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第六話:色鳥白真

 この日も学校は平和だった。普段通り退屈な授業を受けて、体育はサッカーで部活は剣道で、そして校門で待っているはずの幼馴染と一緒に帰るのだ。同じ家に。


「遅くなっちまったな。怒ってないといいが」


 少年は校門まで走る。色鳥白真。この学院の名物生徒。端正な顔立ちは快と女子の人気を二部にするほど。


 しかし、どこか子供っぽさが残っているのは彼が十五歳だから。肌の色は女の子が羨むほど綺麗な白で目の色は綺麗な茶色。

 全体的に細いが無駄なく身体は鍛えられており、その辺のチンピラ以上に腕も立つ。

 オーラの色は彼の気分によってクルクル変わる。彼の友人いわく、幼馴染の彼女といるときは薔薇色である。

 そして、今まさに愛しの幼馴染のもとへ猛ダッシュ中だ。


 しかし、その幼馴染は……


「いいじゃん、来ない彼氏なんかほっといて俺達と遊びに行こうぜ」

「嫌です! 放して下さい!」

「可愛い声だなぁ、もろ俺のタイプ!」


 美原紫織は掴んでくる腕を振り払う。周りの生徒達も教師達も騒ぎは知っているが助けようという気配はない。

 それは不良が怖いからというだけではない。紫織がバスターだと知っているからでもない。むしろその原因は……


「ほら、早く行こうよ」

「そうだな、車で俺達の家まで送ってくれるか?」

「白!」


 車の方を見ればいつの間に乗り込んでいたのか、白真が不機嫌そうに足を組んで男達を睨みつけている。

 彼を知るものならその一睨みで逃げいていくのだが、不良達は彼のことに関して全くの無知だった。


「ああん? 何だお前?」


 最悪の一言だった。彼らがこの時ほどこの学院の生徒でなかったことに同情したものはいないだろう。


「知らないのか? これでも学校一の人気者なんだぜ?」


 多くのものが頷くであろうが、不良達は癇に障るだけだ。


「お〜い、白!」

「いいっ!? あいつら何してんだよ!」


 修達が目にした光景はまさしく最悪だった。この学校、いや、この学院で犯してはならない禁忌を犯す命知らずのバカがいたからだ。


「おい、お前ら! 白から逃げろ! 殺されるぞっ!」


 翔は叫ぶが、やはりたった一人に何が出来るのかと不良達は笑い出した。


「殺される?」

「ハッハッハ……! こんなガキに何が出来るって?」

「全くだな!」

「違うだろ、お前達に何が出来るんだ?」


 不敵な笑みを浮かべて白真は男達を挑発するが、幼馴染達から見れば明らかにキレているとしか言いようがない。


「ガキは大人しくしてろ!」

「胴っ!」


 リーダー格の男が拳を繰り出してきた瞬間には、白真は竹刀で相手を叩きのめしていた。

 さらに流れるように他の男達も竹刀で打ち悶絶させた。


「言わんこっちゃない」

「俺、先に帰っていいか?」


 翔の呆れ顔と修の面倒臭さ全開の声だけが唯一、その場に時を持たせていた。


「色鳥白真。高校天才バスターだよ!」


 自分でここまで言うのは滅多にないことだが、紫織をナンパしたことは死刑に値する。相手をどん底にまで突き落とさなければ彼は気がすまないのだ。


「大丈夫か? こいつらに変なことされなかったか?」


 伸びている男達を車に放り投げながら白真は尋ねると、紫織は首を振って答えた。


「大丈夫、ありがとう。それより白も怪我はない?」


 まずある訳がはないのだが紫織は聞いてやる。


「あるわけないだろ? それより翔と修ちゃん! 帰ろうぜ!」


 白真はまばゆい笑顔を二人に向けた。白……、というグッタリとした表情を浮かべ、その場から逃げ出そうとしていた修は今日一番の溜息を吐き出すのだった。




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