第四十一話:スピード
人生に一度はピンチに出遭うものだ。それが今、目の前で起こってはいるのだが片岡翔の意識は戻らなかった。
「神龍の召喚……、確かに義臣の十八番ではあるが使う者がまだまだ未熟と見える。威力は義臣の半分しかないか……、いや、三分の一だな」
術者によって召喚のレベルはもちろん違う。義臣のレベルで尊氏と渡り合えるなら、当然自分の力はまだ足りないだろうと快は認めている。
何より神龍を扱うことは掃除屋界史上、義臣が初という事実まであるため、あの域に達するまで何年も掛かるだろう。
しかし、それが分かっていて義臣は自分に氷堂尊氏討伐を命じたのだ。それはただ、息子を信頼しているからだけではない。
「死ぬことが確実な命令を親父はしない。それをあんたは一番知っているんじゃないか?」
その瞬間、一陣の風が二体の分身を消滅させた。それに気付いたオリジナルは空間を縫って姿を見せる。その表情には余裕がない。
「今のは……」
「親父に威力は届かない、もちろん神龍を長く出してもいられない。だが、操るスピードは劣りはしない!」
さらにスピードは速くなる! それは義臣の操る神龍と互角に思わせた。いや、威圧感に関しても義臣を連想させるのには充分だ!
「ふざけるなっ! 空圧の檻!!」
巨大な空気の檻が神龍の動きを奪おうとするが、神の力を司る龍にそんなものは無駄だった。
「神の力にそんなものが効くかっ!」
そう叫んで快は腕を振り下ろすと、神龍は空気そのものを破壊し、咆哮をあげて尊氏に襲いかかった!
「今度こそくたばれっ! 氷堂尊氏!!」
「くっ……!!」
尊氏は神龍が放つ神々しい光に呑まれ、またそれと同時に快も意識を手放した。
しかし、戦いは終結してなかったのである……




