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疑惑と友情

みおんが、病室の扉を開けて入って来た。

「のぎちゃん、大丈夫?」

みおんは、ベッドの横の椅子に座りながら聞く。

「大丈夫だよ、これくらい。それより、警察でいろいろ聞かれたんじゃない?」

乃菊は、国也と話をして、それなりの事件になっていることを聞いていた。

「うん、そうだけど、私も混乱してて、参考になること、話せなかった・・・」

少しぎこちない話し方をするみおん。すぐに視線を逸らせてしまう。

「そお。私の所にも来たけど、こんなだからすぐに引き上げてくれたわ」

乃菊は、いつもの笑顔で話す。

「のぎちゃん、聞いてもいい?」

いつもと違うみおんである。

「何?」

乃菊は、みおんの顔を覗き込む。

「あの時、のぎちゃんが、私を助けてくれた時、のぎちゃんの身体から、何かが現れたような気がしたの・・・」

乃菊は、みおんの顔を見たまま、話を聞く。

「あれは、現実なの?あの剣を持った人よりも、のぎちゃんのことの方が、ずっと気になってて・・・」

みおんは、警察にも話さなかった、事件の時のことを、乃菊に聞いた。

「・・・」

乃菊は、その話が出ることを覚悟していた。みおんは、親友ではあるが、こんな自分のことを曝け出すことをしてこなかった。

「ごめんね、みおん。ずっとあなたに話してなかったことがあるの・・・」

乃菊は、覚悟した。大事な友達を失うかもしれないことを・・・。

「あの時、私の身体から現れたのは、私にとり憑いてる大蛇の霊なの」

みおんの表情が変わる。

「その霊は、悪霊なの?」

すぐに首を横に振る乃菊。

「違うよ。もし私がとり憑かれていなかったら、ふう美の時や、交通事故の時、ビルから落ちた時も、それに昨日だって、簡単に死んじゃってる。ううん、それよりも前、みおんたちに出会うずっと前に、この世からいなくなってたと思う・・・」

乃菊は、みおんを信じながら話をする。

「だから、とり憑かれているのは、時々苦しいけど、私を守ってくれてるんだと思うの・・・」

乃菊は、目を閉じる。

「・・・」

みおんは、言葉を失っているようだ。やはり、理解されないのだろうか・・・。乃菊は、次の言葉に賭けた。

「みおんは、私が普通の人間じゃなかったら、友達、破棄?」

乃菊は、目を開ける。

「絶対にそんなことないよ!」

みおんは、涙を流していた。

「のぎちゃんが何かにとり憑かれていても、私の好きなのぎちゃんに変わりはないし、どんな過去があっても、どんな秘密があっても、今ここにいるのぎちゃんは、ずっと、私の大事な友達だから!」

乃菊も涙を流した。

「ありがとう・・・」

乃菊が手を伸ばすと、みおんがそっとその手を握った。

「ああ、良かった!」

そう言いながら、亜美が入って来た。

「亜美ちゃん・・・」

みおんは、慌てて涙を拭き、亜美の顔を見る。

「みおんちゃんが、のぎちゃんを友達だと思えないなら、私が許さなかったわ」

亜美は、そう言いながら二人に近寄る。

「亜美ちゃん、もしかして、知ってたの?」

みおんは、自分に代わって、亜美を椅子に座らせる。

「うん、私だって偶然だったけど、知ってました。でも、のぎちゃんは、大事な友達や仲間を巻き込みたくないから、自分一人で、悪い人たちと闘ってきたの。私は、みおんちゃんみたいに、のぎちゃんと友達としてお付き合いはしていないけど、そのぶん、誰よりものぎちゃんのファンだし、のぎちゃんは、私にとっては、アイドルだし、スーパーヒーローなの・・・」

力説する亜美の手を、みおんは握る。

「ありがとう。のぎちゃんや私の近くにいてくれて。私にとっても、のぎちゃんも亜美ちゃんも、私のアイドルだよ。一緒に大人少女23になれて、本当に良かったと思ってる・・・」

また涙を流すみおん。

「二人ともありがとう。私はずっと友達のいない人生を送って来たから、こうしてみんなと一緒にいられるだけで幸せだよ。いろんなことがあっても、みんながいるから頑張れるんだ。ホントにありがとう・・・」

乃菊も二人に感謝する。

「でも、よく考えてみたら、のぎちゃんは、巻き込みたくないからって言ってるけど、私がいつも巻き込んでるわけでしょ、やっぱり申し訳なく思うのは、私の方だわ・・・」

腕を組んで考えるみおん。

「いいの、いいの。のぎちゃんが私たちの近くにいてくれれば、それでいいの!」

亜美は、そう言いながら、みおんに耳打ちする。

「何なの?二人で内緒話?」

亜美は、何も答えず、ベッドの反対側へ移動する。

「のぎちゃん、ありがとう・・・」

亜美とみおんは、そう言いながら、両側から乃菊の頬にキスをする。

「きゃ、恥ずかしい。二人して、私が動けないのをいいことに・・・」

そう言いながらも、乃菊は、笑顔である。

「嬉しいけど、国也様に見られたら、嫉妬するでしょ」

小さな声で、冗談を言う乃菊。

「これも不倫かなあ?」

亜美が言う。

「違うでしょ」

みおんが答える。

「みんな大好き。それでいいでしょ」

乃菊が言う。

「はーい!」

亜美とみおんも賛成し、みんなで笑う。


扉の向こうで、三人の話を聞いていた国也と加納は、少し開けていた扉を閉めた。

「僕は、行きますから・・・」

加納は、国也に目配せして、廊下を静かに歩いていく。

「気を付けてね・・・」

加納を見送ると、国也は、廊下のベンチに座り、仲の良い女性たちの時間を邪魔することなく、一人待った。


「じゃあ、気を付けて行って来てね。ター君が来たら伝えておくから」

店の前で瑞恵が手を振る。

「はい、行って来ます」

ジュリアは、居酒屋みずえの開店前に、手伝いを終えて病院へ向かった。

「真阿子、今店を出たから、10分くらいで駅に着くわ」

ジュリアは、歩きながら真亜子に電話をする。

「何か買って行こうか?」

横断歩道の手前で、話しながら青信号を待つ。ジュリアの周りへ、同じように青信号を待つ人たちが集まってくる。

「うん、のぎちゃんなら、何でも喜ぶと思うよ」

話の途中だった。

「あっ!」

プップー!クラクションを鳴らして、ジュリアの目の前を車が通り過ぎて行く。

「あ、うん、大丈夫。ちょっと人とぶつかって、道路に飛び出しちゃったの」

ジュリアは、ばつの悪い顔をしつつ、何もなかったかのように、歩道へ戻った。すぐに、信号が変わり、周りの人たちが横断歩道を渡りだす。

「え、うん、ちょっと気になって・・・」

ジュリアは、一人横断歩道の手前に残って、あたりを見回す。もう信号を待っている人はいない。渡らずに歩道を歩いて行く、二人連れの女性くらいしか見当たらない。

「何でもないよ。すぐに向かうから・・・」

ジュリアは、電話を切って、横断歩道を急いで渡る。

「誰かが押したような気がする・・・」

ジュリアは、周りを気にしながら急いだ。


「悪運が強いわね」

一人の女が言う。

「どうせそのうち、私たちの代わりに、あの墓の主が地獄に落としてくれるわよ」

もう一人の女が言う。

「そうね・・・」

二人の視線の先には、反対側の歩道を急いでいるジュリアがいた。









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