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12話.決意

 落ちていく。陽の光から遠ざかり、恐ろしさすら感じる暗がりへ。


 周りを見回して見てもそこに在るのは何処までも続く闇。光なんて差し込まない、深淵の地。そんな場所にアイツはいた。


「よう、我が同胞の一人。ダンジョンマスター、シン。こうして会うのはこれで二度目だな」


 辺りは完全なる闇の世界。少なくとも、視覚から情報を得る事は出来ない。でも、本能で理解した。オレのすぐ側に、邪神がいる事を。そして、この空間は邪神が支配しているという事を。


「何の用ですか?」


 率直な疑問を口に出す。こんな場所に呼ばれる心当たりなんて……正直、ある。というか、心当たりがあり過ぎて困る。


 まず、勇者を殺すタイミングが何度も合ったにも関わらず、未だに殺せていないという点。


 更に、その殺すべき勇者に助けられたという点。


 極め付けは、三下の盗賊にすら絶対絶命のピンチに追い込まれた事だ。スライムが変化しなければ、きっとオレはもう死んでいただろう。


 分かっていた事だが、オレは弱い。


 力を手にして尚、オレは誰よりも弱者だ。


「おいおい、そんなに卑屈になるなよ? 俺はお前を褒めるためにここに来たんだぜ? 後、もう一つは警告だな」


 ……今更、心を読まれた事に対する驚きは無い。オレの心を占めていたのは純粋な疑問。


 ――褒める? 何をだ?


 警告の内容は予想出来る。さっさとあのバカな勇者を殺せという事だろう。だが、褒められる様な事をした覚えはない。まさか、邪神が人助けを褒めるなんて事はしないだろう。


「おいおい、そんなに警戒するな。変に勘繰る必要はねえぞ。最も、その性格があの結果を生んだのかもしれねえけどな」



 ――結果? まさか、あのスライムの変化の事を言っているのか?


「ご名答。俺がこれから話す部分もその力についてだ。おっと、説明の前にまずは褒めるとするかな。おめでとう、お前のその力はダンジョンマスターとしての究極系。正直、こんな早くに発現するとは思ってなかったね」


 ……究極系? あの力が?


「そう、ダンジョンマスターのしての一つの完成系だ。誇っていい。お前は優秀だ」


 ――そうか、あの力がオレの力。単純にして明確な暴力と言う名の力。分かりやすくていいじゃないか。


「おっと、ここからは警告だ。心して聞けよ? 強い力にはそれなりのリスクがある。それは世界の理だ。自分の器に見合わない力を行使するには、何かしらの代償を払う必要がある。……簡単に言うぜ、その力はまだお前には早い。使えて、後三回って所だな」


 ……嘘だろ?


 力が使えるのに、それを自由に行使する事が出来ない?


 やはりそうなのか。どんなに強い力があったとしても、それを扱う者が平凡ならば、その力を使いこなす事は出来ない。オレには、あの力は宝の持ち腐れなのだろう。


 ……畜生


 いいぜ、やってやる。オレが弱いなら、強くなればいい。完成系は既に見えた。たとえリスクを払ったとしても、一度は力を行使出来た。ならば辿り着けない道理はない。オレの追い求めた、強さに。


「俺の言いたい事はこれだけだ。ああ後、悩んでいる様だから教えてやる。俺は、お前らダンジョンマスターの味方だ。お前らが異世界で何を成そうと、何を思おうと俺は一向に構わない。悪とは自由で、そして一本、筋が通った者だからな。だからこそ、お前らは自由に生きろ。お前らが心に従っている限り、俺はお前らを咎める事は無い。……じゃあな」


 闇の中から引き上げられる様な感覚が身体を包む。暗く、冷たい闇の中から暖かな光の中へ。深い所に眠っていた意識が覚醒するのを感じた。





 ………………。





「ここは……」


「あっ! シンにーちゃん! 目が覚めたんだね!」


 目に映ったのは、オレを心配そうに眺める少年――アッシュ。辺りを見回した所、ここ数日で見慣れた光景が目に入った。如何やら、ここは村の宿の一室らしい。


 ……待てよ? 何でオレはこんな所で目が覚めた?


 確かオレは、盗賊達がやられたのを見届けて、そして気絶した筈だ。だが今、オレは山やダンジョンでは無く、宿の一室で目が覚めた。ダンジョン内や山の中で目が覚めるのならば分かる。だが、オレが目覚めたのは見慣れた宿の一室。訳が分からない。


「アルルねーちゃんが、気絶したにーちゃんを運んできた時は心配したよー!」


 ……何だって?


 純粋な疑問がオレの心を支配していく。オレがダンジョンマスターなのは、アイツにバレているだろう。オレがアルルの敵なのもバレている事だと思う。あれだけ堂々とスライムを使役したのだ。唯の旅人で押し通すには無理がある。少なくともオレが、正義でなく悪に属している事は筒抜けだろう。


 そして、アルルは悪を絶対に許さない。アルルは不器用だが、真っ直ぐな勇者だ。悪を見逃す様な奴じゃないのは、オレが一番良く知っている。


 だからこそ、知る必要がある。あの勇者が何故、オレをここまで運んだのか。きっと、何かしらの目的があるのだろう。


「……なあ、アッシュ。アルルの場所を知らないか?」






 この村と山との丁度、境界線上の辺りにアルルはいた。鮮やかな金髪は、日の光を浴びて輝いている。


「単刀直入に聞く。……何故オレを助けた? オレがお前の敵なのは、分かっているだろう?」


 オレの質問に対するアルルの返答は、無い。完全に場は静寂で支配されている。


 ――クソッ! 何も分かんねえ。何故だ? 何故、オレは助けられた?


「貴方は、アッシュを助けてくれた。……私一人では助けられなかった。ありがとう」


 唐突に、アルルは呟いた。その大きな碧眼の瞳でオレをジッと見つめながら。


 ――ありがとう、だって?


 ……ふざけんな。オレは、此奴に感謝されるような事をした覚えはない。


「助けられた? だからオレを助けたのか? オレは悪の手先だ。お前の敵なんだぜ?」


「知ってる……でも、貴方はアッシュを救った」


「助けられたからって、オレを救うのかよ? 随分と、勇者様は甘いねえ」


 ……ああ、ムカつく。その甘さが、オレは敵だっていうのに。いいぜ、もうダンジョンマスターだって事はバレているんだ。これも、もう言ってしまおう。


「オレの目的は全勇者の殲滅だ。当然、お前も殺す予定だ……アルル」


 アルルの返答は、無い。


 ……ふん、まあ良いだろう。言いたい事は言った。少しだけだが、胸の中に突っかかっていた物が取れた気がする。馴れ合う時間は終わりだ。


 山にあるダンジョンに向けて、歩を進める。スライムの様子も気になる。早く帰ってしまおう。


「……私は、貴方には殺されない。貴方に、私は負けない」


 風が、後方からアルルの呟きを運んできた。


 ……上等だ。オレも、お前には負けねえよ。絶対に、殺してやる。


 再度、闘志を燃やし、ダンジョンへの道を急ぐ。 


 絶対に、あの勇者にだけは、負けたくない。

この話で第一章は終了です。読んでくださった方、ブクマして下さった方、ありがとうございます!

もし宜しければ、感想や評価など、頂けると嬉しいです!

次話から第二章です!

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