第十一話:篠原義臣
食堂から東へ約三十メートルの渡り廊下を抜ければそこにはTEAM本社の社長室がある。
そして、その渡り廊下の途中に自動販売機を数個置くのは自分の父親の趣味。そんなデタラメな父親の元へと快は行くのだ。
社長室にたどり着けばまずやることは一つ。いくら自分の父親といえども、掃除屋としてのケジメがあるので部屋のドアをノックした。
「失礼します」
少しだけ畏まった声を発して快は部屋の中に入った。
部屋に入れば外とは違って西洋のソファーやらテーブルやらとお洒落な家具が並んでいる。それにティーカップは快が昔、結婚記念日に両親にプレゼントしたもの。
だが、当の社長はその部屋には全く似合わない男だった。
「おう、帰ってきたか。おかえり」
TEAMの社長にして快の父親、篠原義臣はご機嫌だった。
焼酎ビン片手にほろ酔い気分もいつものこと。彼の後ろにかかってある高級ブランドの背広はもはや何のためにあるのかわからない。生まれてこのかた、ラフな格好しか目撃したことがなかっが、今日のTシャツとジャージはまだマシな方か……
「ただいま。大地が最後の晩餐を用意するような任務って何ですか?」
冷めた息子の視線が義臣に刺さるが、義臣には全く通用しない。
「おっ、もう情報が回ってたか。それなら話は早い。ミッション名「死の二日間」とでも言っておこうかな」
「息子の意見はなしですか?」
「どうせ受ける気だったんだろ?」
ケタケタと笑う父親は生まれてこのかた真面目に何かをしたことがあるのかと疑いたくなる。
しかし、口答えしたところでろくなことにもならないので、快はさっさと任務内容だけを聞き出すことにした。
「それで、メンバーと任務内容は?」
「お前を隊長に、翔、修、白真の三名をつける。援軍によこせるといっても翡翠と紫織ってところかもな」
「最悪だな。この会社もついに潰れる日が来たか」
「跡取り息子が死ねばの話だがな」
義臣は苦笑した。だがそれもすぐに終わり、珍しく真面目な顔をして話し出した。
「とりあえず本題に入る。先週、「ブラット」に掃除屋が三件潰される事件が起きた。それもかなりの手練のな」
義臣は書類を快に投げ渡した。
「確かに掃除屋の一流どころだな」
何度か目にしたことある名前にさすがの快も少々驚いた。
「俺としてもこれ以上奴等の好き勝手にさせるわけにはいかなくてな、白の親父さんからの依頼でもあるから奴等を潰すことにした。
まっ、あいつの救援要請じゃないだけお前達の任務は楽だと言えば楽だが」
自分の親友なだけに義臣は危険な任務を頼んではいるが、まだ高校生達には早いという意見があるため救援要請には関わらせていない。
「ただし、幹部クラスには夢乃さんの隊が出る。お前達にやってもらう任務は」
「援護はゴメンだ。こっちもバスターとしての借りがある。特にこの男のな」
それは時枝警視総監から渡された書類だった。その書類に目を通し、義臣は快の顔を見るといつもの息子とは違い焦りが見えた。
「いつになく冷静さを保てていないじゃないか。やはりこの任務からはずすか?」
真剣な顔をして義臣は尋ねると、
「それもゴメンだ。それに冷静じゃないわけでもない。俺しかこの男を始末できねぇと思っているだけだ。そうだろ?」
快もそれに対抗するかのような眼差しで答えた。
こうと決めたことに対しては、たとえ社長命令でも自分の息子は動かない。
それを知っている義臣は、
「いいだろう。ただし、無理だけはするな」
初めて快を怯ませる空気を発した。こんなに真剣になってやったことなどおそらくあの日以来だ。
「了解」
快は瞬身でその場から消えるのだった。
そして三十秒後、
「夢乃さん、やっぱりそっちが援護になりそうだ」
穏やかな表情で義臣は笑うと、
「あなたの子だもの。分かっていたわ」
隣室から快の母親である夢乃が出てきた。まだ年若く、その辺の女優以上に美人。
ふんわりした笑顔でいつも心を暖かくしてくれる。
そんな彼女を射止めたは、かなりの果報者だと掃除屋業界の中でも噂されている。
「とりあえず、こっちも出来るだけの援護はする。夢乃さんも無理はしないでくれよ」
「大丈夫です。私はプロですからね」
夢乃はにっこり笑うのだった。
でわでわ、自己紹介です!
『片岡 翔』(カタオカ ショウ)
快の悪友にして、翡翠とは「カレカノ出来ない同盟」の盟友。とにかく平々凡々の少年。
しかし、仲裁役になったり、困ったときのサポートは必ず翔がやっているので、周りの信頼は厚い。
部活はサッカー部、趣味はゲーム全般であり、かなりのゲーマーである。




