もうすぐ新婚旅行
「私も旅行に行きたいなあ・・・」
食事をしながら、雲江が言う。
いよいよ来週は、乃菊と国也が新婚旅行に出掛ける。その準備の話をした後、雲江が言ったのだった。
「そうだね、今度、雲ネエも一緒にお城を見に行こうよ」
乃菊は、雲江を気遣う。
「え、お城かい?」
雲江は、不満のようだ。
「雲ネエは、お城は好きじゃないの?」
親子だから、同じ趣味かと思っていた乃菊。
「私は、古いものより、新しいものがいいよ。例えば、東京のテーマパークとか、大阪の何とかジャパンとか、近場なら、スパーランドのジェットコースターがいいわね。温泉も入れるし・・・」
そう言う趣味だったんだと、乃菊と国也は、顔を見合わせる。
「ずっと、仕事ばかりだったから、年末にでも、どこかへ行こうか・・・」
国也は、母への感謝を忘れていたような気がして、提案してみた。
「やったあ、そこに仕事が入らないように、田沢さんに頼もうっと・・・」
乃菊もノリノリである。
「無理しなくていいよ、いつでもいいんだから。まあ、私が生きているうちに連れてってくれればね・・・」
雲江は、笑顔ながらも、そんなことを言う。
「そんなこと言わないでください、お母様。ずっと、元気でいてくれなきゃ・・・」
乃菊は、今にも泣き出しそうな顔をして、そう言う。
「ごめん、ごめん、冗談だよ、乃菊ちゃん。私は、ずっと乃菊ちゃんの母親でいたいんだから・・・」
雲江は、乃菊が本当に可愛かった。
「でしょ。じゃあ、年末ね、国也様」
すぐに笑顔を取り戻す乃菊である・・・。
「あの眼は、みおんを恨んでいるような眼だった」
乃菊は、ベッドで肘をついて横になっている。
「みおんちゃんは、縁で結ばれたのに、まだ切らなきゃいけない縁があるのかなあ?」
国也は、ダンベルで腕を鍛えながら言う。
「ひょっとして、田沢さんかも・・・」
乃菊が閃いたように言う。
「でも、田沢さんは、奥さんを亡くして、妹のみおんちゃんと結ばれたんだから、悪縁なんてあるのかなあ?」
汗を流しながら、鍛えている国也。
「そうだよね。二人ともいい人だし、恨まれるようなことする人たちじゃないし、気のせいかなあ・・・」
乃菊は、布団を被り、国也の様子を見ながらゴソゴソと動いている。
「だけど、みおんちゃんでも、元彼の逆恨みがあったし、田沢さんもいい男だから、誰かに好かれていたかもしれない。そうなると、同じように・・・」
話しながらも、トレーニングを続ける国也。
「まだ、続けるの?」
布団を被った乃菊が聞く。
「もう終わるよ。・・・汗かいちゃったから、シャワーでも浴びて来ようかな」
そう言って、Tシャツを脱ぐ国也。
「ええっ!いいよ、いいよ。そのままで、またここで汗かいちゃお」
乃菊は、布団を開く。
「は、はだ・・・か・・・」
国也は、固唾を呑む。
「そ、そうしようかな・・・」
国也は、また乃菊の機嫌を損ねないように、意を決してベッドに飛び込む。
「キャーッ!」
乃菊が悲鳴を上げる。またへまをしたのか?
「汗でベチョベチョじゃない!」
今さら言う乃菊。
「だから、汗かいたって・・・」
短パン姿で立ちすくむ国也。
「やっぱり、シャワーを浴びて来よう」
乃菊が起き上って、国也の手を握る。
「こんな格好じゃ、下に行けないよ!」
生まれたままの姿と、短パン姿の二人である。
「いいじゃない!自分家だよ、雲ネエは、寝てるし、行こう!」
乃菊は、そのまま国也を引っ張って行く。
「乃菊・・・」
雲江に出会わないように祈りつつ、乃菊と一緒にスリルを味わうことになってしまった国也である・・・。




