第十四話:発端
「全部って……、一体何をやらかす気だい、快ちゃん」
かくれんぼに鬼ごっこ、さらにちゃんばらを一遍にやる。それではまるで……
「バスターの演習だね、快ちゃん」
「そういうことだ」
これだけで白真と修には理解できたようだ。氷堂もそういわれれば理解できた。
「どういうこと? 快ちゃん?」
首をかしげて翡翠が尋ねる。
「だからな、せっかく氷堂さんみたいな幹部が遊んでくれるんだから、この気に乗じてバスターの演習をやるってことだよ。
かくれんぼも鬼ごっこも、もとは敵のアジトに侵入するためにあるだろ?ちゃんばらだって戦うときに必要だ。
だから、今回は翡翠が人質になって俺達が翡翠を助け出すミッションだ。理解できたか?」
大まかに全員が理解できた。しかし、
「えええ!! 翡翠捕まっちゃうの!? 翡翠も戦うほうがいい!」
「おいおい、翡翠は『治療系』のバスターだろ。戦いよりもサポート役だろ」
「いやだ! 翡翠だって戦うの!」
一度こうだといったら翡翠はなかなか言うことを聞かない。しかし、長年の付き合いと精神年齢の高さとは恐ろしいものだ。
快は一言で片付けた。
「分かった。だったらお前に重要な任務をやる。
氷堂さんから逃げ出せ。それがお前の任務だ。
幹部級から逃げ出すなんて、普通はできないぜ?」
「人質やる!」
氷堂は驚くだけ驚いた。
「TEAM」を継ぐこの少年隊長は、もはやプロもいいところだ。
仲間をこれだけうまく手なずけるものなど、大人でも少ない。
翡翠が単純といえば単純なんだが……
「そういうことだ。氷堂さん、本気で頼むぜ?」
快はバスターの目をして氷堂に宣戦布告すると、
「ああ、じゃあ、人質はいただいた!」
翡翠を抱え、瞬身でその場から消えたのだった。
そして、氷堂は周りに誰もいないだだっ広い場所に翡翠を降ろす。とはいえ、TEAMが所有する安全な場所だ。
「さて、この辺でいいかな、翡翠ちゃん?」
人質に場所を尋ねるのもやはり翡翠に対する甘さゆえ。高い木の下に少しゆるめに縛ってやるのも始めから逃げやすくするためだ。
「うん! だけど、私もミンション開始だもんね」
「いや、ミッションね。それじゃ、俺は快ちゃんたちを捕まえに行ってくるから少し大人しくしておいてくれよ」
これほど優しい悪人も滅多にいないだろう。氷堂は瞬身でその場から消えた。
「よ〜し! がんばっちゃうもんね!」
翡翠は一気に集中した。腹部に巻かれた縄に自分の力を流し、一気に引き千切る。その芸当をやってのければすぐに快達と合流できるのだが、何やら違和感を覚える。
「あれ? 氷堂さん何か特殊な術でもかけたのかな?」
何度かこの練習をしたことがあるが、今回は簡単に切れない。
それどころか、いつも以上に嫌なプレッシャーが翡翠を襲い始める。
「えっ? なにこれ!」
さっきまで緩やかだった縄が少しずつきつくなり始める。いくら氷堂でも、ここまで高度な術をかけるはずがない。あくまでも子供の遊びだ。
「快ちゃん! みんなぁ!」
翡翠は涙目になり始めた。そして、彼女の前に一つの影が現れる。
それが事件の始まりだった……
それでは、今回はついに出ました!
『篠原 義臣』(シノハラ ヨシオミ)
快の父親にして「TEAM」の社長。
いい加減さと類まれなるお祭り男で、息子にはいつも飽きられている始末。
しかし、バスターとしての実力は、もはや掃除屋の世界で知らないものはなし。かつてやってのけた所業の数々を聞きつけ、「TEAM」に入社してくるものも多数だが、彼の理想像はたいてい一日で崩される。
妻の夢乃さんにはとことん惚れ込んでいる愛妻家だ。




