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プロローグ

頑張って書いていきたいと思いますので、よろしくお願いします

 現代を生きていく上で大切な能力とは何なのだろうか。この問に対する答えは人によって変わるだろう。経済力が大切だという人もいれば、特殊な資格などの技術力が大切だと言う人もいると思う。どれも大切な能力だと思う。でも、オレはコミュニケーション能力――コミュ力こそが現代を生きていく上で大切だと思っている。他人と関わらずして現代社会は生きてはいけない。だからこそコミュ力はとても大切なのだ。


 だが、この能力の本質は虚偽にまみれているとも思う。人は自分に理解できない人間を排斥する。だからこそ、人との繋がりを得るためには分かりやすい自分を演じる必要がある。個性的で、オンリーワンなたった一人の自分を捨て良くあるテンプレートの様な無個性な自分を演じる。


 強い人、もしくは多数派の意見に従い、自分の意見を封じ他人に合わせて生きていく。そうする事で世の中は上手く渡っていけるんだと、17年生きてきた中で悟ってしまった。


 自分を出さなければ万事上手くいく。他人に合わせていれば何も恐れる事は無い。決して他人をイラつかせることは無いし、気味悪がられる事も無い。だからこそオレは今日も偽り、流される。自分を偽る事はもう慣れた。


 それこそ元々あった自分の個性を思い出せない程、オレは偽り続けたのだ。そしてこれからも偽り続けるだろう。自分の本心に蓋をして。

 ――もうオレの本心が何処にあるのかなんてオレ自身にも分からないけど。


 これを不幸とはオレは思わない。何故ならオレは順応したのだ。この社会に求められる人物像に自らを近づけ、近づけ、そして自己を消した。

 

 ――自己評価になるが……オレはコミュ力が高い。


 偽って、偽って手に入れた沢山の友達。そしてその中で笑うオレ。それがオレの日常だ。そしてオレはそんな日常に心の底から満足している。


 オレの名前はシン。何処にでもいる、没個性の一人だ。


「君たちは、この世界に不満があるだろう?」


 ――だからこそ、今こんな状況に巻き込まれているのはおかしいと言わざるを得ない。体育館の様な広いホールに集められた人達。年齢や性別、国籍もバラバラだろう。

 

 ザッと見渡しただけでも様々な人がいるのが分かる。共通しているのは皆灰色の法衣のような物を身に着けているという事だ。宗教団体の会談の会場と言われてもすんなりと納得出来そうな場所だった。最も、これはその様な物では無いのだろうけど。


「おいおい、混乱しているのは分かるけど無視はしないでくれよ? もう一度言うぜ。――君たちは、この世界に不満があるだろう?」


 言葉を発しているのは宙に浮かぶ真っ黒い影だ。オレも何を言っているのか自分でも良く分からない。でもそれは影なのだ。巨大な影だった。形容しがたい闇がオレ達の上に浮かび、言葉を発していた。正に超常現象。普通なら驚き恐怖する状況なのだろうが、不思議と恐怖は無かった。


「ちょっと待ってくれ! 僕達は何でここに集められたんだ!?」


 沈黙を破ったのは30歳程の黒髪の男の一声だった。眼鏡をかけており真面目そうな印象を受ける。彼の言葉はこの場にいる全員の気持ちを代弁していた。即ち何故、どうして、という気持ちを。


「おお、返答ありがとう。でもその言葉は少しばかり良くないぜ? さっきから言ってるだろう? 君たちは、この世界に不満があるだろうってね」


「ちょっと待ってよ! 私は別に不満なんてないわ!」


 今度は20代程の女性が叫んだ。辺りは先程とは打って変わり、ざわざわとしていて各人の声を聞き取る事は出来ない。だが不思議と影と会話する人の声、影自身の声は良く聞こえてくる。これも超常現象の一部なのかもしれない。


「おいおい、隠すなよ? 確かにお前らはこの社会に不満を持っている。自覚が無かったとしてもだ。だから俺様がここに呼んだ。それでこれからお前らは、その個性を生かして俺様の手伝いをして貰う。これがお前らがここに来た理由だ。分かったか?」


「手伝い?」


 思わず、口から言葉が漏れた。手伝いと言ったがこの影は自分達の世界では有り得ない異質な存在。それを何となくだがオレは理解していた。この影は自分達とは住む世界が違う世界の存在だと。神や悪魔もしくは妖怪、そのどれにも当てはまらないがそれらと似たような存在である事を。


 だからこそ、手伝いという意味が分からない。自慢じゃないがオレは普通の一般人だ。運動神経が特別良いわけでも無ければ頭が良い訳でも無い。だからこそ強者の陰に隠れて日々を送っていた。自分の分は弁えているつもりだ。とてもじゃないがこんな超常の存在が望む様な手伝いが出来るとは思えない。


「そう、手伝いだ。あー……いや、手伝いとはちょっと違うかな」


 影はその真っ黒な闇から言葉を紡いでいく。気のせいだとは思うが、この影は笑っているように感じた。


「そうだな……これは取引だ。俺はお前らに力をやる。お前らの日常を改変する程の強力な力を。お前らが抱いている不満を吹っ飛ばす様なとてつもない力を。そのかわりお前らには一つだけやって貰うことがある。だからこその取引だ」


 影はその闇を大きくし、響き渡るような声で言った。


「お前らには異世界でダンジョンを経営して貰う! お前らの多種多様な人間性! それらを生かした最高にクールなダンジョンを! そして勇者共を根絶やしにしろ! その為の力は俺が与えてやる!」


 ――ダンジョン? 勇者? 情報が増えすぎて自分の中で上手く情報を整理出来ない。周りも同様だろう。場も混乱しているのか静寂に包まれている。それはオレも同様だ。だがオレはこの状況に似ている物を知っている。

 これはネット小説でよくある転生、という奴だろう。一時期、クラス内で流行っていた時に読んでいたからある程度の知識はある。だがこの状況はオレが読んだ作品達とは決定的に違う。オレの知ってる作品は皆、神様の力で転生していた。だが勇者を根絶やしにとこいつは言った。何となく理解してはいたが、この闇は見た目通り善なる者では無いのだろう。

 まあ、この見た目で神の使いなどと言われても信じられないが。


「おいおい? 黙るなよ? もっと盛り上げれよ。お前らの好きな異世界だぜ? そしてお前らには才能がある。俺等に近い悪の才能がな。もっと誇れ」


 静寂は解けない。皆混乱しているのだ。それもそうだ。こんな闇の塊に突然、悪の才能があるなんて言われて動揺しない奴なんていない。


「おいおい、つまらねえなあ。まあいいか。後は異世界に行けば詳しいことは分かるからな。じゃあ最後に一言だけ」


 そして闇は辺りを覆い尽くし、オレの視界は真っ黒になった。もう辺りの様子も何も見えない。


「ようこそ、新たなる同胞、新たなるダンジョンマスター達よ。現実に弾圧され、不満を持つ魂達よ。これからお前らが向かうのは何の柵も無い異世界。何をしてもいい。その心に従って自由に生きろ。俺がお前らに望むのはたった一つ! 勇者共を……根絶やしにしろ!」


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