87、第二回審査開始
こうして俺たちは、どうにか複数種類の菓子を作成した。
といっても使っているものは幾つか共通しているが。
まず白玉をカップに入れたものを作っておいた。
作った種類が多いので、結果として白玉の量が多くなる現象が起こってしまったからだ。
そういった理由から、どれもが一口程度の量になるようにしている。
今回作り上げたものをとりあえず述べていくと、白玉のあんこのお汁粉、ゴマのお汁粉、あんこを添えたぜんざい、みたらし団子、クルミ餅、葛切りである。
全部で六品だ。
確か品目数も加点対象になったはずだ。
たいして目の前のサイコは二品のみ。
果実のゼリーとアイスのようだった。
単純に一見見えるが、素材の質について語っていたことを考えると、その方が調理としてはいいのかもしれない。
実力で勝負を挑んできた相手……それも本職に勝てるのだろうかといった不安も俺達にはあったが、それでも勝負は勝負だ。
勝つために全力を尽くすのみ。
そう思っているとそこでサイコのそれらのデザートが審査員の前に持ってこられる。
そしてゼリーを一口食べて審査員の人達が、
「なんだこの芳醇な香りとうま味は……甘さも、こんなおいしい果物は食べたことがない」
「オレンジ色のねっとりした果肉、異国の香りのする……甘くていい香りがして最高のゼリーだわ」
「しかもゼリーなのでのど越しもいい」
といったように次々とほめたたえている。
よほど美味しい果実だったのかもしれない。
素材の味を最大限引き出すのも料理人の仕事だ。
俺たちは勝てるのだろうか?
そう俺が思っているとそこで目の前の審査員たちは、アイスの方に手を付ける。
「口の中でミルクと果実のうまみが溶け合っている」
「これは……こんなおいしいものがあるなんて」
「とろける味わい……体が元気になっていきます」
そう言い始める審査員。
俺達から見ても美味しそうに見えて、俺たちは勝てるのだろうかといった話をする。
それでも自分たちの全力を注いだのだからこれまでだ。
そう俺たちが思っているとそこでクレアが手をあげて、
「ところでこの果実は一体何という果実なのですか? 私はこういったものは食べたことがないので知らないのですが、名前を教えてください」
クレアが何気なしにそれを聞く。
その問いかけにサイコが自信満々に、
「“パトラの果実”です」
「え?」
「“パトラの果実”です」
クレアが声をあげて、そして審査員もざわめきだす。
どうしたのだろうと思っているとそこで審査員の一人が、
「“パトラの果実”は非常においしいと聞いたことがありますが、乱獲がひどすぎて今は採取禁止になっていたはずです。いったいどこでこれを手に入れたのですか?」
「え?」
「こんな禁止された果実の使用されたものは、認められません。そして、禁止の果実を手に入れたルートを……あ!」
そこで状況が悪いと悟ったのかサイコがその場から逃げ出した。
騎士団の人達がそんなサイコを追いかけていくのが見える。
それを見ながら俺は、
「もしかして俺たちの勝利か?」
そう呟いたのだった。
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