第十七話:誘い込まれた者達
暗い暗い場所だった。ブラッドの倉庫の中は天窓から少しだけ光が差し込んでいて、ダンボールの匂いが立ち込めている。
鉄の柱に翡翠は縄で縛られているが目隠しや猿轡にはされていない。それでも少しだけ涙を浮かべていた……
「ここか……」
自分の家から出るのは簡単だった。誰にも気づかれずに出られる術を快は知っており、幹部級のバスター達は出払っていたからだ。
そして、ブラッドの防衛網は結界だけではなく赤外線が張り巡らされており、そう簡単に侵入出来ないように些細な抜け道一つさえなかった。
「やっぱり結界と赤外線が張り巡らされているな。翔、いけるか?」
快は翔に尋ねると、問題ないと彼はあっさり答えてくれた。
「ああ、大丈夫だ。んじゃ、いくか!」
翔の髪が少しだけふわりと揺れると、猛烈な強風が辺りに吹き荒れ出した。
「召喚! 切裂っ!」
叫んだと同時に死神が出現し赤外線を全て切裂いていく! それは翔が得意とする召喚の一つだった。そしてさらに叫ぶ。
「出て来い! 風木霊!」
次に飛び出したのは小さな白い鼠のような生き物。ルビーの目が輝き、竜巻を所々に起こし始めた。
「火事だ! 早く消せ!」
「電信柱が倒れたぞ! 電気の復旧を急げ!」
「侵入者はどこだ! 早く殺せ!」
ブラッド内は一気に騒がしくなった。
「殺せとは穏やかじゃねぇな。だが、やられる前にこっちがやる!」
快と白真はブラッドの敷地内に姿を現した。それを見て血気盛んな者達はすぐに殺気を剥き出しにして襲い掛かってきた!
「あのガキ共か! 撃て! 殺せっ!!」
怒声とともに無数の銃弾が快達に撃ちこまれたが、それは快には無意味なものだった。
「効かないよ、おじさん達」
「なっ……! 鉄を召喚しただと!」
快が召喚した鉄壁は銃弾を全て吸い込んでいた。
「今撃ったもの、全て返してやる」
その言葉を合図に二人に向けられたものは敵に全て返された。
その頃、快達と別行動をとっていた翔と修は翡翠の元へと急いでいた。
「こっちで間違いないのか?」
「ああ、翡翠も人質役様になってきたもんだ。プラーナ(気)を発しているようだしな」
普段の遊びはこんなところで生かされてきた。だが、そのおかげで紫織は翡翠がさらわれる現場を偶然目撃し、怪我をする羽目になったのだ。
「とにかく、翡翠を助けたら早く帰ったほうがいい。瞬間移動なんて芸当は俺と快しか出来ないんだからよ」
修は少しだけ焦りを感じながら言った。二手に分かれればそれだけ戦力は落ちるが、敵の分散と脱出にはもってこいだ。これが二手に分かれた理由だった。
あくまでも死んでしまっては意味がない、快は敵地に乗り込んでもそこだけは冷静だった。
「だけど快はこっちに合流してきそうだ。外がやけに静かになったと思わないか?」
「静かに……!」
修は最悪のパターンに陥ったことにようやく気づいた。嵌められていたのはこっちだ!
「翔っ! 飛ばせ! 敵は俺達の方に集中してる!」
「その通り」
ブラッドの幹部達はとっくに二人を取り囲んでいたのだった。




