表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/64

一人のジュリア

「お帰り!」

改札を抜けると、そこには国也がいた。

「ただいまあ」

乃菊は、すぐに国也の所へ行く。

「亜美ちゃん、お帰り」

加納もいた。

「どうして加納さんがいるの?」

亜美は嬉しかったが、みんなの手前、そっけない素振りをする。

「先輩、あ、お父さんに頼まれて来たんだ」

本当はそんな理由ではないが、それを知るのは、国也のみである。

「じゃあ、今日は、行って帰ってのスケジュールだったれど、無事東京での初仕事を終えられました。みんなのおかげです。これからも忙しくなると思いますが、頑張っていきましょう。とにかく、今日は遅くなってしまったので、ここで解散して家でゆっくり休んでください。

広い通路の真ん中で、大人少女23一行は、解散することになった。

「それじゃあ、二葉さん、真阿子と一緒にタクシー乗って、送り届けてくれるかな」

真阿子は、同じ方向へ帰る、マネージャーの二葉政菜と駅前のタクシー乗り場へ向かった。

「お疲れ様」

手を振る真阿子に、乃菊たちも手を振る。

「田沢さん、ジュリアちゃんを送ってください」

高速に乗ろうと思っている国也は、一人のジュリアを田沢に頼む。

「私は、一人で大丈夫です」

ジュリアは、遠慮する。

「駄目だよ、もう遅いから送ってもらいなさい」

心配な国也は、無理矢理ジュリアを田沢たちに預ける。

「僕たちも行きますので・・・」

加納は、亜美の荷物を持って歩き出す。

「のぎちゃん、みおんちゃん、ジュリアちゃん、おやすみなさい。社長もおじさんも」

亜美は、元気に手を振り、加納について行く。

「それじゃ気を付けて、みんなおやすみ」

国也も、乃菊の荷物を持って歩き始める。

「のぎちゃん、ゆっくり休みなさいよ」

みおんは、乃菊の手を握り、送り出す。

「おやすみ」

ジュリアは、小さく手を振る。

こうして一行は、解散した。


「社長、私、寄りたいところがあるので、ここで失礼します」

三人がタクシー乗り場まで来ると、ジュリアがそんなことを言い出す。

「駄目だよ、国也さんにちゃんと送るように頼まれたんだから」

当然田沢も、ジュリアを一人で行かせるわけにもいかない。

「何処に行きたいの?私たちも一緒に行くよ」

みおんも心配する。

「大丈夫だよ。それに私と一緒じゃ、遠回りになっちゃうでしょ」

そう言ってジュリアは、先にタクシーへ乗り込んでしまう。

「お疲れ様です」

ジュリアは、窓を開けて挨拶をする。

「じゃあ、気を付けて行くんだぞ。家に着いたらメールしなさい」

田沢は、念を押す。

「みおん、じゃあね」

手を振るジュリアを、不安そうに見送るみおん。

「大丈夫だよね・・・」

そう田沢に確認するが、みおんが見上げる田沢の顔も、不安げである。


国也と乃菊は、駐車場へ向かっていた。

「泊りでもいいんじゃないかな。強行日程で疲れちゃったなあ・・・」

荷物を持って前を歩く国也の後ろで、聞こえるように独り言を言う乃菊。

「たまには、ラブホテルでもいいかも・・・」

そこだけは小さな声で言う。

「そんなとこ行かないよ。疲れてるんだから、急いで帰るよ」

国也にしてみれば、乃菊の身体を心配をしているから、そんな話には乗ってこない。

「つまんない人。そんなんじゃ、若い奥さんに飽きられちゃうよ」

乃菊は、国也の横へ行って腕をつつく。

「乃菊は、飽きちゃうんだ。まあ仕方ないかな・・・」

国也は、そう言って進む。

「ねえ、飽きたりしませんから。国也様ったら・・・」

乃菊は諦め、国也を追いかける。

「どうした?どこか痛いのかい?」

駐車場で車に荷物を載せていた国也は、胸を押さえて立っている乃菊に気づいた。

「違うの。何か嫌な予感がして、胸が苦しくなったの」

そんな光景を、以前にも見たことがある国也は、急いで乃菊を助手席に乗せる。

「大丈夫かい?」

国也が聞くが、乃菊は目を閉じたままだ。

「そんなに遠くじゃない。行ったことがあると込みたい」

乃菊がそう言うと、国也はすぐに車を出した。


ジュリアを乗せたタクシーは、駅からそう遠くない裏通りを走っていた。

「そこで降ろしてください」

タクシーが停まり、ジュリアは支払いをして降りた。

「誰もいないな・・・」

通りは静かだった。ジュリアは急ぎ足になり、目的の場所を目指した。

「あっ・・・」

目的地へ着いたジュリアだったが、落胆の表情をして立ち止まる。

「こんなに遅いから、閉まってて当然よね・・・」

そう言って腰を下ろすジュリア。そこは、ダルビーの母の店、居酒屋みずえだった。

「星が奇麗だ・・・」

座って眺める空には、星がキラキラと輝いている。

「あれ・・・?」

ジュリアが通りの西側を見ると、妙な霧が立ち込めていた。そしてその霧は、しだいに近づいてくる。

「こんな時期に珍しいわね・・・」

興味を示したジュリアは、その霧の方へ向かってしまう。

「行っちゃ駄目!」

ジュリアの背中の方から、呼び止める声がした。

「菊野ちゃん!」

振り返ると、その声の主は、乃菊だった。

「どうしてここにいるの?」

ジュリアの所まで来た乃菊は、そう聞くジュリアの手を握り、反対方向へ連れて行く。

「あの霧の中に入っちゃ絶対駄目。もし、これからもそんなことがあったら、すぐに知らせて」

乃菊は、歩きながらジュリアに話をする。

「あ、おじさん・・・」

すぐに車が見え、そこには国也がいた。

「送っていくから、乗りなさい」

そう言って、ジュリアと乃菊を後部座席に乗せる。

「ねえ、どうしてここにいるってわかったの?」

ジュリアは、不思議でたまらないのだ。

「ジュリアのことだから、夜遊びするんじゃないかと、後をつけて来たの」

乃菊は、ジュリアにもわかるような嘘をつく。

「住所は?」

国也は、ジュリアの家の住所を聞き、ナビで検索する。

「疲れただろうから、すぐに帰ろう」

そう言って、国也は車を走らせる。

「あの霧は、何なの?」

ジュリアには、どれもこれもわけがわからず聞いてきたが、乃菊はそれには答えず、ずっとジュリアの手を握っていた。

そして車が去ったあの通りには、もう霧は跡形もなく消えていた。


ジュリアを家まで送り届けた乃菊と国也は、何事もなく一安心した。

「ああ、疲れちゃった。どこかで休んでいきたいなあ・・・」

また乃菊のわがままが始まる。

「飽きてもいいよ」

国也には、そんなことを聞き入れる気は更々ない。

「ホントに飽きちゃってもいいの?」

まだ諦めない乃菊。

「1時間もすれば、家で休めるだろ」

国也は聞く耳を持たない。

「ああ、もう倦怠期だなあ・・・」

さらに続ける乃菊。

「じゃあ、帰ったら一人で寝なさい」

国也は、怒ったふりをする。

「ごめんなさい。飽きたりしない、ずっと愛します!」

乃菊は、手を擦って謝る。

「国也様あああ・・・」

車が赤信号で停まる。国也は、乃菊の顎を捕まえて、そっとキスをする。

「着いたら起こすから、少し寝なさい」

乃菊は、一瞬にして大人しくなった。

「居眠り運転しないでね」

乃菊は、シートを少し倒す。

「油断しないようにするよ・・・」

勿論、居眠りもそうだが、国也は、これから起こりうる出来事にも備える気持ちで答えた。











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ