生きてさえいれば
ジュリアの病室に、ダルビーがいた。
「ああ、もう痛くないな、良かった・・・」
目が覚めたジュリアは、横を見て驚く。
「ダルビーさん!どうしてここに?本物?」
夢のような気持だった。
「本物だよ。大丈夫かい?大変だったね」
ダルビーは、ジュリアの手を握る。
「何のこれしきって、感じです」
そう言って、笑って見せた。
「何にも知らなくて、申し訳ない。俺のファンがこんなことするなんて・・・」
ジュリアの手を握りながら、頭を下げるダルビー。
「ダルビーさんが悪いんじゃないですから、気にしないでください。それに、あの人たちも操られていたんだから」
ジュリアは、ダルビーに余計な気を使わせたくなかった。
「操られてた?どういうこと?」
ダルビーに聞かれて、ジュリアは戸惑った。
「あ、その、操られてたって言うのは、あの、人の心って、いろいろな思いに支配されちゃうこともあるんです。操られてるって言うのは、私もそうだけど、自分の心の中で、思い通りにならないこととかに、悩まされることって、ダルビーさんも、ありますよね」
首を傾げるダルビー。
「とにかく、ダルビーさんのせいではないんです。わかりましたか!」
思わず普段の性格が出てしまった。
「はい、わかりました・・・」
素直に頷くダルビーだった。
「あ、いえ、はい・・・」
二人とも言葉が出ずに、手を握り合うだけで、時間が過ぎた。
「すみません。今日は、無理させてはいけませんから」
看護師が入って来て、二人の間を裂く。
「じゃあ、また来るからね」
そう言って立ち上がるダルビー。
「気を付けて・・・」
小さく手を振るジュリア。ダルビーも手を振って出て行く。
「あの人、歌手ですよね?」
看護師が聞いて来た。
「あ、はい・・・」
ジュリアが小さな声で言う。
「付き合ってるんですか?」
また、余計なことを聞かれてしまう。
「え、いえ、仕事仲間って言うか、その、先輩です!」
赤くなって答えたジュリア。
「誰にも言いませんから、今度、サイン貰ってください」
わざわざ小さな声で言う看護師。
「あ、はい、会うことがあれば・・・」
ジュリアは、そう言って眠るふりをした・・・。
コンコン。数日後、ジュリアの病室の扉が鳴った。
「ジュリアちゃん、元気?」
亜美が元気よく入って来た。
「亜美ちゃん・・・だけ?」
亜美の頬が膨れた。
「私だけじゃ、駄目だった?」
花束を持ったまま、帰ろうとする亜美。
「ごめん。亜美ちゃんに会えて、とっても幸せ」
取り繕うジュリア。
「そうなの?じゃあ、居てあげる」
ホッとするジュリア。
「みんな来てますよ!」
それが合図のように、みおん、真阿子、乃菊が入って来た。
「みんなも来てたんだ。良かった・・・」
ジュリアは、喜んだ。
「やっぱり、私一人じゃ不満なんだ!」
花瓶に花を挿しながら、亜美が言った。
「そうじゃないよ」
また焦るジュリア。
「亜美のことはいいから、今日は、のぎちゃんが話したいことがあるからって言うから、みんなで来たの」
みおんが、大人少女23のメンバー勢揃いの理由を言った。
「さあ、どうぞ」
みおんが、ベッドの横に椅子を置いて、乃菊に座らせる。
「何なの?毎日会いに来てくれてるのに」
ジュリアは、かしこまった表情の乃菊を見て不安になる。
「ジュリアもみんなも、聞いてくれる?」
乃菊が話し出す。
「私が、このグループに入ってから、ふう美が死んだり、ストーカーや剣士に襲われたり、今度のように怪我をしたり、みんなが危ない目に遭ってるのは、全部私のせいなの。おじさんは、みんなのために私が存在するって言ったけど、これ以上、みんなを危険な目に遭わせたくないの。だから・・・」
亜美が乃菊の肩を抱く。
「のぎちゃん、やめて・・・」
亜美が乃菊の次の言葉を遮った。
「私は、のぎちゃんが居てくれるだけでいい、生きていてくれるだけでいい・・・」
乃菊信者の亜美は、乃菊の存在が必要だった。
「亜美が言いたいことを、乃菊ちゃん、分かるわよね」
真阿子が話し出した。
「私もみんなも、乃菊ちゃんの性格は、分かってる。だから責任を感じて、私たちから離れようと言い出すんじゃないかって思ってたわ。でもね、乃菊ちゃんは、私たちにとって大切な人なの。居てもらわなきゃいけない、かけがえのない人なのよ」
真阿子の言葉に、みんなが頷いた。
「私が襲われたのを、身体を張って助けてくれたのは、のぎちゃんじゃない。のぎちゃんがいなかったら、私は、死んでたかもしれないし、私だけじゃなく、みんなを繋いでいてくれるのは、のぎちゃんなのよ。だから誰も事件や事故があっても怖くないし、のぎちゃんを失いたくないの」
みおんは、乃菊を親友だと思っているが、それは、みんなにとっても同じだと感じていた。
「のぎちゃんは、私にとっては、ヒーローなの。何かあったら、助けてくれるし、のぎちゃんに何かあったら、真っ先に駆け付けたいの。だからずっと一緒に居て欲しい・・・」
後ろから肩を抱く亜美は、涙を流している。
「そう言うことだね。菊野ちゃんは、私たちの大切な人なの。何があってもこのメンバーは、ずっと一緒なの」
ジュリアが、手を伸ばして、乃菊の手を握った。
「ありがとう。おじさんが言ってたけど、みんなは、私にとっても必要な仲間だって。私もそう思ってるんだけど、もし、みんなに何かあったらって考えたら、怖くて・・・」
乃菊も涙を流した。
「みんな一緒だよ」
みおんがそう言って、みんなの手を握らせた。
「お腹空いた!病院食は、美味しくないから、何か美味しい物買って来て!」
ジュリアが、お腹の辺りを押さえながら言った。
「じゃあ、見つからないように買って来よう!亜美ちゃん、行くよ!」
真阿子が、亜美を誘った。
「お金は、私に任せて!」
みおんもリーダーの威厳を示す。
「サンキュー!」
ジュリアの物まねに、みんなが笑った。
「待っててね」
亜美が、乃菊を座らせたままにして、みんなと出て行った。
「一緒だからね」
ジュリアは、乃菊の手を強く握った。
「ありがとう・・・」
乃菊は、幸せを感じた・・・。




