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第三十二話:風使いの意地

 風は火の威力を強くする。この世の中の常識をあっさりと覆す実力を持つのが自分の父親、TEAMの幹部である片岡航生。

 だが、その息子は至って平々凡々。そんな芸当はやる気もなければ出来るわけがないのである……


「風木霊!!」

「火炎!!」


 風と火は激突する。力はほぼ互角。しかし、相性は最悪だ。


「あぶっ!!」


 間一髪で翔は黒焦げを回避した。風使いはスピードが命だ。当然、TEAM内でも翔のスピードは速い方である。


「ほらほら! さっさと避けないと死ぬわよ!」


 桃子が繰り出す炎弾を無駄な動きなく翔は避ける。ただ、それでも際どい攻撃を繰り出してあたり、翔の動きのパターンはブラッドの幹部だけあってお見通しのようだ。

 同じブラッドの幹部とはいえ、昔、自分を殺そうとした猿柿より強い。いや、レベルそのものが違う。それだけは確かだった。


「切り返すか……」


 少し翔は桃子から距離を取ると、放たれた炎を一気に風の力で切り返した!

 

「火炎竜巻!」


 今まで翔に放たれていた炎が桃子に戻るが、


「あまい!」


 さらに炎の威力をあげて翔に放たれる。


「おっと!」


 それを避け、翔は一定の距離をとった。


「どのみち勝ち目はない!さっさと死になさい!」

「やだね。俺は平々凡々なりの意地があるからよ、やっぱり負けるわけにはいかない」


 そして空間から出てきた一本のナイフ。


「換装?」

「少し違うな。召喚だ」


 言ったと同時に桃子の胸にナイフが突き刺さる!


「ぐはっ!」


 刺されたというより噛まれたといったほうが正しい。自分の肉を少しずつ食べられている!


「人食いナイフ。俺が得意とする召喚の一つだ」


 やけに絶望的に聞こえた。自分の六感を完全に支配されたのだ!

 

「この勝負俺の勝ちだな」

「ぎゃあ〜!!」


 桃子の体は完全に消滅するのだった……


「……なんてな。俺は幻術も得意なんだよ。それに人食いナイフなんか存在したらチームの掟破りで殺されるんだよ。戻れ、まねまね!」


 そして出てきたのは鉢巻に藍色の半纏を着た親父だった。咥えキセルがこの召喚のチャームポイントらしい。


「……翔、我はわしになんて変化させとんやねん!」


 早速出てくるのは文句。翔は少しだけ悪びれた表情を浮かべ、


「仕方ないだろう。今回は相手が相手なんだ」

「関係ないわ! もっと平凡は平凡らしい戦い方せんかい! 風を使うだけ使って人の六感を支配するなど、お前の親父さんの戦法じゃろうが!」

「……お前、本当俺を主人として認めてるわけ?」


 その言葉を残し、勝敗は決した。


 勝者、片岡翔。



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