った紙を持って受付に戻った。

周りの色々な意味を内包した視線はことごとく無視の方向で。


「・・・あのー」


この受付嬢、また下向いて書類仕事してて私が目の前まで来てるのに気付きもしない。

もしかして、話しかけてくるまで自分からは何もしないなんてポリシーを持ってるんじゃないかと勝手に想像してしまうような無視っぷりだ。


「ぁ、はい・・・ケイさんでしたね。では先程支部長から貰った用紙をください」


チラッと視線だけを上げて私を確認して、何もなかったかの様な無機質な声で喋るこの受付嬢・・・


「はい、コレね・・・」


客商売ですからそれはいかがなものか・・・と思いつつ、まぁ国営だからお役所仕事かと納得して用紙を渡す。

・・・ちょっとだけ、読んだ後の反応を期待しながら。


「はい、えーと・・・。・・・えぇっと・・・・・・、・・・・・・」


用紙を受け取ってそれを見たまま、固まってしまいましたよこの受付嬢・・・。


「それと支部長からの提案で明日出発する商団の護衛の依頼、受ける事になったんでその辺りの説明もお願いします」


追い討ち、かけてみました。


「・・・・・・」


まだ固まってるのか、無視です無視。

ふと気付くとギルド内でたむろしてた、多分今日の仕事にあぶれた先程の事を知ってる人達も私と受付嬢の事が気になるようで・・・、注目浴びてます・・・

今まで私の人生においてこの種類の注目をココまで浴びる事は皆無だったのでちょっと、困りますね。


「・・・あのー」


出来れば早く終わらせたいんですけど・・・?


「・・・あ!も、申し訳ありません!!ただいま処理させて頂きます!!」


立ち上がっての腰から90度、最敬礼ですか・・・。

さっきまでの態度はなんだったんだ?と言いたくなる程頑張って額に汗かきながら作業する受付嬢。

その態度を不審に思ったのか先程お約束を演じてくれた三人組のリーダーっぽい人が近づいてきた。


「なぁ、あんた・・・我らがファスゴト支部のアイドル、コーフィリアちゃんに何したんだ?」


「ん?検査の用紙を渡しただけだが?」


「それでコーフィリアちゃんがこうなるわけねぇだろ?事の次第によっちゃ支部のメンバーが敵に回るぞ?」


その言葉に首肯しながら周りに近づいてくる静観してた人達。

怒気・殺気・・・嫉妬やら色んなものが私に向かってます・・・ね。

あんたらもう少しマシなもんに興味持てと言いたい、というかツッコミ入れたい。


「ちょちょっと、止めなさい!・・・嫌いになるわよ?」


そして一生懸命作業してた受付嬢、気付いて止めてくれたのは良いけどその言葉もいかがなものか・・・何気に瞳ウルウル上目遣いで明らかに狙ってやってるでしょ。

しかもそれに怖気おじけづいたのか口をつぐんで私から一歩遠のく一同・・・。


「・・・・・・」


ここって、国営のギルドなんだよな・・・

もしかして、この世界を作ったのはえー好きな二次元愛好家なのだろうか・・・

このテンションにはとてもじゃないけどついていけない・・・

変な勘繰りをしていたら・・・、書いていた書類をカウンターの穴に入れたコーフィリアちゃんが隣の台に染み出すように出てきた腕輪を取って私に視線を合わせてきた。

その機構にまた少し驚く。


「お待たせしました、登録完了です。これがギルド証になります」


どんなご都合主義の世界なんだと現実逃避気味に視線を彷徨さまよわせていたら終わったようで、コーフィリアちゃんがプレートの付いた腕輪を差し出してきた。

周りの痴態は放置して、腕輪を見るとプレートの部分にギルドのマーク・ランクなど書かれている・・・いや彫られていると言った方が正解か。


「ぉ・・・」


早速さっそく、手首に通してみたら勝手に腕の太さに合わせて大きさを変えた事にまた驚く。

腕を振ってみても何も付いていないかの様な感覚で全く違和感がない。


「・・・それと、明日の依頼受諾の件ですね」


顔には出さなかったが、ちゃんと聞いてたんだ・・・

腕を振ったりしつつギルド証の感覚を確かめている私をチラリと一瞥しつつ次の件に移るコーフィリア嬢・・・普段はとぼけてるけど実は仕事デキる人間、として呼び方を変えようかな。


「えぇ」


「はい、ではまず依頼を受ける方法ですが、2種類あります。1つはギルドに来ていただきそのギルド証のプレート部分をあそこに3つ並べてある台にかざします。そうされますとその時のご自分のランクで受諾できる依頼がランクの近い順にて表示されますのでそれを指示に従って受諾していただく方法。もう1つは直接私など受付の人間に聞く方法で、前者は通常利用していただく事になるかと思いますが後者の場合は特定の条件がある場合に利用される事が多いです」


「・・・特定の条件というと?」


「はい、例えば依頼の種類や地域・依頼ランクなどを限定される場合です」


「なるほど・・・」


私が一定の理解を示した事を感じ取ってニッコリと微笑むコーフィリア嬢。

ただ惜しむらくは初対面の時との態度の明らかな変化か。

私にとってその変わり身は数日前までの人間だった頃を思い出してあまり面白くない。

しかしこの世界の人にとって微笑んだコーフィリア嬢はとても可愛いらしく、ギルド内に居た他の奴等からの魂を抜かれた溜息やらがあちこちで耳に入って正直耳障りだ。


「では明日の護衛任務についてですが」


「あ、はい・・・」


コーフィリア嬢・・・、周りの醜態は完全スルーですか・・・


「今回護衛する商隊の規模はそれ程大きくはありません、護衛対象は3人の人と2頭の馬、大型馬車1台との事です。その他詳細についてはこちらの依頼者側と詰めて頂きます」


説明を受けて手渡された1枚の紙、見ると何処かの住所・・・というか私が泊まった宿[宿の1階]と依頼者の名前が書いてあった。

なるほど依頼者はそこに居る、詳しい事は依頼者に・・・と。


「それじゃ、行ってみます」


「はい、お気をつけて・・・いってらっしゃい」


・・・なるほど、少しだけ周りの輩の気持ちが分かった気がする。

そこにあるのは一言で言えば、『天使の微笑み』と言われてしまう様な笑みがそこにはあった。


 「さてと・・・」


阿鼻叫喚の図、・・・と言った方が良いのか大騒ぎのギルドを後にして昨日泊まった宿を目指す。


「そういえば・・・、」


旅の準備をしておかないとな。

あの王女にかなり不審者扱いされた事を思い出す。

店も開き始めたこの時間、依頼者に会う前に準備しておいた方が良いだろうと気付いて行き先を変える。


「さて、まずは・・・」


ぐるりと周りを一周、見渡して雑貨店的な店を探す。

必要な物は寝袋に食器、外套に保存食の類・・・かな。


「ぉ、あそこに行ってみますか」


やはりと言うかギルドの近くという立地条件、多分あるだろうと思って見渡せばあった。

通行人を2人ばかりやり過ごしてその店に入る。


「いらっしゃい!」


入ってみると整然と陳列された商品、埃一つない床の店内に商店の二代目的な風貌の20代後半の主人が居て棚の掃除をしていた。


「何かお探しで?」


私に近づきながら商売人らしく不躾にならない程度に下から上まで品定めした若旦那は、私の返事を待っている様子。


「・・・旅の装備をね」


店内にある商品をざっと見回してから一言そう言い、また店内を物色する。

店の主人はもう一度私を見て、何か理解したのか一つ頷くとこう言ってきた。


「・・・、あぁ新人さんですか。でしたらあちらのセット商品はいかがですか?旅に最低限必要な道具が揃って7エルと大変お買い得ですよ?」


確かに、私は新人なワケで。

合ってはいるが、勝手に納得して初心者が良く買っていくと思われる商品をお勧めてじゃぁ決まったらとばかりに離れていく主人。

まぁいいかとそちらに視線を移すと1セットになった装備とその中身が書かれた値札があった。


「ありがとう」


一言礼を言ってその陳列棚まで行き、中身を確認する。


「えぇと・・・」


スマートな見た目だが手を突っ込んでみると割りと暖かい寝袋に雑に扱っても割れたりしない金属製の食器類、水をはじく革素材を使ったフード付きで腰にベルトの巻かれた外套、タオルなど生活必需品の他に保存食まで10食1パックが付いている。

それに旅先での負傷に対する応急治療セットと回復系の力石が数個。

確かに、新人には最低限必要な物が揃ってるしセット価格で割安、財布にも優しいだろう。

だけど私の場合、新人には違いないが財布の紐が硬いわけではない。

むしろ、作ろうと思えばいくらでも・・・それこそ王国を買収、なんて事も可能な・・・

あぁ、いけないイケナイ・・・。

いつの間にか気持ちや感覚がおかしくなっていた。

軽く頭を振って今の思考を振り払う。

店の主人もそこまで商売熱心ではないのか、はたまたあまりお客に構いすぎると良くないと思っているのか、チラリと私の動きを見ただけで何も言わず自分の仕事に戻っている。

少しの間考えて、主人に少し近づいて声をかけた。


「・・・あのー」


「はい、なんでしょうか?」


呼びかけに応じて店の主人が近づいてきたので思ってた事を言ってみる。


「治療セットと力石は要らないので、・・・5エルでどうでしょう?」


「ん〜雑貨屋の私が言うのもなんだけど、それらは必要だと思いますよ?」


確かに新人や初心者だったら必要だろうけど。

店の主人はそう考えて、多分親切心からの忠告なんだろうけど私には意味がない。


「まぁ、そうなんだけど・・・同じ新人でも法定登録者で治癒術も使えるし、力石も作れるから」


「・・・、・・・」


あらら、この人もあのコーフィリア嬢と同じ反応ですか・・・完全に固まってますね。


「えっと・・・そんなに珍しいんですか?」


「ハッ・・・申し訳ありません。えぇ、確かにかなり珍しいですね・・・というか、私は5歳の頃から22年この家業をやってますけど・・・法定登録者に会ったのは初めてですよ。いやぁ驚いた」


「・・・そんなに少ないのですか?」


「はい、そもそもそこまで強くなっているのに世間に出てこないなんて事がまずありませんので」


流石は商人、なのか立ち直りは早かったが・・・まさかそんなに少ないとは思わなかった。

だがお陰でコーフィリア嬢の固まり具合も理解できるというもの。

多分、というかほぼ確実に法定登録者もお初ならばナンバーズ行きなのもお初なのだろう。


「そうなんですか・・・」


ん〜失敗したかなぁ・・・そこまで希少な存在なら英雄みたいな扱いをされてしまうだろうし顔も知れて自由に動けなくなるかもしれない・・・


「・・・ところで先程の事ですけど」


「ぁ、はい。治療セットと力石を差し引いて5エルでしたね、少し足が出てしまいますけど・・・まぁ記念という事で、5エルで結構ですよ」

すみません、書く事が出来ない状況に陥っておりました・・・orz

また、この先も不定期になる事は・・・はいorz

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