36、勝利
俺たちの作った味噌汁の方が美味しいと口々に告げる審査員。
とりあえずはこちらの勝負は勝利、となったようだった。
個人的には……いいのか? と思う部分もあったが、これで当面の目的は達成された。
そこで悲鳴を上げるようにグズダが、
「ば、馬鹿な……この俺が負けるなんて……審査員を買収したとしか思えない。俺はこう見えて“黄色の輝き”を抱く料理人だ。なのに……なのにどうして」
そう叫ぶのを聞きながら俺はというと、
「あの、クレア。一つ聞いていいか?」
「なんでしょう?」
「あの“黄色の輝き”とはいったい……」
そこで問いかけるとクレアが不思議そうに、
「皆さんがこのスープを作っている間も、出ていましたが」
「……え?」
「ほら、青い光など。あれです。でもそういえば料理人の方でもその輝きを見せるのは稀で、強さもいろいろと聞いたような……。私の屋敷の料理人は……昔いた料理人も含めてそう言った感じでしたので、そういうものかと思っていましたが、どうも違うみたいですね。……私もよく世間知らずだと怒られてしまっていますから、多分、輝きが厚人は天才的な料理人の方ばかりなのでしょう」
そうクレアは言うが……俺たちとしては普段通りに料理をしたに過ぎない。
ただそれだけで食材から変な光が出るなどしていたが、と考えているとそこで寿也が、
「異世界の食材のようなものを特殊能力で再現すると、特別な材料になるとか?」
「そうなのか? だからあんな風になったのか? 百合も特別に何かをしたわけではないよな?」
そう俺が聞くと百合も頷く。
やはりこの食材に何か秘密があるのかといった話になるがそこで、
「納得ができん! お前たちのような怪しい人物たちの料理のほうが俺の料理よりもうまいとは……これでは“自称・悪の美食会”でありこの地域の長を任されている俺には信じられない! 審査員を買収したとしか思えない!」
「では、食べてみますか?」
「なんだと?」
「あなたにも料理人のプライドがあるならば……俺たちの料理の良さがわかるはずですよ」
と、とりあえず俺は挑発めいたことを口にした俺。
どんな形であれ、というか不正せずに勝利したのにこの言い方はないだろうと俺は思ったのだ。
そもそもカップラーメンを禁止にするといった嫌がらせを先にしたのはそちらだろう、といった気持ちも俺の中にはあったと思う。
すると目に見えてグズダは顔を赤くして怒りの形相でこちらを見ながら、
「いいだろう、そのスープを飲んでやる」
そういいだしたために俺たちはグズダに味噌汁をもってくる。
果たして、それを口にすることになったグズダだがそこで、
「こ、これは……」
一口口にすると途端に、そう叫んだ。
どうしたのだろうかと俺が見ているとそこでグズダが、
「この、味、香り……明らかに伝説の輝きと言われている“虹色の噴煙”と呼ばれる技が……われらの“自称・悪の美食会”の長の料理に似ている……」
そう呟いたのだった。
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