第二十四話:血
人を斬ったのは初めての経験だった。いつもはここまで死闘を演じることもなかったから。
だけど今ここで戦わなければならないと幼心に思った。大切な人達が全て消えてしまうと思ったから……
「義臣……」
尊氏は快を見てそう呟いた。もちろん義臣にはまだ遠く及ぶ戦闘能力ではない。さっきの攻撃で手を休めるほど義臣は甘くない。
しかし、目の前にいる八歳の少年からは義臣と同じ気迫を感じる。いや、刹那に感じたのはそれ以上か……
「快だ……」
「ん?」
翡翠と白真に強力な結界をはり、そして叫んだ!
「俺は篠原快だ! 父さんと一緒にすんなっ!」
突撃してきたスピードは氷堂がよけるのに精一杯になった! 体が小さい分だけ攻撃があたる面積が少ない。その小さな体が最大の防御になっている。
「召喚! 切裂!!」
死神が再度登場する! 本来なら侵入のために使う召喚術も一つ使い方を変えれば殺人の魔法になる。それを快は躊躇うこともなくやってのけた。
「ちっ!」
死神の斧を簡単に受け止め、その姿を一瞬のうちに消し去る。しかし、快はその一瞬で氷堂の懐に入り込んでいた。
「終わりだ」
腹部に刺さる剣が血を滴らせる。それを見ていた翡翠と白真は喜びよりも恐怖を感じていた。
「白ちゃん……、快ちゃんじゃないよ……」
いつも冷静沈着、誰よりも仲間思い、そして翡翠をからかうあの表情が全て消えてしまいそうだ。
「翡翠、快ちゃんを止めてくる」
「白ちゃん! ダメだよ!」
翡翠は白真の腕を力いっぱい握り締めた。出ていけば白真が殺される!
「いいんだ! 快ちゃんがこのままじゃだめになる!」
そして白真は結界を破り、外に飛び出した瞬間、
「白! 出てくんな!!」
その声は遅かった。声もないまま、白真は血を噴出して倒れたのである。
「いやああああ!!! 白ちゃんっ!!!」
翡翠もその場から出ようとしたが、快がそれをさせない!
「出るなっ! 外は全て剣だと思え! 出た瞬間に空気の刃に刺されて死ぬぞ!!」
それが仁や智子がやられた理由だった。尊氏が周囲全てを空気の刃に変えたのである。快はそれを押し返す力を発しながら戦っていた。
だが、冷静さを失った快はそのことを二人に伝えずに戦い始めたのである。
「そのとおり。だが……」
快が振り返った時、快の胸は深く斬り付けられた!
「快!!!」
結界は張っていてもかかってきた血。それは紛れもなく快のもの。
「気を抜いても同じことだ。お前は死ぬ」
ゆっくり快は倒れていく。それは分身でもなく本体……
「これで終わりだ。残念だったな、篠原快」
剣についた血を振り払う。ただ、その行動がここでは間違いだった。
「なっ……!!」
突如として体の自由が利かなくなった。さらに手足の感覚がなくなり、声を発することが出来ない! そんな芸当を瞬時に行う敵は彼女しかいない!
「あっ……!!」
涙を流した目に映った女がいた。
「夢乃さん!!」
救援は現れたのだった。




