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14話.宴

「じゃあ、そろそろ主役の紹介をしようかな。お願いします! ハルトさん!」


 宴が始まり、村全体の盛り上がりがピークに達した時、二人目の勇者の紹介が始まった。


「えっと、僕はハルトと言います。ドド村の皆さん、これからよろしくお願いしますね」


 村中の視線を集めているのは白髪の少年。歳はオレとそんなに変わらないだろう。十七歳か、十八歳程に見える。


 ……この村の名前ってドド村っていうのか。そういえば、この村の名前今まで知らなかったな。覚えておこう。 


「――勇者として、この村の安全を確保出来るように頑張ります!」


 長い自己紹介が終わり、宴の中にハルトが加わる。ハルトは第二の勇者だ。つまりは、オレの敵である。


 今は宴の席。ちょっとくらい突っ込んだ話をしても警戒される可能性は低い。情報収集をしておいた方がいいだろう。敵を知らずに戦いを挑むのは唯のバカだからな。


 幸いにも、村人達は美味そうに食べ物を頬張る勇者に気を使っているのか、勇者の周りには誰もいない。今なら、一対一で会話が出来そうだ。


「お前が新しい勇者か! どうだい、この村は」


「えっと、貴方は?」


「おっと、これはすまない。オレは旅人のシン。この村には縁があってね。時々寄っているんだ」


「へえ、そうなんですか。シンとお呼びしても?」


「ああ、構わない。オレもハルトと呼ばせてもらう」


 軽く話してみた感じ、二人目の勇者――ハルトは学校で人気者になれそうなタイプだ。食事中に話しかけられても、笑顔で対応する。ハキハキと喋り、ニコニコと笑みを絶やさない。


 オレが地球にいた頃、学校で発言力が有った奴もこんな感じだった。正直、アルル程では無いが気にくわない。


 こういうタイプ程、人が見ていない所ではえげつない事をする。他人の目がある所のみ、善人のメッキを被る。そんなタイプの人間特有の、胡散臭さがハルトからは滲み出ていた。


 最も、これらは全てオレの偏見だ。偏った見方で真実を見逃すのは愚かな事だ。だからこそ、ここで会話をして見極める必要がある。コイツが、どんな人間か。


「なあ、ハルト」


「何ですか? シン」


「お前って勇者なんだよな? 今までにどんなモンスターと戦ってきたんだ? 興味があるんだ」


「いいですよ、まずは……そうですねえ。先日倒したダンジョンマスターの話でもしましょうか」


 ――何だと?


 ダンジョンマスターだって? もしや、オレの正体が既にバレているのか?

 

 ハルトの表情を注視するが、胡散臭い笑みが張り付けられているのみだ。その心中を察する事は出来そうにない。


 ……くそっ! いや、落ち着け。オレの正体はアルルがバラさない限り、コイツに漏れる事は無い筈だ。アルルは自分から話すタイプじゃない。それに、オレが転生した時はかなりの人数の人間がいた。その中の一人を偶々倒したのだろう。そう考えると、ダンジョンマスターという単語が出てきたのは、偶然の可能性の方が高い。


 そうだ、落ち着くんだ。まずは話を聞こう。考えるのはそれからだ。


「へえ、ダンジョンマスターか。どんな話なんだ?」


 声は震えていなかったと思う。顔も変に強張ったりもしていない筈だ。笑顔を顔に張り付けるのが得意なのは、オレだってそうなのだ。伊達に、現代社会を生き抜いてきた訳じゃない。


「そんなに大した話じゃないですよ。先日、王都の付近でダンジョンが発見されましてね。僕もダンジョンの討伐隊に選ばれたので、ちょっと倒して来ただけです」


 ……待て、ダンジョンが発見? どういう事だ?


 オレのダンジョンは見た目は普通の洞窟だ。とてもじゃないが、見た目からダンジョンだと気付く事は出来ない。だが、ハルトは今、ダンジョンが発見され討伐隊が組まれたと言っていた。なぜ、確信をもってその場所がダンジョンだと断定できた?

 

 その地のダンジョンマスターが下手を打ったというだけなら、まあ良い。だが、もしダンジョンの位置が分かる道具や魔法などが有った場合はヤバい。現状、多数を相手できる程の戦力はオレのダンジョンに無い。怪しまれるリスクは確かに有るが、これは聞かないといけない案件だ。


「すまん、どうやってダンジョンを発見したんだ? 聞く耳によると、見た目からは全く分からないと聞いたんだが」


 ――これでいけるか? いや、盗賊の奴らはオレのダンジョンを洞窟と言っていた。見た目からは分からないと考えていいだろう。頼む、怪しまれないでくれよ……!


「ああ、確かに見た目からは分からないんですけどね。ダンジョンって短期間に構造が何回も変わるんですよ。不振に思った近隣住民の方が調査を依頼しましてね。調べて見たらビンゴだったらしいですよ。僕も聞いた話なんで、詳しくは知らないですけど」


 どうやら、オレの心配は杞憂に終わったらしい。成程、構造をこまめに変えると危ないのか。最も、オレのダンジョンにはドド村の人達は来ないだろうし、これからもガンガン部屋と通路を増やして大丈夫そうだ。

 

 心配事は無くなったし、後はハルト自身の情報でも集めるか。最低でも、使用している武器や好みの戦法くらいは知っておきたい。情報が無いと、対策も立てれないからな。


「そうなのか。話の腰を折ってすまんな。それで、討伐隊ではどんな活躍をしたんだ?」


「まあ、それなりに動けたとは思いますよ。討伐隊の皆に助けられてばかりでしたけどね」


 ……くそっ! オレの欲しい情報を引き出すことが出来ない。上手く頭が回らない。どうする? 何を聞けば情報が出てくる?


 いや、ここはストレートに聞こう。大丈夫、そんなに変な質問じゃない筈だ。


「そういや、ハルトは何の武器を使うんだ? 見た感じ、武器を携帯してるようには見えないんだが」


「流石に宴の席に武器は持ち込みませんよ。……もしかして僕の実力を疑ってます?」


「いや、そんなことは無いんだが気になってな」


「アハハ、冗談ですよ。でも、僕も興味があったんですよね。ドド村には勇者が居るのに、勇者を差し置いて、盗賊団から子供を助けたと言われている貴方に。どうです? 明日森の調査に行くんですけど、もし良かったらご一緒しませんか?」


 ……コイツ、何を考えている?


 いや、待てよ。これはメリットが意外に大きい。森は視界が悪い。スライムをオレは今二匹まで召喚できる。もし、戦闘になっても勝ちの目は十分にある。


 何より、新しく来たコイツが直ぐにオレを殺すとは考えにくい。一緒に森に行って、オレだけが帰って来なかったら、村人達からハルトへの信頼は揺らぐだろう。そうすれば、コイツはこの村で活動しにくくなる。だからこそ、ハルトから仕掛けてくる可能性は低い。例え、オレの正体がバレていたとしてもだ。


 そして、オレはハルトの情報が欲しい。この提案に乗れば、確実に情報は手に入る。


 ……いいぜ、乗ってやるよ。


「いいね。行こうか」


「ありがとうございます。じゃあ、明日の早朝にこの場所に来てください」


「了解。じゃあ、オレはここらへんで失礼するよ」


 話してみて、気付いた事がある。ハルトは食えない奴だ。少ない時間だが、それは理解出来た。一瞬の油断が命取りになるだろう。


 再度、気持ちを引き締めハルトの元から離れた。――勝負は、明日だ。

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