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どうやらリア充は神様にも恨まれているようでした…

 

「お主らがイチャイチャしまくってて、すごいムカついたからじゃー!」

「ああ、やっぱり?」

「自覚はあったんじゃな…」


 うん、やっぱりツクノは、俺とリリアがあまりにもいちゃついていたから、頭にきていたらしい。まあ気持ちはものすごい分かる。実際俺もヒキニート時代にこんなバカップルを目撃していたら、内心穏やかではいられなかっただろう。


「だけど許してくれよ。俺たちは付き合ったばっかなんだ。それを考えれば、こうなってしまうのも仕方ないと言えるんじゃないか?」

「むー……まあ、たしかに…」

「それに、勝手にこっちに来てその雰囲気を台無しにしたのはツクノだろ?」

「む……そ、それは、ごめん、なのじゃ…」


 おいおいちょろすぎるぞこいつ。こんなんで本当に神様やれてんのかよ。なんか謝らせてる俺が申し訳なくなってくるレベルなんだけど。

 それに俺はああ言ったが、実際俺らは人の世界に不法侵入しおいてイチャイチャしまくってるわけだから、確実に悪いのはこっちなんだよなあ。


「な、なんか俺もごめんな?」

「もう、コウキ君は謝る必要なんてないんだよ?だって全面的にツクノが悪いんだから。」


 そしてリリアはマジで容赦ねえな。大の男が理不尽にもロリババアを謝らせているというこの現状に対して何も思うところは無かったというのか。

 というか、あれ?今更だけどリリアさんもしかして、甘々な雰囲気をツクノにぶち壊されたから怒ってるのか?


「……もしかしてリリア、怒ってる?」

「まあ、少しだけね。」


 そう言うリリアはやはり怒っているようだ。さっきツクノを紹介してもらった時には全然怒ってる感じがしなかったが、リア充の話に戻ったから思い出して少しイライラしているのだろう。

 しかしそれにしてもリリアは怒っていても可愛いな。プンプンという擬音でもつきそうな感じで、頬を膨らませながらのこの表情。たまんないな。


「ん……プシューッ…ちょ、ちょっとコウキ君!」

「はは、悪い悪い。」


 そんなリリアの膨れた頬へ思わず指を突くと、そこに溜まっていた空気が口から逃げていく。それに一瞬硬直し、恥ずかしがりながらも怒ってくるリリアだったが、それとは対照的に、俺は口元のニヤニヤを隠せない。そしてそれを見たリリアも次第にニヤケていき、結局再びバカップルのようになってしまった。


「むー……」


 そのまま永遠にイチャついていたかったが、顔を真っ赤にして睨むツクノが視界の端に見えたので一旦中断する。どうやらツクノは、ここで邪魔をしてしまったらまたリリアが怒ってしまうと思い、口を出さないでいるようだった。しかし嫉妬か、あるいは怒りからかどうしても睨んでしまうのはやめられないようで。


「そんな親の仇でも目にしたかのような顔で睨むなよ、ツクノ。」

「べ、別に睨んでるわけじゃないわい!」

「てかなに?神様は恋人とかつくれないの?」

「そ、そりゃあ、そもそも出会いがないしのう……」


 ああ、確かに出会いは少なそうだ。なんたって神様だしな。まあリリアは地上に遊びに来て俺と出会ったわけだが、そんなのは珍しいケースなんだろう。

 しかも、もし俺のイメージ通りなら神様はかなり長生きなはずだ。そんな状態でずっと恋人の一人も出来なければ、そりゃあリア充に対する恨みもどんどん積もっていくというもんだ。


「なあ二人とも、神様って長生きなイメージが俺の中であるんだけど、やっぱり実際もそうなの?」

「うん、そうだね。まあ正確には長生きというより不老不死って感じかな。」


 不老不死か。なんだか予想を上回る単語が出てきてしまったな。でも神様ならある意味納得できる話だ。

 しかしリリアが不老不死、ということは必然的に俺とはかなり早く死別してしまうことになる。俺が仮にあと七十年ほど生きるとして、その一生は俺にとっては長いものだが、不老不死であるリリアにとっては本当に一瞬に感じるだろう。うん、これに関しては何か対策を練らないといけないな。リリアに寂しい思いはさせたくないし。

 すると、俺が考え事をしているのを見かねたのか、リリアが口を開く。


「ん?どうしたのコウキ君、難しい顔なんてして。」

「いや、まあ少し、な。」

「何か悩み事があるなら遠慮なく言って?僕でよければいくらでも力になるよ?」

「うむ、わしもお主とは出会ったばかりじゃが悪い奴ではないのは分かったからの。遠慮なく申してみよ。」


 もともと二人に言うつもりは無かったんだが……。まあここまで言われては仕方ないな。それに、こんな風に人に頼るってのも、かなり久しぶりだからな。なんだか少し、良い気分だ。


「いやさ、俺ってただの人間だから何十年かで死ぬことになるだろ?そしたらリリアとはかなり早く死別しちゃうなって思ってさ。」

「なになに?もしかして僕の事を心配してくれたの?」

「はぁ、これだからリア充は…」


 内心少しドキドキしながら打ち明けてみると、リリアは嬉しそうに、対してツクノは呆れたように返事をしてくれた。その顔に悲観的な印象は全く見受けられないが、実際これは何とかなる問題なのだろうか?


「何か、俺がもっと長く生きられる方法とかはあったりしないか?」

「うーん……やっぱり僕としてもコウキ君とはできるだけ長く一緒にいたいけど……。ツクノは何か思いつく?」

「そうじゃのう。まあ少なくとも普通の手段では残念ながらそれは叶わないじゃろうな。」


 まあ、そりゃそうだよな。やっぱり寿命を多く伸ばすなんて、そんな簡単に出来るわけがない。残念だが、できるだけリリアに寂しい思いをさせないように、この一生を生きるしかないか。


「まあそんなに悲観的な顔をするなコウキよ。まだダメとは言っておらんじゃろう?」

「!?何か、方法があるのか?」

「まあ絶対的な保証は出来ないが、一応二つ方法がある。」

「おお、さすがツクノだね!僕なんて全く思いつかなかったよ!」

「いやお主は一応神様なんじゃからせめて一つくらいは思いつかんか…」

「それで、どんな方法なんだ?」

「ふむ、それはじゃな…」


 そう言ってツクノは俺たちに、なんと寿命を延ばすのではなく、不老不死になる方法を教えてくれた。



 まず一つ目。これは思い切って俺が神様になってしまうことだ。しかし神様になるのには条件があり、まず自分の星をもつこと、更にそこに自分以外の生物を存在させる必要がある。ちなみに星は一応一定以上の大きさを持っていなくてはいけないらしい。つまりそこらへんの石なんかを自分の星とするのはダメだということだ。そして、そこに住む生物というのは別に動物ではなく植物でもいいらしい。


 だがこれの問題は星をどうやって作るか、だ。一応は、強大な力によって空間に穴を開け、さらにその中に入って創造スキルか何かを使う、という方法によって、理論上は星を作ることが可能とされる。しかしまず空間を作るのに使う力が半端ないのと、仮にそれが成功してもそこで力を使い切ってしまえば、異空間の中に閉じ込められてしまうことになる。つまりかなりリスキーというわけだ。



 そして二つ目。これはリリアとツクノからそれぞれ加護と呼ばれるものをもらうやり方だ。この加護というのは神、もしくは天使が生物に授けることが出来る特殊な力のことで、それによって様々な効果を得ることが出来る。更にこの効果は対象に対する思いに比例するらしく、また天使よりも神様の方が大きな力を与えやすいらしい。よってこれを、地球とこの世界のそれぞれ最高位にいる二人に、思いとともに与えてもらおうというのだ。


 しかしこれにも欠点がある。そもそも不老不死になる効果を与える加護なんてものは前例に無く、それ故にそもそも不可能かもしれないのだ。ただ加護を与える側、与えられる側、それぞれにリスクが全くないらしいため、もう一つの方法に比べればかなり安全と言える。


「まあ、ざっくり説明するとこんな感じじゃの。とりあえず今試せるのは加護の方じゃが、どうじゃ、やってみるかの?」

「ああそうだな、ぜひやってみたい。」

「ねえねえ、それならさ、地球にいる天使のアナにも加護をかけてもらうのはどうかな?それで成功率が上がったりしない?」

「いや、それはちと危険じゃの。そもそもわしとリリア二人だけでも相当な力をコウキに授けることになる。そこに加えてさらに力を授けたらコウキの体が持たんわい。」


 ん?あれ?リスク無いんじゃなかったの?ついさっき加護を受ける側授ける側ともにリスクはないって聞いたんだけど…これ本当に大丈夫なのか?


「そんな心配そうな顔をせんでも、わしとリリア二人分ならおそらく大丈夫じゃろうよ。」

「そうか、それなら良かった。」

「まあ全部わしらのさじ加減にかかっておるがの。」

「ああ、その言葉は出来れば聞きたくなかったぜ。」


 出来るならばたとえ気休めだとしても、絶対大丈夫、みたいに安心出来ることを言って欲しかったものだ。だってこれ、手術の前日とかになって「安心してください。まあ、全部明日の僕の体調次第ですけどね。」とか言い出す医者みたいなもんじゃねえか。怖すぎるわそんなん。流石にそんなことを言われた日には、自分の体調よりも医者の体調を心配するまである。


「ま、まあお前らを信じよう。早速やってみてもらってもいいか?」

「うむ、そうじゃの。リリア、覚悟はいいか?」

「うん、大丈夫。絶対にコウキ君は死なせない!」

「……ん?覚悟?死なせない?え、俺死ぬかもしれないの?ちょっと、聞いてないんですけど。」

「大丈夫じゃ。ほれ、さっきわしらを信じると言ったじゃろ?」

「いや、言ったけどそれとこれとは別だろ…」


 なんか直前になってさらっとめっちゃ不安なこと言われたんだがこれ本当に大丈夫なんだろうな?もはやリリアに至っては切羽詰ったような顔で覚悟決めてるし。対してツクノのこの余裕そうな顔よ。普段なら安心できる材料にもなろうが、この場合は別だ。本当にやる気があるのか不安になってくる。


「じゃあ、いくぞー。」

「おう頼むぞ、マジで頼むからな。本当に信じてるからな、絶対に失敗するんじゃないぞ。」

「お主もはや信じておらんじゃろ……。まあ良いわ、では今度こそいくぞ。」

「コウキ君、僕たちを信じて?絶対に成功してみせるよ。」


 そう言うと二人は、まだ覚悟の決まっていない俺に、掌をかざした。すると徐々にその掌が光り始め、神々しい雰囲気を醸し出し始める。それは、ただの人間である俺でさえも理解することができるほどだった。

 ……え?本当にお前にそんなのが分かるのかって?HAHAHA、分かるわけないだろう。こんな事でも考えてないと不安でどうにかなりそうなんだよ!!


「では、この世界の最高神ツクノの名の下にお主、コウキに加護を授ける。」

「僕は、地球の最高神リリアの名の下に君、コウキ君に加護を授ける。」


 ようやく準備が終わったのか、二人は堅苦しい口調で俺に加護を与える旨を宣言する。おそらくこれが加護を与える合図だったのだろう。二人が言い終わった瞬間、俺の体に大きな力がどんどん入っていくのが分かった。これはマジで。

 そうして俺はどんどんと力を溜め込み始めるが、受け取る力が増えれば増えるほど、意識がだんだんと遠のいていくのが分かった。しかし意識が遠のきながらもその力にどこか、温もりを感じる。それはまるで、本当に二人の想いが詰まっているかのようであり、そのことに気づいた俺は微かに笑みを浮かべた。


 そんな温もりのおかげか、俺は意識が遠のいていっているにも関わらず平静を保つことが出来ていた。この加護を与えてもらった後のことを考えられる程度には。


 無事に意識が戻ったら、リリアと結婚するんだ…!



 そう心に決めた次の瞬間、俺は意識を完全に失った。


あっ、それ死亡フラグ……

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