1話.初めてのダンジョン作り
闇が晴れ視界がクリアになると、辺り一面石で囲まれた狭い部屋にいた。部屋の中心には本が一冊。そして本の横には台座と、それにはめ込まれた青い光を放つクリスタル状の物体があった。
「ここはどこだ?」
異世界、ダンジョン。色々とあの影は言っていたが説明していない部分の方がはるかに多い。取り敢えず今は情報が欲しい。藁にも縋る思いで中心にある本をパラパラと捲ってみる。
――よう、ここにいるって事は無事に転生出来たみたいだな。この本はダンジョンについてとお前ら自身の力について書いてある。第二の生を充実させるために使ってくれ。
まず、ダンジョンについてだがダンジョンコアを壊されると崩壊する。コアはこの本の横にあるクリスタルだ。これが壊されるとお前らも死ぬ。ダンジョン無きダンジョンマスターなんて存在価値が無いからな。気を付けてくれ。コアを操作する事でダンジョンを改造出来るからこの後試してみるといい。
ダンジョンは侵入して来た奴の命を奪う事でレベルが上げれる。レベルが上がればダンジョンの機能も増えるし、お前らに与えた力も強化されるから頑張ってくれ。ダンジョンについてはこんな所だ。最低限の説明しかしてないから後は自分で調べてくれ。
次にお前らに与えた力だ。と言っても大した物じゃない。言葉にすれば簡単なもんだ。モンスター召喚。それがお前らに与えた力の全てだ。
この力はその名の通りモンスターを召喚する力だ。いつでもどこでもモンスターを呼べる優れものだぜ。召喚出来るモンスターは一人につき一種族だ。召喚できる数はダンジョンのレベル次第だな。召喚されるモンスターについてだが、お前らの個性に最も合ったモンスターが召喚されるはずだぜ。陰湿な奴には死霊系のモンスターとかな。魂的に相性がいいから普通より強いモンスターを召喚、使役出来るはずだ。それでダンジョンを守れ。来た奴らを殺せ。勇者達を皆殺しにしろ。
パタンと本を閉じる。ここから先は勇者に対する恨みなどが書かれていて欲しい情報が手に入りそうに無かったからだ。取り敢えず本に書いてあった通りにダンジョンを改造してみる事にする。
モンスターや勇者などの不明確な情報は確かに多い。でもやれと言われたらやる。自分でその理由を考えるのは後回しだ。理解なんてする必要は無い。自分より遥かに上位の存在がまずはこれをやれと言った。ならば理由なんてそれだけで十分だし、自分が動く理由なんてそれだけでいい。
とはいえ、どうやってコアを操作するのだろうか。コアは相も変わらず青い光を放っている。取り敢えずコアを台座から外し、手に取ってみる。重さはあまり感じない。
「ダンジョンコア起動! ……ダンジョン改造! ……システムメニュー!」
取り敢えずありそうな言葉を片っ端から叫んでみる。しかしコアはうんともすんとも反応しない。青い光を放つのみだ。
「……ダンジョンメニュー!」
――瞬間、コアの持つ輝きが一際大きくなり部屋を包んだ。膨大なエネルギーがコアの内部から発せられているのが分かった。今にも爆発し、クリスタルが砕け散りそうなのが伝わってくる。
「……え?」
――いや、拙くね? コア壊れたらオレも死ぬんだよね!? 死因がこんな自爆だなんて嫌だよ!?
コアから発せられるエネルギーの奔流はオレの意思に反してその大きさを増してゆく。そして、とうとうコアにヒビが入った。
「ギャアアアアアア!?」
やばいやばいやばいやばい――! 何かしなきゃという焦りがどんどんと膨らんでいく。しかし焦る気持ちに反して、オレの身体は電池が切れてしまったかのようにピクリとも動くことは無かった。
――ああ、ここでオレは死ぬのか。
爆音が響き渡りコアが木っ端微塵になる。真っ白い煙が空間を包んだ。一瞬とも永遠とも言える時間が経過し、白い煙は徐々にその勢いを衰えさせていく。
完全に煙が晴れた時、目の前にはダンジョンメニューと書かれた大きなウインドウがあった。
――ダンジョンメニュー――
機能一覧
・ダンジョン改造
・現在のダンジョンのレベルは1です。レベルを上げる事で機能は追加されます。
……よし、落ち着けオレ。全身から吹き出る汗がヤバい。今のは本気で焦った。まだ心臓がバクバクいっている。でもこれはオレが悪かったのかもしれない。何故ならここは異世界。オレ自身普通なら考えられない転生という体験をしたばかりだ。オレの常識で物事を考えていてはダメなのだろう。
よし、もう何が来ても大丈夫だ。心を強く持って宙にウインドウに向き合う決心はついた。思えばこれはあの闇からの優しさだったのかもしれない。事実、もう大した事では驚かない気がする。
「で、どうやって操作するんだ?」
試しにウインドウをタッチしてみる。すると、拍子抜けする程簡単にメニューを操作することが出来た。
――ダンジョンメニュー――
・ダンジョン改造
利用できる機能は次の通りです。
・通路生成(残り一回)
・部屋生成(残り一回)
「え? これだけ?」
改造というにはちょっと少ない気がするがまあレベル1ならこんな物か。これはこれから増えていくという事なのだろう。今後に期待だな。
取り合えず通路生成と部屋生成を試してみる。ウインドウ内の文字をタッチした。
括弧内の残り回数が1から0へと変わり、それと同時にゴゴゴという重い音が響き渡る。やがて音は収まり、石の壁の一角にドアが誕生していた。
「おお、凄い……!」
ファンタジー色の強い出来事に思わず口から感嘆が漏れる。こういう出来事を見て、異世界に来たんだという実感が今更ながらに湧いてきた。やはり脳で理解していても実際に体験すると違うという事なのだろう。
きっとこのドアの先に、ダンジョンが生成されているのだと思う。ドアノブを捻って先を確認する。
「おお!? ……おお?」
……これはダンジョンなのか? ドアの先にはお世辞にも大きいとは言えない程の小さい部屋があった。そしてそこから人がギリギリ通れるくらいの狭い通路が光に向かって伸びている。おそらく外に繋がっているのだろう。ザッと見た感じだと、ダンジョンというよりは小さめの洞窟、いや子供の時に作った秘密基地の様な感じだ。流石にそこまでしょぼくは無いと思いたいけど。兎に角、こんなダンジョンでは直ぐに攻略されてしまいそうだ。
ダンジョンのレベルを急いで上げる事を心に誓い、元の部屋に戻る。部屋が増えたのでコアがある部屋はコアルームと呼ぼうと思う。今はまだ二つだけしか部屋が無いが、いずれもっと増えるだろうしな。早いうちから名称を決めておいて損はない筈だ。
「後は……モンスター召喚って奴かな」
次に行うことを口に出し、気合を入れる。まだオレのダンジョン作りは始まったばかりだ。
ちょっと長くなったので二つに分割しました。続きは明日投稿です。よろしくお願いします。




