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同行してもいい?

「乃菊、バスに戻るよ」

トイレから戻ってきた乃菊を国也が導く。

「のぎちゃん、国也さんからちゃんと聞いたからね」

みおんは、そう言ってレジで待つ田沢のところへ向かった。

「乃菊、何かあったのかい?」

乃菊は、国也の問いかけの意味がわからなかった。

「何かって?」

国也の腕を掴み、寄り添う乃菊。

「何かを感じたんじゃないのかい、それで、トイレに行ったんじゃないのかな?」

国也がお見通し?

「それって・・・」

乃菊は、メガネをかけ直し、国也の顔を見る。

「今は、僕も感じないけど、さっきは、人の視線を感じたんだ。それも、強い恨みの視線みたいだった・・・」

乃菊は、国也の腕を強く握った。

「絶対、あの二人を守ろうね!」

乃菊は、仲良く手を握って歩く、みおんと田沢を見ながら言う。

「ああ、大事な友達だからね・・・」

国也も同じ思いだった。


「私も同行してもいい?」

亜美は、自分の部屋で音楽を聴きながら過ごしていたが、退屈になって加納に電話をかけていた。

「駄目なの?お仕事だって言うのはわかってるけど、最近会ってないでしょ。私がいたら邪魔?」

このところ忙しくて、加納と会っていない亜美。加納の方も、取材であちこち行っていて、亜美の家にも訪問していなかった。

「ホントに駄目なの?・・・いいんだけど、そんなこと言ってると、お父様に言って、出入り禁止にしてもらうから」

亜美のわがままが続く。

「そうなんだ、私のことはどうでもいいんだ。私にだって、声をかければ、遊んでくれる男の子なんかたくさんいるんだからね・・・」

亜美お嬢様のわがままな攻め方である。

「ごめんなさい!無理なこと言って・・・。怒らないでください、反省してます」

今度は、加納に怒られて、しきりに謝る亜美。

「今度、二人とも休みの時まで、我慢して待ちます。だから、嫌わないでください・・・」

今にも涙を流しそうな亜美である。

「じゃあ、またね・・・」

亜美は、電話を切ると、ベッドで横になり、ため息をつく。

「あああ、加納さんは、忙しいし、のぎちゃんは、新婚旅行だし、暇だなあ・・・。そうだ、のぎちゃん見に行こう!」

亜美は、着替えをして部屋を出て行く。


バスは、高速を西へと走って行く。

「羽流希さんは、中学生の時に会った女の子を、10年経っても憶えてる?」

みおんが、横に座る田沢に聞いている。

「どうなんですか、社長!憶えてますか?」

乃菊も加わり、田沢を問い詰める。

「どうかなあ?あまりにも変わっていればいれば、わからないかも・・・」

苦しい返答である。

「私、そんなに変わってないと思うけど」

乃菊は、自分の顔をコンパクトの鏡で見る。

「あ、あの時は、あまりに可愛い中学生が横に来て、すごく緊張して、顔をじっくり見ていなくて・・・」

また余計な言い訳をしてしまった。

「そんなの変だよ!カメラで私を撮ったのに、じっくり見てないなんて・・・。現像して、写真も見たでしょ。やっぱり、単純に忘れてたんだよ、国也様は・・・」

余計にふくれっ面になってしまった乃菊である。

「あっ、ここは、大阪かなぁ?」

田沢が助け船を出す。

「まだ京都でしょ、羽流希さん」

みおんは、正直である。

「もういい、しばらく寝るから・・・」

乃菊は、そう言って、国也の肩に頭を傾ける。

「あ、ああ、そうしなさい・・・」

国也は、固まって肩を貸す。

「あら、仲いいじゃない!」

みおんがからかう。

「最初から仲いいんだから、おやすみ・・・」

乃菊が目を閉じたまま言う。

「・・・」

国也は、苦笑いをするだけであった・・・。


「いらっしゃいませ!」

亜美は、店の中から出て来た女性店員に声をかけられた。

「あ、私は・・・」

店の外でポスターを見ていただけの亜美は、当然戸惑う。

「どうぞこちらへ・・・」

店員に導かれて中へ入る亜美。

「いらっしゃいませ、今堂亜美さんですね」

サングラスをかけているはずなのに、「どうしてわかったんだろう?」と、亜美は不思議がる。

「どうしてわかったんですか?」

奥から偉い人のような方まで出て来た。

「当然、うちの店員は、乃菊さんだけでなく、大人少女23のメンバーの方は、すぐにわかりますよ。あ、私は、社長の片田です」

亜美は、和菓子屋の社長と店員たちに囲まれて、ただただ茫然と立ち尽くす。

「あ、あのポスターなんですけど・・・」

亜美は、窓に貼ってあるポスターを指さす。

「はい?」

みんなが亜美の顔を見る。

「頂けませんか?」

思い切って言ってみる亜美。

「あ、はい。予備がありますから・・・。君、用意して!」

社長の片田が、店員に指示をする。

「以前、大野さんがいらして、同じようにポスターを見ていたので、声をかけさせて頂いたんです。乃菊さんが何度も怪我をされて、心配してたんですけど、復帰もされて本当に良かったです」

女店員が亜美に話しかける。

「おじさんが来たんですか?」

亜美は驚く。

「大野さんは、社長が顔を拝見していてわかったんです。乃菊さんの世話をされてる方ですよね」

女店員は、嬉しそうに話す。

「どうぞ、お持ちください」

片田が、ポスターと和菓子の入った紙バッグを亜美に手渡す。

「あ、ありがとうございます。おいくらですか?」

亜美は、ポスターと紙バッグを持ったまま、ポーチの中の財布を探す。

「どうぞ、そのままお持ちください。もし良かったら、新しいポスターを作る時は、乃菊さんと一緒にお願いします」

社長は、そう言って頭を下げる。

「私なんかが・・・」

亜美は、単純に戸惑う。

「ぜひお願いします。田沢さんには、私からお願いしますから」

亜美は、田沢の名前まで出て来て驚く。

「私たちからもお願いします」

店員も頭を下げる。

「そ、そんな・・・。こちらこそ、よろしくお願いします!」

亜美も頭を下げる。

「ありがとうございます。それじゃあ失礼します」

亜美は、店の外へ出る。

「ふー、緊張した・・・」

振り返ると、片田や店員たちが見送ってくれていた。慌てて頭を下げる亜美。そして急ぎ足で、店を離れて行く。

「いい人たちだ、のぎちゃんのお蔭かなあ・・・」

亜美は、しだいに嬉しくなり、ニヤニヤしながら歩いていた。

「恥ずかしい・・・」

顔が赤くなったのを感じた。

「えっ!?」

亜美は、急に背筋に寒さを感じて立ち止る。そして、ゆっくりと振り返る。

「・・・」

誰もいない・・・。亜美は、強い視線を感じたのだった。

「誰かいた・・・」

確信があったのに、その姿はない。

「気のせいかな。・・・帰ろう」

亜美は、そう思い直して、地下鉄の駅に向かった。

ただ、それでも急ぎ足で・・・。







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