第二十五話:治療兵
「ぐあっ!」
悲痛な叫び声は氷堂尊氏のもの。そしてさらさらと砂になって彼は消えていった。倒したのは篠原義臣だ。
「これで全部か」
顔に切り傷を一つつけた義臣は救援に向かった社員の顔を見て少しだけ安堵した。全員無事だ。
「すみません社長!」
「いや、気にするな。救援が遅くなって悪かった」
これで全てが終わっていればにっこり笑うところだったが、今回はそうはいかない。
すでに義臣は十数体の氷堂尊氏と戦っていた。それはブラッドに潜入したTEAMの小隊だけならよかったのだが、よりによって別任務についていた者達にまで被害が及んでいたのである。
「社長! こっちのことは気にせず、早く快ちゃん達の元へ行って下さい! それにこの力は間違いなく……」
「ああ、夢乃だ。動くなといっておいたのに……」
そして義臣は遠く離れたブラッド本社に飛んでいくのだった……
その頃、氷堂尊氏と夢乃は向き合っていた。プロのバスターとしての殺気はとても常人が立っていられるものではない。
『血の枷か……、さすがは医療兵だ』
快の血を振り払った時、それを瞬時に夢乃は操った。少しでも治療する時間を設けるためだ。
「翡翠ちゃん、白ちゃんと智子さんの治療を任せたわ。二人とも傷は浅いから」
「うんっ……!」
涙を流しながら翡翠はうなずいた。
『快は傷口をふさげばギリギリか……。それより氷堂君を……」
そして氷堂の元に夢乃は向かいすぐに治療を始める。そのスピードは夢乃の最速だった。
しかし、一分もしなううちに血の枷は破られる。さすがに向き合わなければいけなくなった。
「久しぶりだな、夢乃」
「ええ、何年ぶりかしら」
月馴染みの言葉を交わすものの、お互いに相手の出方を伺っている。
「随分といい女になったな。それにいい息子も育てたもんだ。俺を斬りつけた奴も久しぶりでね」
尊氏は笑う。
「そう、だけど治療の邪魔になる。とっとと消えてくれないかしら? 私とやりあっても、勝てる気がしないでしょう? それに義臣がもうすぐここに来るみたいだしね」
精一杯の覇気を尊氏に叩きつける! 急がなければ全員危険な状態になることは目に見えていた。特に氷堂は全ての力を使い切っているせいで危篤状態だ。戦っている暇などない。
「そうだな、だが……」
澄んだ金属音が響き渡る! 尊氏が快の命を奪おうと襲い掛かってきたのだ!
「くっ!」
持っていたナイフで夢乃は受け止めた。しかし、戦闘に集中すれば全員の治療にかけられる力が少なくなる。
「息子の命は捨てていけ。そいつは生かしておくわけにはいかない。お前と義臣の子供など危険すぎる。風野博士の研究結果では……!!」
「ふざけるな!! 快は私達の大切な子供だ!! たとえ私の命を犠牲にしたとしても絶対守る!!」
夢乃は怒りを爆発させた!! そして一気に力を爆発させる!! 数分間の勝負だ。その間にこの男を殺せばいい。そうすれば全員の命を救うことができる!
「くたばるがいい! 水龍!!」
巨大な水龍を夢乃は召喚すると、
「かかったな」
「何!!」
水龍が自分のほうに襲い掛かってくる!
「操作させてもらったよ。そこで全員溺れ死ぬがいい」
「しまった!!」
倉庫が完全に消滅した……




