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23話.ダンジョン戦闘

 通路の中は、戦闘を行うには十分なスペースがある。骨の怪物――スケルトンの数は一体。対する此方は四人いる。


 数的には、今のところ此方が有利だ。だが、時間がたてばたつほど、増援がやってくる可能性は高くなる。敵の数が増えて、乱戦になればなるほど、此方が不利になっていくだろう。


 何せ、スケルトンは増やせるのだ。ダンジョンマスターに与えられた能力、モンスター召喚を使う事で簡単に。それこそ、ここのダンジョンマスターが魔力切れになるまで敵の数は増え続けるだろう。


 モンスター召喚、この能力の有用性は二つある。


 一つは、召喚したモンスターとの間に繋がりが出来る事。


 モンスターとは本来、人には抗えない力を持つ者達の総称だ。腕力や脚力などの単純なパラメータでは人間がモンスターに勝てる道理はない。


 だからこそ、人間は知恵を使う。殴り合いで負けるのならば、武器を使えばいい。力で負けるのならば、技術を磨き、戦略を立てて戦えばいい。


 人間は知恵を使うが、モンスター達にはそれが無い。


 野生のままに、本能に従って生きるモンスター達の、唯一の弱点がそこだろう。


 だが、ダンジョンマスターに召喚されたモンスターにはその弱点が存在しない。


 ダンジョンマスターからの指示は魂を通して遠隔からも飛ばせる為、モンスターは戦略的な行動をとる事が出来る。


 人間よりも、はるかに基礎能力の高いモンスターが、人間の知恵を用いた戦闘を行える。これが、この能力の一つ目の利点だ。


 そして、もう一つの利点はダンジョン防衛において発揮される。


 モンスター召喚は、即効性のある能力だ。


 魔力さえあれば、いつでもどこでも即座にモンスターを召喚できる。


 召喚数の上限という縛りこそあるが、軍隊レベルの戦力を自由に投入できるのだ。


 数を増やし、乱戦になればお互いの陣営には少なからず被害が出る。だが、相打ちならば実質的にダンジョン側の勝利だ。


 何せ、人間は傷ついた身体を回復させるのに大きな時間が必要なのに対し、ダンジョン側は戦力をいつでも増やす事が出来る。


 つまり、相打ちによって戦力が低下するのは、侵入者の方なのだ。

 

 勿論、ダンジョンマスターの魔力が尽きてしまえばそれまでなのだが、ダンジョンが大規模になるほどその弱点は解消されていく。


 そして、このダンジョンはなかなかの規模だ。


 戦闘が始まったばかりで、今のところは増援の兆しはない。だが、あまり時間を掛けてはいられないだろう。


「……はあっ!」


 アルルの放った一撃が、スケルトンの握っている剣を横に弾いた。その瞬間、ハルトの追撃がスケルトンのボディ目掛けて仕掛けられる。


 ――ガッ!


 しかし、追撃はスケルトンの態勢を崩すのみで終わった。スケルトンの持つ盾が、ハルトの一撃が致命傷となり得るのを防いだのだ。


 ハルトの一撃は、有効打を与えられていない。だが、確かにスケルトンの態勢は崩れた。そこに、勝機はある。


「うおおおっ!」


 手に持った剣を振りかぶり、頭上から振り下ろす。単純な、上から下へ向かう動作。だが、単純故に初心者でも一定のダメージは与えられるであろう一撃。これが、今のオレに出来る最大の攻撃だろう。


 ――キィン!


 しかし、これもスケルトンの身体へ届く事は無い。アルルが弾いた剣が、モンスター特有の強力なパワーで引き戻され、オレの一撃を受け止めたからだ。


 ……キッツイな、これ!


 剣を交え、力勝負になるが、オレの力では押し込む事が出来ない。寧ろ、徐々に押し負けている。このままでは、折角出来たチャンスが無駄になってしまうだろう。


 だが、オレ達の仲間はもう一人いる。


「せええええい!」


 浄化のグローブを両手につけたテンが、すかさずスケルトンに肉薄する。


 武闘家は近接戦闘のプロだ。力では無く、その技術によってモンスターを倒すスペシャリスト。


 だが、武闘家が最大の力を発揮するには連携が必要だ。


 武闘家の最大の長所は、近接攻撃の破壊力。弱点は、近づく際の隙が大きい事。その為、ここまでの戦闘はテンが活躍する為のお膳立てと言ってもいい。


 一撃、二撃、三撃。


 目にも止まらぬ速さで繰り出されたそれを、防ぐ術は既にスケルトンには存在していなかった。


 浄化のグローブの特性なのか、テンが打ち込んでいく拳は光り輝いている。


 輝く拳が、スケルトンの身体を打つ。

 

 何度も、何度も。


 ――そして、唐突にテンは拳を打ち込むのを止めた。


「……終わったぜ」


 モンスターの身体を構成していた骨が、バラバラになり地に落ちる。


 不気味ながらも、意思を持ってオレ達に向かってきたそれは、今では普通の骨にしか見えない。


 ……どうやら、オレ達は戦闘に勝利したようだ。

 

 ホッと息をつき、剣を腰に納める。モンスターと力比べをするのは心臓に悪い。


 肉体的にはそれほどでもないが、精神的には疲れてしまう。


「――まだです! 油断しないでください!」


 安心したオレの気を引き締めるように、ハルトの声が響き渡る。


 同時に、通路の奥からスケルトンが三体、飛び出してきた。


 ここで、増援かよ……!

 

 どうやら、オレの恐れていた事が現実になってしまったらしい。


 此方が必死なように、相手も必死なのだ。文字通り、命がけで防衛しにきている。


 納めた剣を再び引き抜き、スケルトンに向けて構える。どうやらダンジョン内に、安息の地はなさそうだ。

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