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31、その手は使えない

 そして夢も見ずにぐっすりと眠った俺。

 次の日、目を開けたら自分のベッドの上だったとか、病院のベッドの上だったらいいなという淡い期待をぼんやりとした頭の中で浮かべたが、現実は非常だった。


「やっぱりこの異世界の客室か。……これはもう現実だと考えるしかないよな」


 そうつぶやいて起きた俺。

 寿也がまだ眠っているので起こし、それから百合の部屋の扉をたたいた。

 中から百合が現れて、よく眠れなかったと笑っていた。


 俺は疲れすぎてよく眠れたよ、と答えながら、そこで呼びに来たクレアとメイドのサラの二人と一緒に食事をする。

 そして、今日の予定をクレアから聞いた。


「実は今日、悪の美食会なる人たちと料理対決することになっているのです。ですので今日は一緒にその会に参加していただけないでしょうか」

「なるほど。それで昨日はあのカップラーメンを……というかぎりぎりじゃないですか」

「はい、ぎりぎりです。しかも遠方から料理人に頼み込む予定がそちらにも魔の手が……。そのせいで呼ぶことができず、けれどその帰り道に皆様方にお会いしたのです」


 そういってうれしそうにクレアがほほ笑む。

 どうやら大変なことになりそうなところで俺たちと遭遇したらしい。

 とはいえ、人助けにこう言った力が使えるならそれでいいかと俺は思っていると、


「大変です、お嬢様!」


 慌てたようにメイドが俺たちの食事の場にやってくる。

 どうしたのだろうと思っているとそこでメイドが何かの紙を、一緒に食事をしていたクレアの父親に渡す。

 そしてその紙を読んでからクレアの父は、顔色を悪くさせてため息をついた。


「クレア、カップラーメンは使えなくなった」

「! どういうことですか?」

「ある程度でき上っていてもいいという、のは材料までだそうだ。せいぜい発酵食品くらいのものであるらしい。ヨーグルト、といった……な」

「な! この前まではそれでいいといった話のはず!」

「だが中止なのは事実だ。……言いたくはないが、やはりうちの屋敷の使用人たちも、あちら側に寝返っていたか」


 ため息をつくようなクレアの父。

 クレアも沈黙する。

 だがすぐにクレアは、


「それで、ほかに何で勝負することになったのですか? しかもこんな当日の料理大会で変更なんて……」

「約束を守らざる終えなければ、こういった我々にとって不都合な手を打ってくるか。ある程度あちらの勝負を飲む代わりにこちらも強い権利を要求したからこうなるか」

「ですがここで勝たなければ……」

「そうだな……」


 といったように深刻そうに話すクレア。

 そこで俺は、


「それでいったいどんな勝負になったのですか?」

「変わったスープを作ること、だそうです。でも変わっているものを今から作り上げるのは……」


 そうつぶやいたところでメイドのサラが何かを思い出したように、


「以前いただいたお味噌汁? でしたか? あれを、簡易的なものでなく……調味料などから作ることはできますか?」

「材料さえあれば俺は作れる」


 そう俺は答えてから寿也に振り向き、


「寿也、材料は出せそうか?」

「もちろん」

「料理はできそうか?」

「自信はない」


 答える寿也に、材料係として寿也にお願いはしてと俺は思ってから百合に、


「作り方はわかるか?」

「うん、煮干しと昆布からだしをとる方法も知っているよ!」

「じゅあ、俺と百合で、お味噌汁を作るか」


 そういったことに決まったのだった。

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