表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/64

身代わり

「みおん、どこまで行ったの?」

荷物をコインロッカーに預けに行った国也を置き去りにして、乃菊は、みおんたちを追っていた。

「・・・」

その途中で、人だかりを見つけたが、みおんである予感がしない乃菊は、そのまま通りを右に曲がって進んだ。

「みおん・・・」

焦る気持ちを押さえながら、みおんの姿を追う乃菊だった・・・。


「田沢さんでしょ?」

みおんと一緒に自宅マンションへ向かっていた田沢が、声を掛けられた。

「あ、遊里じゃないか・・・」

田沢に声を掛けたのは、元タレントの志野田遊里で、随分前に、田沢が担当していた番組に出演していた間柄だった。

「みおんちゃんだったわね、随分大人になったのね。ごめんなさい、随分久しぶりなんで、ちょっとお話しさせてね」

みおんを子ども扱いする遊里。

「そこのコンビニで待っててくれ、すぐ済むから・・・」

田沢に言われて、みおんは、仕方なくすぐ近くにあったコンビニへ向かう。

「志野田、遊里・・・。お姉さんと同期だったな・・・」

みおんの姉も元タレントで、志野田遊里とは、ライバル関係だった。その頃、時々スタジオに顔を出していたみおんも、顔見知りではあったが、あまり好きな人物ではなかった。

「あ、かわいい・・・」

コンビニへ向かっていたみおんは、反対側の歩道に子犬がいるのを見つけて近寄って行く。

「どこ行くの?」

トコトコと歩いて行く犬を追いかけて、みおんは、コンビニとは反対側の狭い路地へ入って行った。

「あれ?」

路地を入ってしばらくすると、辺りに霧がかかって来た。

「ワンちゃん、どこなの?」

子犬どころか、辺りも見えづらくなってきてしまう。街灯だけがぼんやりと明るいだけだ。

「羽流希さん・・・」

不安になったみおんは、田沢の名前を呼ぶが、聞こえているのかもわからない。

「どうしよう・・・」

ザザッ!何かが地面を蹴る音がした。

「誰っ?」

人の気配がして、みおんは、声を掛ける。

「お前は、皆賀みおんだな・・・」

霧の中から、ざんばら髪の着物を着た男が現れた。

「そうですけど、どうして私の名前を・・・」

みおんは、当然初対面であるこの男が、自分の名前を知っていることを疑問に思う。

「お前は、死んだ姉の夫を、以前から付き合っていた志野田遊里から、奪い取った女であろう」

男の言ったことに驚くみおん。

「そんな、奪い取ったなんて、羽流希さんは、志野田遊里さんと付き合ってなんかいません!」

当然反論する。

「最愛の男を奪われた志野田遊里の悲しみを、欲望だけのお前には、理解出来ないであろう・・・」

男は、腰に挿してある鞘から刀を抜く。

「違います、私は、奪ってなんかいません!」

そう言いながら後ずさりするみおんに、ススッと迫るざんばら髪の男。

「往生際の悪い女だ。罪を償うために、大人しく首を刎ねられよ」

切っ先が、みおんの首筋に近づく。

「私は、奪ってなんかいないし、姉を失った彼が、私を選んでくれたんです。あなたが言ってることは、間違ってます!」

みおんは、震えながら、必死に事実を伝える。

「まだ嘘をつく気か・・・」

男が、剣を上段に構える。

「嘘じゃない・・・」

みおんは、涙を流しながらしゃがみ込む。男は、ぎゅっと剣を握る。

「羽流希さん・・・」

みおんは、手を合わせ、眼を閉じる。


「みおん!」

霧の向こうから、乃菊の声が聞こえ、みおんは、眼を開ける。

「のぎちゃ・・・」

みおんが乃菊の名を呼ぼうとした時だった。

「覚悟!」

シュッ!剣が空気を斬る音が、みおんの前で走り、みおんは、また眼を閉じる。

「やめてください!あなたは、間違っています。みおんは、みおんは、あなたに斬られるようなことをする、人じゃ・・・」

男の前に立ちはだかった乃菊は、そう言いながら膝をつく。

「のぎちゃん・・・」

みおんは、震える手で、後ろから乃菊の腕を掴む。

「またお前か・・・」

男は、もう一度剣を構える。

「邪魔をすれば、斬ると言ったであろう、そこを退け!」

そう言われて、乃菊が退くはずもない。再び立ち上がり、男に対峙する。

「これ以上みおんに手を出すなら、私も、あなたを許すことが出来ない・・・」

乃菊の身体が震えだし、周りの空気が歪みだす。

「お前は・・・」

男は、その様子を見て後ずさりしながら、剣に力を込める。

「ぎゃああああっ!」

乃菊の身体から、渦を巻くように大蛇が現れ、男を吹き飛ばす。男も飛ばされながらも、スッと仁王立し、大蛇に向かって剣を構える。

「あなたは、間違っています。今の世の中、人の心は、歪んでいます。真実を見極めてください」

乃菊は、尚も男を諭すように言う。

「ここは、お前に免じて引くが、私は、私自身がやり残した仇討を、この世で願う者のために、代わって執行するために現れているのだ。これからもそれは変わらぬ。次は、邪魔をするな・・・」

男は、そう言って、霧の中へ消えて行く。

「みおん、大丈夫だった?」

乃菊は、振り返り、みおんに尋ねる。

「う、うん、大丈夫だよ」

呆然としていたみおんだったが、我に返って、返事をする。

「良かった・・・」

そう言って、乃菊は、崩れ落ちるように倒れた。

「のぎちゃん!」

みおんは、すぐに倒れた乃菊の上半身を起こして抱える。

「えっ!?」

抱えた乃菊の胸は、服がザックリと開き、血で真っ赤に染まっていた。

「のぎちゃん・・・」

みおんは、乃菊が自分の前に現れた時、身代わりになって斬られていたことに気づく。

「どうして、いつも私なんかの、身代わりに、なるのよ!」

みおんは、泣きながら乃菊に訴える。

「だって、友達でしょ。大事な、ともだ、ち、無事で、良かった・・・」

消えそうな声で、乃菊はそう言うと、みおんの腕の中で、意識を失った。

「のぎちゃん!」

みおんは、必死で乃菊の胸を押さえ、溢れだす血を止めようとする。

「誰か!誰か来てええええっ!」

みおんは、泣きながら、必死で叫び続ける・・・。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ