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第二話:TEAM本社

 全ての任務を片付けた少年は早速警視庁でもてなされていた。ただし、あくまでも子供のもてなしに違いないが……


「快君、任務ご苦労だったね」


 快の前にオレンジジュースが差し出される。高校生になったのだからせめてコーヒーぐらい出して欲しいが、自分をいつまでたっても子供扱いしているこの時枝警視総監に言っても無駄だろう。


 なんせ彼は自分の親友の父親なので嫌でもその性格は分かる。それも息子と比較すればするほど溜息を付かずにはいられなくなるレベルの自由人だ。


 しかし、彼はそれを表に出すことなく冷静な口調で答えた。


「いいえ、無事に解決して何よりでした」


 サングラスをはずし、先ほどの黒尽くめの格好から普段着の白シャツとジーパンに着替えた少年は任務報告のために警察署に寄っていた。これも掃除屋の任務の一つなのだ。


「相変わらず父親とは正反対の性格をしているな」

「反面教師ですからね」


 これも快は軽く受け流した。自分の父親は尊敬出来る点もあるにはあるのだが、こんな男にだけは絶対なりたくないランキングナンバーワンにも違いないのだ。

 出来るなら自分の父と幼馴染である時枝警視総監と自分の父の話などしたくはないのである。


「そうか。まっ、うちの修も君と同じような心境なんだろうな」


 時枝警視総監は妙に納得していた。そして、オレンジジュースを飲みきった快は立ち上がる。


「それでは俺はこれで」

「ああ、夢乃によろしくな」


 夢乃は自分の母親の名前。そして時枝警視総監とは幼馴染だ。


「はい、失礼します」


 快は瞬身でその場から消えるのだった。


 篠原邸兼TEAM本社は、近所でも有名な巨大な豪邸である。その広さも東京ドーム並みというところだろう。

 そしてこの豪邸には多くの人間が住んでいた。少なくとも五十人はいるだろう。さらに贅沢にも一人一部屋、トイレバスつきと言うなかなかのしゃれた部屋が用意されている。

 その部屋と別に食堂、トレーニングルーム、プール、体育館に温泉というリゾート顔負けの施設まで取り揃えられていた。


 しかし、全員が血縁関係にあるわけではない。むしろそうでないものの集まりだ。言うなれば、会社の上司と部下達、友人関係、昔からの幼馴染などである。


 そしてこの豪邸の主は、類まれなる才と強さを持ち掃除屋界では知らぬものがまずいない。

 そんな主が結成したのが「掃除屋・TEAM」。史上最強の軍団と謳われ、おまけにその部下達と言えば……


「快ちゃん、おかえり! 一杯やっていかねぇか?」

「おいおい、未成年に酒を勧めるなって!」

「別にもう十五歳なんだから飲めるだろ?」

「だから、やめなって言ってるんだよ!」


 帰った早々、食堂に足を運べば大人達の宴会である。いつものことであるといえどもこの大人達が本気で世間を騒がしているTEAMの幹部達なのかとかなり怪しい。下手をすれば何処かの酔っ払いより性質が悪そうに見える。


「快、夜食食っていくだろ?」


 住み込みコックの大地が快に尋ねた。


 快と同じ高校一年生だが、大地の父親がここの総料理長なため、すっかり料理の道に引き込まれてしまったのである。

 学校の制服よりコックの格好をしている方が大地という人物像にはしっくりと馴染んでいた。


「ああ、貰う。他の奴らはどうした?」


 自分の幼馴染達が珍しくここにいないので快は尋ねると、


「任務だ。まっ、そのうち帰ってくるだろうよ」


すばやくチャーハンを作り上げ、日に焼けた手が快の前にそれをおいた。


「そうか。大丈夫なのか?」

「何がだ?」


 特に心配がないメンバーなので、逆に大地が聞き返すと、


「修はともかく、他の奴らがちゃんとテスト勉強してるのかと思ってな」


 それを聞いて大地はコンソメスープとサラダを追加した。そして、両手を合わせて頼み込むのである。


「快様! 助けて下さいっ!」

「知るか、自分で何とかしろ」


 食にはつられない快は、きっぱりと言い切った。


「だってよ、普段はここでコックやってるからまともに授業受けてないんだよ」

「俺だって任務で抜けてるさ」


 しれっとした態度で快は答える。


 ここの高校生達は常に出席日数と戦う羽目にあるのだ。ただ、快の場合は常に成績優秀なので、特に勉強で困るということはないのである。


「大丈夫だって! 快の実力なら東大だって余裕なんだろ? ここは一つ頼むよ!」

「何をかける?」


 ただで動かないのは快ならでは。しかし、バスターという性質上、それは仕方のないことだと大地は知っているので、


「ちゃっかりしてるよな。こいつでいいか?」


 大地はテーマパークのペアチケットを取り出してきた。


「翡翠との思い出作りに」

「のった!」


 長年の付き合いはお互いの利益を追求した関係を作り出せる。しかし、さすがに気が利く少年は大地に尋ねた。


「だけど良いのか? お前が使うはずだったんだろ?」


 それは間違いなく、大地の彼女と一緒に行こうとしていたものだろう。


「別にいいさ。お前と違っていつまでも告白出来ないわけでもないからな」

「やっぱりこの件はなしってことで……」

「嘘だって! 快様ご勘弁を!」


 恋愛ごとで快をからかえば間違いなく彼を敵に回すことになる。快の気が変わらないように大地はそれ以上の恋愛話はしなかった。


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