9、カップラーメンをあきらめる方法
差し出されたカップラーメン。
お湯を注いで数分で食べられる便利な食品。
確かに食べるのには便利ではあるが、それを見ながら俺は、
「寿也。お前がカップラーメンマニアだからって、そんなものばかり食べるのはよくないぞ?」
「く、直人、お前まで俺に親と同じことを言うのか」
「……そういえば百合、料理は出来るか?」
そこで俺は百合に話を振る。
「簡単なものなら。でも私が作るのはお菓子が多いから、食事関係はそこまで得意でないかも。あ、レシピを見れば作れる程度だよ。それがどうしたの?」
「いや、この世界の通貨もないししばらく自炊になるから、聞いてみただけだ。ちなみに俺は親が仕事に出たりしているから一通りは作れて、寿也は自分で作れない」
「そういえば直人は自分でお弁当を作って持ってきていたよね。おいしそうだったな~」
「よく覚えていたな。でもそんな話、百合としていたか?」
疎遠であったため、そういった話をしたのか記憶にない。
だがその言葉に百合は顔を赤くして、
「た、たまたま聞いてただけだから」
「そうなのか。それでそうだな……例えば、今日、ホットケーキを焼いてくれ、とお願いできるか?」
「いいよ~」
といった約束を取り付けた俺。
そして俺は、寿也に小声で、
「いいか、今日はカップラーメンはあきらめろ」
「な、なぜだ」
「簡単な話だ。女の子の手料理が食べられる。男としてどう思う?」
その一言で寿也は小さく頷き、そしてすぐさまホットケーキミックスと卵、牛乳、バターを呼び出したのだった。
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