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第三十五話:痛いのは嫌

 動けば動くだけ切傷は走る。自分の体に絡まっているのは刃の糸。炎系の魔法で外そうとも試みてはいるが、そう簡単にこの状況を抜けさせてくれないのはさすがだ。

 だが、それでも白真は勝気な表情を崩さない。どんな状況に陥っても負けるわけにはいかないからだ。


「その顔は余裕から来るものなのか、それとも虚勢か……」


 海原は白真と向き合いながらそう呟く。召喚剣士という希少なタイプだからこそ油断が出来ないのもあるが、元々白真が戦いにおいて読みづらいタイプなのも間違いない。

 高校生だというのに、その辺りのバスターに比べて心理戦がかなり上手いのだ。


「さぁね、だけどこれはずしてくれないか? 痛いのは好きじゃないんだ」


 微笑を浮かべながら白真は頼むが、それではずしてくれる敵など当然いるはずはない。


「それは無理な話だ。さっさとそいつで命を絶つのもいいだろう? なんなら電流でも流してやるが」


 バチバチと海原の手に電気が走り始める。やはり換装士だけではなく、魔法のいろはぐらいは一通り使えるようだ。


「それは痛そうだな。さて、どうしたものか……」

「死ぬといいだろう」


 そして電流が糸を伝い白真の体を直撃するその瞬間!


「今だっ!」


 白真は体から莫大な熱を発生させた! 電熱が加わった糸は一瞬のうちに消滅する!


「なにっ!」

「油断すんな!」


 召喚剣が海原の胸を斬りつける!


「ぐっ……! このっ!」


 空間から再び大剣が飛び出し、澄んだ金属音が響き渡った!


「くっ……! 力で敵うと思ってるのか!」

「いや、思ってないよ。だけど剣道は力だけじゃないだろ?」


 白真はすっと力を抜き、大剣の刃に自分の刃を滑らせる。


「なっ!」


 あまりに滑らかな動きは海原の体のバランスが崩し、その隙を狙って白真は一回転して斬りつけた!


「ぐはっ!」

「召喚・大蛇の縄!」


 間髪入れず白真は大蛇を召喚し、海原の全身を一気に締め上げる。


「うっ……!!」


 呼吸を奪い、さらにミシミシという骨の音が響く。そして白真は殺気を含んだ目をして海原を見下ろした。


「この勝負、俺の勝ち」


 それだけ告げた後、海原は意識を失ったのである……



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