第五話:時枝修
メールに書かれた文字は「先に帰る」。短いのは相変わらずあいつらしいな、と思いながら翔は走った。
送られてきたのがほんの数秒前なら、きっと彼は待っているはずだ。
そして、生まれたときからの幼馴染、幼稚園からずっと一緒だった親友、時枝修は桜の木にもたれ掛かって待っていた。
剣道用具一式を抱えた眼鏡美男子という何とも絵になる少年は、下校途中の女子生徒からひそひそとした黄色い声を受けて機嫌が悪かった。
基本、恰好の餌食となることを彼は好まない。
とりあえずメールは送ったのだから、と彼が歩き出そうとしたところに聞き慣れた足音が聞こえてきて振り返れば、こちらに走って来る翔を見付ける。
「悪い悪い、待たせたな」
「遅い」
息を切らしていても笑顔を向けて来る翔に短くその一言を言い放った。
時枝警視総監の息子である割には真面目に勉強している優等生。素通し眼鏡はその象徴のよう。身長も伸び盛りなのかもうすぐ180に届きそうだ。
そして、修もバスターなため快の家に下宿中である。
しかし、彼の家は快の家から数百メートルも離れてはいない。任務がしょっちゅう自分の親に持ってこられるため、快の家に下宿した方が何かと都合がいいのであった。
そして孝行息子でもあるので休みの日になれば母親のみ顔見せにぐらいは戻っている。
息子曰く、父親に見せる顔など必要ない、とのことだ。決して父親と喧嘩している訳ではないのだが……
スポーツも幼いころから続けている剣道で全国準優勝の腕前である。
「悪い、翡翠の奴が告白されていて快が邪魔に入ってたからさ」
苦笑しながら翔は答えると修も微笑を浮かべた。
「そういうことか」
快と毎回学年トップを競っている修に余計な説明など要らない。
「それより白達はどうしたんだ? 一緒じゃなかったのか?」
「ああ、あいつなら空手部だ。紫織を迎えに行ってるからよ」




