表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/29

9話.奪還

 木の陰に隠れ、ダンジョンの様子を伺う。


 ダンジョン前には人相の悪い男が二人に、アッシュがいた。アッシュは口を布の様な物で塞がれており、両手を体の後ろで縛られている。


「おい、あいつはまだ戻らねえのか!」


「へ、へえ、ボス! あいつはまだ戻ってねえです!」


「クソが! こんな洞窟の探索に何分掛かっていやがる!」


 どうやら思うように探索が進まず苛立っている様だ。ボスと呼ばれている四十代後半の男は、その髭面を大きく顰めていた。


「へえ、確かに遅いっすね。あっし達ももう入っちゃいますか? 雨も強くなって来てますし」


「馬鹿野郎! いいか? もうあの村の奴らには、コイツを誘拐した事がバレているだろう。遅かれ早かれ追手を出される。いや、もう出されていると思ったほうがいい。そして、あの村には勇者がいる。タイマンだとまあ勝ち目は無いが、俺達の武器はチームワークだ。だからこそ、広い外で戦いたい」


「へ、へえ、ボス。じゃあ何でアイツに洞窟の探索させたんすか?」


「馬鹿野郎! それもさっき説明したじゃねえか! 雨が奪う体力は馬鹿に出来ねえ。俺達はこの後山を越え、隣の街まで移動しなきゃならん。体力を無駄遣いする暇はねえ。何処かで雨宿りをする必要がある」


「じゃ、じゃあこの洞窟に早く入りましょうよ」


「話は最後まで聞け! 洞窟内はモンスターが何処にいるか分からん。しっかりと索敵をする必要がある。安全を確保出来ない場所で休むのは唯のアホだ。分かったか?」


 ――成程。何故、洞窟の前で屯してるのかが気になったが、そういう事か。意外にこいつ等のボスは慎重派らしいな。


「おい、アルル。こっちだ」


 アイツ等にギリギリ聞こえない程の音量でアルルを呼ぶ。先程まで、突然走りだしたオレを不審そうに追いかけていたが、これを見れば納得するだろう。


「……! アッシュ!」


「落ち着け。アルル」


 今にも駆け出しそうなアルルを手で制する。向こうには人質もいるし、人数も此方より多い。場所を見つけたからといって、焦るのはダメだ。此方が不利なのに変わりはない。


「……何? 怖気づいたの? 怖いなら帰ってもいい。……元々これは私の仕事。部外者の貴方が関わる必要は無い」


「おいおい、一人で勝てるとでも思ってんの? 言っとくけど、あいつ等は三人いる。今、一人は洞窟内を探索してるようだがな」


「関係ない……私は、勇者だから」


 ――やっぱ此奴、ムカつくわ。勇者の力は、そんなに絶対的な物じゃない。以前のオレみたいに、不意を突けば簡単に倒せる程度の力でしか無い。そんなのは勇者であるアルルが一番理解している筈だ。


 勇者だから、どんな敵でも倒せる? 勇者だから、絶対に負けない?


 ……そんな事、ある訳ないだろうが。


「闇雲に突っ込んでもアッシュを助けられる可能性は低い。それでもお前は、真っ直ぐアイツ等に向かっていくのか?」


「……じゃあ、どうするの」


「オレにいい作戦があるんだ。協力して欲しい」


 まずは、この無鉄砲な勇者を納得させる所からだ。アルルに向かって頭を下げる。この作戦を成功させるにはアルルの協力が必要だ。プライドなんて安い物、目的を果たす為なら喜んで投げ捨ててやる。


「……聞かせて。話はそれから」








「おい! 遅いぞ!」


 ダンジョン内の索敵をしていた盗賊が、奴等のボスに報告をしているのを隠れながら確認する。この作戦はタイミングが重要なのだ。集中してその時を待つ必要がある。


「すいません! 怪しいドアが洞窟内にあったもんで、調べてました!」


「ドア……だあ!? 何言ってんだ! 洞窟内にドアなんてある訳ねえだろ!」


「いや、それが……あったんですよ。中はもぬけの殻だったんですけどね? 変な台座が有りました」


「はあ!? ……まあいい、それで安全は確保出来たのか?」


「そりゃあもう、バッチリですよ。早く入りましょう」


 オレのダンジョンの入口は狭い。その為、一人ずつ順番に入る必要がある。


 ――ここからが、勝負所だ。


 探索していた男が先行してダンジョンに入った。仲間達の道案内を始めるには先に入る必要がある。ここまでは予想できた。大事なのは、次に入る人物だ。


「おら! 歩け!」


 アッシュが強引に盗賊の下っ端に立たされ、入口まで歩かされる。その瞳に涙が浮かんでいるのが、オレにも分かった。


 欲を言うなら、もう一人ダンジョン内に入って欲しかったのだが、まあいい。チャンスは一度きりで、それは今だ。ベストじゃないからと言って、今行動しないのは有り得ない。


 ――いくか。


「うおおおおおお!」


 アッシュを掴んでいる盗賊の下っ端を目掛けて、タックルをする。全体重を乗せて、一心不乱にタックルをする。それがオレの役目だ。


「――チッ!」


 腰の刀を抜き、構える盗賊団のボス。そのまま、オレと下っ端の間に立ちふさがった。このままだとオレは、下っ端まで辿り着く前に細切れにされるだろう。


 ――まあ、そんな事にはならないんだが。


 キィン!


 金属同士が打ち合う心地の良い音が周囲に響き、雨音と調和する。オレが視線を向ける事は無いが、それでも分かる。


 俺達は、今この瞬間だけは仲間だからな。


 アルル――勇者が自分の役目を果たした。ならば、ダンジョンマスターであるオレが、遅れをとる訳にはいかない……!


「ぐえっ!」


 鈍い音が響き渡り、アッシュが盗賊の手から離れた。


「逃げろ!」


 自分自信で歩かせる為だろう。アッシュの足が縛られていなかった事が幸いした。解放されたアッシュは一目散に村を目指し、山を下っていく。


「どうした――!?」


 騒ぎが聞こえたのだろう。探索役の盗賊も戦闘に加わり、現在の状況は二対三。人数が不利なのは以前変わりない。そしてオレ達はアッシュが下山する為の時間を稼ぐ必要がある。


 どの道、戦闘は避けられない。緊張を解くには、まだ早い。


「……怖い?」


「まさか! 後は勇者様が何とかしてくれるんだろ?」


「……任せて」


 そう、オレの作戦はここまでだ。安全に、確実にアッシュを解放する。後はアルルの仕事だ。勿論、オレも援護はするけどな。


 足元に落ちていた石を拾い、盗賊の一人に狙いを定める。


 さあ、勇者の実力をもう一度見せてもらおうか。最も、こんな奴らじゃ試金石にもならないだろうけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ