人質
神社を横目に、林の方へ連れられて行くジュリア。
「早く歩きな!」
そう言われても、傷が痛くて速くは歩けない。お腹を押さえながら、何とか前へ進むジュリア。
「こんなところで、何をするんですか?」
初めて来る場所に戸惑うも、ジュリアは、何か逃れる方法はないかと考える。
「黙って来ればいいんだよ」
遊里が向かう先に、石積みの墓がある。そして、その奥に・・・。
「ジュリア!」
墓の一番奥の木に、みおんが縛られている。
「みおんちゃん!」
ジュリアも、みおんまで掴まっていることに驚くが、そこにあの二人がいることにも驚いた。
「やっと来たわね」
あのダルビーのファンで、体格のいい久美と眼鏡の志穂である。
「この女も縛りなさい」
遊里の命令で、久美と志穂がジュリアをみおんの所へ連れて行く。
「あ、痛い!」
強く引っ張られたため、傷が痛むジュリア。
「ジュリア、どうしたの?怪我してるの?」
みおんは、ジュリアがお腹を押さえているのに気づく。
「遊里さん、どうしてこんなことするんですか?恨みは私にあったんでしょ、ジュリアは帰してください、怪我してるじゃないですか」
みおんは、必死で訴える。
「そんなこと言っても、私は、この女にと憑りついてるだけで、その女たちも私が操っているんだから、何を言っても無駄だよ。それに、そのくらいの傷で、死んだりしないよ。ただ、もっと後には、二人とも死んでもらうけどね」
みおんには、遊里が遊里でないのかどうかもわからない。
「じゃあ、あなたは?」
みおんが尋ねる。
「私は、向こうにある墓の主、恨み霊さ。この女たちは、この墓の侍に仇を討つように頼みに来た女たちだよ。私は、あの人に呼ばれて来たんだよ」
遊里に憑りついている霊が、自分の正体を言う。
「あの人、って?」
みおんが聞く。
「そんなことは知らなくていいよ。あの女さえ来れば、すべて片が付くから」
恨み霊は言う。
「あの女って?」
またみおんが聞く。
「今に来るからわかるよ」
恨み霊に憑りつかれている遊里が、不敵な笑みをもらす。
辺りに霧が立ち込めてきた。
「あいつが、来たな・・・」
恨み霊は、別の者も待っていたのだ。
「やはり、お前たちは、私を騙していたんだな」
霧の侍が現れた。
「よく来たね。待っていたよ。あんたがいないと、あの女を抹殺できないからね」
遊里に憑りついている恨み霊が言う。
「お前は、いったいお前は、何者なんだ」
霧の侍は、遊里が自分の所へ来た時の女でないことに気づいていた。
「いつも近くにいたのに、知らなかったんだね。私は、あんたのように馬鹿正直な霊ではないから、考えることは得意なんだ、よっ!」
恨み霊は、両手を広げて、赤い煙を出す。
「貴様は!」
霧の侍が、刀を抜いて構えたが、時すでに遅く、赤い煙に包まれてしまう。
「あははは、私は、人の恨みを肥やしにする、恨み霊なんだよ。恨みを持つこの女たちは、みんな私に支配されてるんだよ。だからあんたを呼び出したんだ」
勝ち誇ったように、恨み霊は笑う。
「う、ううっ・・・」
腰を落とす霧の侍。
「お前たち、何をしている!」
そこへやって来たのは、警察官の司馬田と加納、そして亜美だった。
「みおんちゃん、ジュリアちゃん!」
亜美は、二人の所へ走る。
「あの女より先に、小物が来たんだね」
恨み霊に憑りつかれた遊里も、久美と志穂も、霧の侍の後ろへ回る。
「お前たちが、あの殺人事件の犯人なのか!」
司馬田が前に出て、霧の侍たちに詰め寄る。
「司馬田さん、気を付けてください」
加納は、四人が只者でないことをわかっっている。
「大丈夫だ、俺は柔道の有段者だ。この人数くらいなら取り押さえられる」
司馬田にも伝えた方がいいだろう。両手を組み手を行うように構える。
「危険です!のぎちゃんも、そのお侍に斬られたんです!」
縛られているみおんが言う。
「な、何を、それ、それくらい・・・」
司馬田は、少しずつ後退する。
「か、加納!あの刀は、本物か?」
司馬田は、加納に聞く。
「たぶん」
加納が答える。
「司馬田さん、早く捕まえてください!」
亜美も、無神経に司馬田の応援をする。
「お前たちには、死んでもらう」
霧の侍が、刀を構えて、司馬田にジリジリ寄ってくる。
「どうしよう?」
司馬田は、加納に相談する。
「とりあえず、下がりましょう」
司馬田も加納も人質の所へ集まる。
「鉄砲でやっつけちゃえばいいでしょ」
亜美が言う。
「今日は休みなんだ。そんなもの持ってないよ」
司馬田は、ばつが悪そうに言う。
「何なの、役立たず!」
亜美は、遠慮がない。
「こうなったら、お前たちには、先に死んでもらって、あの女を待つよ」
恨み霊は、そう言って笑う。
「早く来て、のぎちゃん・・・」
亜美が期待するのは、もう乃菊たちだけである・・・。




