亜美の出動
「おはようございます!」
午後1時を過ぎていたが、亜美は、業界のあいさつで事務所に入ってくる。
「おはようございます。亜美ちゃん、今日はオフでしょ、どうしたの?」
事務仕事をしながら、マネージャーの政菜が聞いた。
「今日は、パパとママが旅行に行ったから、加納さんが事務所に行ってなさいって・・・」
亜美は、そう言いながら、空いているデスクに座る。
「どういうこと?加納さんて、この前迎えに来てた人?彼氏なの?」
政菜が詮索する。マネジャーとしては、タレントの現状把握をするのは当然なのか・・・。
「え、あ、いえ、あの人は、お父さんの後輩で、その・・・」
亜美は、答えに苦慮する。
「まあいいわ、そのことは今度聞くから。それより、みおんちゃんとジュリアに会ってない?もう打ち合わせ時間が過ぎてるの」
政菜が心配そうな顔で聞く。
「えっ?みおんちゃんとジュリアちゃんですか?今日は、顔も見てないし、電話もしてないです」
亜美は、加納の話が終わってホッとしていたが、二人に対しての情報は持っていない。
「そうか、あの二人は、亜美ちゃんを相手にするようなレベルじゃないものね・・・」
政菜は、そう言って受話器を取る。
「それって、どういうことですか?私だって、二人と同じ年なんだからね!」
対抗心露わの亜美である。
「いいから、ジュリアに電話して、私は、みおんちゃんに電話するから」
やっぱり政菜は、亜美を相手にしない。
「何だか、差別されてるみたい・・・。まあいいや・・・」
ブツブツ言いながらも、ジュリアに電話をする亜美。
「やっぱり、出ないなあ・・・。もうとっくに来てもいい時間なのに・・・」
政菜は、時計を見ながら出るのを待つ。
「出ませんよ。忘れてるんじゃないですか?」
亜美は、ふてくされながら言う。
「そんなことないでしょ。亜美ちゃんと違うんだから」
政菜のその言葉に、亜美は、口を尖らせそっぽを向く。
別の電話が鳴る。すぐに政菜が受話器を置き、隣の電話に出る。
「はい、田沢芸能事務所です」
政菜は、返事を待つ。
「どちら様ですか?え、菊野は、今日休みですが。え、預かってる?どうしてですか?菊野に?冗談はやめて下さい。警察に連絡しますよ」
政菜は、ガチャンと受話器を置いて、電話を切る。
「政菜さん、どうしたんですか?」
どうも、政菜は期限が悪いようだ。亜美が丁寧に聞く。
「いたずら電話でしょ。みおんちゃんとジュリアを預かってるから、それを乃菊ちゃんに伝えて、墓へ来いなんて言ってるのよ」
政菜には、全くの意味不明の内容なのだろう。しかし、それを聞いた亜美の顔色が変わる。
「政菜さん、それは、みおんちゃんたちを誘拐したってことですよ。のぎちゃんに連絡しなくちゃ」
政菜は、キョトンとしている。
「政菜さん、社長に連絡してください!誘拐なんです!」
亜美は、乃菊に電話する前に、加納へ電話をした。
「お墓って、何なの?」
政菜は、まだ理解していない。
「都市伝説の墓です。もしかしたら、二人は、殺されちゃうかもしれないんです!」
亜美は、そう言いながら、加納が出るのを待つ。
「た、大変だ。社長に電話しなきゃ」
政菜が慌てだす。
「落ち着いてください。私は、とりあえずお墓に向かいますから」
そう言って、携帯電話を耳に当てながら事務所を出る亜美。
「お墓って、どこなの?社長、早く出てください・・・」
急に心細くなった政菜。受話器を持って、右往左往する。
「加納さん、みおんちゃんとジュリアちゃんが誘拐されたの。のぎちゃんを斬った人だと思うけど、お墓へ来いって言ったから、加納さんが調べたところだと思うから、連れてって!」
亜美は、非常階段を下りながら、加納に連絡した。外へ出て10分くらいで、加納が来るまでやって来た。隣に見知らぬ男が乗っている。
「誰ですか、この方?」
訝しげな顔で、助手席の男を見る亜美。
「あ、今ちょうど警察の友達と会っていたんだ」
加納が説明しようとする。
「司馬田です、よろしく」
助手席の男が自己紹介する。
「あ、警察の方ですか。ちょうど良かったです。行きましょう!」
急に態度が変わる亜美。
「君は、危ないから、待ってなさい」
加納は、当然亜美が心配だから、この選択をする。
「そんなわけないでしょ!さあ、行きますよ」
亜美は、勝手に後部座席に乗り込む。加納も仕方なく車を発車する・・・。
「のぎちゃん!みおんちゃんとじゅりあちゃんが、誘拐されたの。それで、のぎちゃんに墓へ来いって言ってたの」
亜美は、乃菊に電話をしていた。
「わかった!今朝、岐阜へ行って、今家に戻る途中だったんだ」
国也が答えた。
「あ、おじさんだったの・・・」
急に恥ずかしくなった亜美は、話すトーンが下がる。
「乃菊は、今疲れて寝てるんだ。この先で引き返すから、その頃には、復活してるよ」
国也の答えに、亜美も復活する。
「私と加納さんは、あ、もう一人、3人で向かってますから、何とか解決できるように頑張ります」
亜美なりの責任感なのだ。
「無理しないでくれよ。相手は、只者じゃないからね」
国也は心配する。
「はい、わかりました!」
元気な声で返事をする亜美。
「すぐに行くから、皆を頼むよ」
それなりに亜美や加納にも期待している。
「了解しました」
運転しながら聞いている加納も、亜美の様子に苦笑いする・・・。




