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第十話:逃げ道はなくなった

「よくきたな、高校バスターの諸君」

 

 警視庁警視総監、そして修の父親である時枝脩三は相変わらず厳しさの中にも優しさがある表情で快達を迎えた。しかし、息子の修は常識はずれの父親の行動に抗議した。


「息子の授業を何だと思ってるんだ? この馬鹿オヤジ」

「学校の授業を受けなければならないほど勉強が苦手になったのか? それに授業の単位は今のところ足りてるだろう?」


 だてに自分の父親をやってない。文句を有能な者に意見することほど勝てない喧嘩もないのだ。それも父親なら息子の意見などお見通しというおまけ付きだ。


「間違いなく世の中の教育機関を敵に回したな」

「ああ、親の言葉とは思えねぇが」

「さすが警視総監」


 快、翔、白真は思ったままを遠慮なく口に出す。とりあえず応酬はここまでと、脩三は話を本題に持っていくことにした。


「お前達を呼んだのは他でもない。白、お前の親父さんから依頼だ」

「親父が?」

 

 それに白真はきょとんとした。白真の父もTEAMの幹部だ。しかし、いつも任務でどこかに飛ばされているため、本社に戻ることなど年一・二回あればいいところだ。


「ああ、『ブラッド』という組織は聞いたことがあるだろう?」


 その言葉に四人全員に衝撃が走った。知るも知らぬも、彼らにとっては忘れもしない因縁深い掃除屋である。


「まさか、そいつらと一戦やれってことか?」

「そういうことだ。もちろん断っても構わないがな」


 珍しく任務を選ぶ権限を与えられた。それについて修は意見する。


「構わないって、バスターの依頼は絶対だろう。警察としても立場が悪くなるんじゃねぇのか?」


 警察と掃除屋は互いに協力関係にある。しかし、実質のところ掃除屋のほうが権力が上だといわれている。警察に手出しできない事件を掃除屋はこなさなくてはならないからだ。


 また、その任務を提供するのが警察であり、またサポートもしなければならないのだ。特に一バスターの依頼となれば、世の中の信頼を失わないためにも警察が動かないわけにもいかない。見捨てれば「警察」という組織を掃除屋が潰す恐れもあるからだ。


 ただし、それがこの警察庁で起こらない理由はただ一つ。「TEAM」の名がそれをさせないのである。


「うちの親父なら平気だ。どうせ救援を求めてるんじゃないんだろう?」


 白真は面白くなさそうに言った。一度くらいくたばりかけた方がいいと思っているからだ。


「ああ、間違ってもそれはないな。ただあいつはあれで多忙だからな、自分の弟子達にこの任務を押し付けてやろうというところだろう。それにこいつの支払いと一緒にな」

「持って帰らせていただきます!」


 白真は心の底から侘びた。自分の父親が警察に遊び金を払わせるなどとんでもないことだ! 国民の税金を何だと思ってるんだと心の底から激怒した。


 しかし、それを快が白真の手からあっさりと取った。一番払わなければならない父親がいるからである。


「白、こいつはうちの親父に払わせたらいい。それより時枝警視総監、今回の任務内容は親父のところに送ってますよね? それをわざわざ俺達を呼び出したのには訳があると思うのですが、話していただけませんか?」


 快が真面目な顔をして尋ねると、時枝警視総監は四人の表情を見ながら切り出した。それは一人の大人としての顔だった。


「お前達を正直この件に関わらせることは俺は反対だ。バスターといえども、お前達はまだ高校生だ。学生らしく勉強に明け暮れた方が普通はいいだろう」

「さっき教育機関を敵に回す奴が正論か」


 修が思いっきりツッコミを入れる。


「だが、お前達は並大抵のバスター達に比べて卓越した才と力をもっている。それもTEAMのバスター達以上だ。あいつはそれを見越してこの依頼を持ってきたんだろうが、危険な任務である以上よく考えることだ」


 そして手渡された任務内容を見ながら、四人はパトカーで学校に送られることになった。



 時間は経ち放課後……


「よく考えろ、か。俺は面白そうだからいつでも受けようと思ってるんだが」

「白らしいな。まっ、俺もそうしようとは思ってる。任務である以上、断る理由はないが……」


 快はそれ以上言葉がつむげなかった。

 

 全員考えることは同じだった。「ブラッド」は自分達に生まれて初めて死の恐怖を与えた掃除屋だった。


 あの事件からもう何年も経っている。あの幼かった自分達は強くなった。白真の父親がありえないきつさで修行をつけてくれた。それに耐えて今があるというのに、どうもいつもの冷静さを快は保てなくなっている。


 それぞれの思いをめぐらせながら快は食堂に入ると、親友のコックが今日も迎えてくれた。


「よう、帰ってきたか」

 

 大地が夕食の仕込みを始めている。今日は豪勢なメニューということは匂いで分かる。


「今日は誰かの誕生日だったか?」

 

 何かに託けて騒ぐのはこの掃除屋ならでは。


「いや、お前達の最後の晩餐作りだよ」


 それが全てだった。快は覚悟を決めると同時に深い溜息を吐き出した。


「親父のところに行って来る……」

 

 そう告げてとぼとぼと歩き出した。任務を受けるという前に最後の晩餐を作らせているということは、もう逃げ道はないということだ。



では、続きましての登場は・・・・


『色鳥 白真』(イロドリ ハクシン)

 「快ちゃん大好き!」、「紫織は俺のもの!」的な高校生。その明るく活発な性格はムードメーカー(トラブルメーカー)である。

 しかし、楽天的な性格の割には、将来医者になるという目的を持っているしっかりした芯の持ち主。なので以外に成績優秀である。部活は剣道部、全国大会三連覇の実力者である!

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