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第二十八話:戦火

「失礼します」


 ブラッド本社社長室。相変わらず暗い部屋に氷堂尊氏の姿はあった。しかし、この部屋の主は何の反応も見せない。


「本日未明、TEAMがこちらに向けてバスターを派遣。人数は四名、援軍の可能性は低いとのことです」


 ブラッドの社員はそれだけ告げて部屋を後にした。


「……篠原快か」


 僅かばかり口元が吊り上った。



「やっぱりブラッドは遠いな」


 屋根の上を走りながら白真は言う。もちろん時空魔法で飛んでいけばいいのだが、それでは魔力の無駄遣いになってしまう。

 氷堂尊氏と戦うためには少しの力も惜しいのだ。


「仕方ないだろう。俺達が昔、ブラッド本社を壊すきっかけを作ったんだ。何よりあそこまで大破した場所を使うほど相手は貧乏でもないだろうし」


 快は冷静な声で答えた。


 八年前、TEAMの近くにあったブラッド本社は建物と土地がほぼ使い物にならなくなっていた。掃除屋としてはそんな場所で商いをする訳にもいかないのだ。


「だけど造りはほとんど変わってなかったな。同じような侵入方法でいけそうだし」


 幸か不幸か、ブラッドの本社そのものはそう変わっていなかった。事前に入手していた本社の見取り図もそれほど頭に叩き込む必要もなかったほどにだ。

 ただし、隠し通路やトラップ、敵の配置までは同じという訳にはないだろうが……


「おい、白。あまり油断するなよ。うちの馬鹿親父でさえ戦闘スキルは落ちちゃいないんだ。ブラッドの幹部達ならその辺の鍛錬は怠ってるわけがないからな」


 快はそう告げるが、白真は勝気な声で答えた。


「大丈夫だよ、快ちゃん。なんだか今回は負ける気がしないんだ。だから絶対勝てるんだよ」


 決して根拠があるわけではない。しかし、それは誰もが感じていたことだった。ブラッドの幹部達には悪夢を見せられた修と翔でもだ。


「そうか、だったら一気に飛ばすぞ」


 四人はさらにペースを上げた。



 その頃、TEAM本社でも一つの動きがあった。


「夢乃さん、そろそろ時間だ」

「はい、社長。お任せ下さい」


 夢乃はきりっとした声で答えた。そして彼女が見下ろしているのはブラッド本社。彼女の隊には氷堂仁と智子の姿もあった。


「俺達も援護に回る時代がやってきたんですね」


 氷堂は微笑んで言う。あの小さかった快達を思い出しながら……


「そうね。だけどあの子達は今や重要な戦力だもの。私達以上にいい仕事をしてくれるわ」


 夢乃はにっこり笑う。そして再びブラッド本社を見下ろすと、その表情はバスターに変わった。


「快チームを援護する! 侵入経路確保、および救護活動に我々は当たる! 幹部各位には一切手出し無用! 以上だ!」


 その命令とともに、ブラッド本社に戦火が上がった。


 

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