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54、役割分担

 おかれている武器を見に行こうとするとクレアが、


「武器でしたらうちでもお貸しできますが」

「戻るのに時間がかかるし、それなら初めての依頼だから……今日はお試しで受けてみてもいいかもしれないと思いまして。提案はとてもありがたいのですが……」

「あ、そうですね……」

「それにもしも今後、俺たちはクラスメイトを探しに行くなら自分用の武器が必要ですし」

「そういえばそのようなお話が。全員揃わないと元の世界に戻れないというのもありましたか」

「ええ。なので自分で使ったりある程度手入れや買い替え基準なども分かるようにしておきたいのです」

「……うちにある武器はそれこそ一品ものといったものが多いですから、確かに手入れは難しいですね」


 クレアがそう言って納得してくれた。

 いいものをもらえたりするのもいいけれど、自分に合った代替物が手に入るようにしておかないと、後々違う場所に行った時に困るだろうから。

 ここは異世界。


 俺たちの元居た世界のようにはいかないはずで、自分たちである程度の事はしないといけない。

 だったら早い段階で準備をしておかないと、と俺は思ったのだ。

 そこで寿也が、


「でも、いい武器はあればあったでいいので後で見せてもらっても構いませんか?」

「はい、もちろんです」

「いい武器と量産品のような武器、どうせなら両方の方がいいんじゃないか? 直人」


 そう俺は言われて、


「今後の事を考えたら先走りすぎた」

「いや、ほとんどの事は直人にお任せして俺はカップラーメンを作る作業に戻るから、大変なことはよろしく。あ、必要そうならこうやって補完して行くから」

「……」


 ここで俺は、寿也に交渉などのマネージメントのほとんどを俺に丸投げしたと気づいた。

 確かに食料品などは寿也に頼ることになるだろうしが……そう思いながら俺は百合にも幾らかお任せしてもいいだろうかとの方を見ると、百合がほほ笑み、


「直人、よろしく」

「……」


 そう言われてしまったのだった。








 役割分担は必要とはいえ大変なことになったなと俺が思いつつ、早速武器を探しに行くことに。

 それはギルドの受付のすぐそばにあった。

 初心者冒険者用の道具というだけあって色々あるが、


「俺は、光り輝くこの剣を!」


 と言って寿也が剣を掲げているのを俺は目撃した。

 それを見ながら俺も剣にしておくか、無難だし……それよりも槍の方がいいか? などと考えていると百合が、


「この弓にしようかな」

「弓?」

「うん、私弓道部だから」


 そう百合が返してくる。

 そうだったのかと俺が思っていると、百合が、


「そういえば直人はどうするの? そこにメリケンサックのようなものがあるけれど」

「柔道と空手やボクシングを間違えているような気が。とりあえず槍にしようかと思うが」

「でもつけているところ、少し見てみたいかも」

「そうなのか? じゃあ試しに……赤い変な模様がついているが、まあいいか。それでこうしてこぶしを突き出すの……」


 そこで、俺がつけたメリケンサックに描かれた赤い模様が赤く輝いたかと思うと、炎の塊が飛び出て、大きな音を立ててギルドの壁が崩れ落ちたのだった。



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