初夜?
結婚式の二次会も終わり、夜遅く帰って来た乃菊と国也。
「ねえ国也様。今日が初夜だよねえ?・・・あれ、新婚旅行の時かなあ、それとも婚姻届を出した時かなあ・・・」
国也たちは、乃菊の部屋を寝室にして、ダブルベッドを入れた。そして、初めて二人が一緒に、そこで眠る夜だった。
「今日でいいんじゃない。婚姻届を出した時は、まだ別々に寝てたし・・・、新婚旅行は、まだ先だし・・・。それじゃあ、答えは旅行まで待とうか?」
ベッドに腰掛けて、国也は適当に答える。
「やだ、そんなの!今日よ、今日、今日が初夜に決まってる!」
乃菊は、初夜が先延ばしにされるのが許せない。
「母さんに聞いて来ようか?」
国也は、立ち上がって見せる。
「雲ネエは、もう寝てるよ。こんな時間なんだから・・・」
じれったい乃菊は、ベッドで横になる。
「疲れたね・・・。楽しかったけど・・・」
国也もベッドへ入る。
「ホントに一つのベッドで寝るんだ・・・」
国也は、横になって天井を見る。乃菊も並んで上を見る。
「この部屋の天井は、こんなだったんだ・・・」
天井を見ながら欠伸をする国也。
「眠たくなっちゃったの?じゃ、その前に、暑かったら、パジャマ脱がしてあげるよ」
乃菊は、身体を起こして、国也のパジャマのボタンを外そうとする。
「暑くなんかないよ。脱がしてくれなくていいから・・・」
国也は、横を向く。
「国也様、疲れたなら、肩をお揉みしましょうか?」
乃菊は、起き上って、国也の肩を掴む。
「いいよ、君だって疲れてるだろ」
また上を向く国也。
「ねえねえ、もう解禁ですよ、私・・・」
乃菊は、また横になって、国也に密着する。
「何が?」
国也は、眼を閉じたまま聞く。
「だから、私だってば。今まで、したくても我慢して来たじゃない・・・」
乃菊は、国也の頬にキスをする。
「何、を・・・?」
国也は、眼を閉じたままだ。
「駄目だよ、寝ちゃあ・・・。今日は、最初の日だよ。記念日なんだよ。頑張ろうよ、初体験」
国也は頷き、唇を突き出す。
「やったあ!」
乃菊は、すぐに唇を合わせる。
「初夜のキス。・・・おやすみ・・・」
そう言って、国也は、また横を向いてしまう。
「違うでしょ!その続きだよ、国也様!」
乃菊は、国也の背中に巻きつく。
「可愛いよ、乃菊・・・」
国也は、横を向いたまま呟く。
「ありがとう・・・。てか、そうじゃなくて、私がしたいのは、・・・あれ?」
寝息が聞こえてきた。
「うそお、寝ちゃったの、国也様?」
つんつんと、国也の背中をつつく乃菊。
「寝ちゃったんだ・・・。ま、疲れてるならしかたないか・・・」
乃菊は、掛け布団を国也にも掛けて、天井を見る。
「そんなわけないだろ!初夜なんだぞ、初夜!一生に一度の初夜だぞ!新妻にとって、最初の夜は、記念日なんだぞ!」
乃菊は、布団に潜り、ゴソゴソと動く。
「ふっ・・・」
布団から顔を出す乃菊。
「ヨイショっと・・・」
乃菊は、足で何かを布団の中から押し出した。
「初夜なんだから・・・」
乃菊は、明かりを消した。
床に落ちたのは、パジャマと下着だった・・・。
「ふ、寒い?」
乃菊は、気がつくと布団からはみ出していた。
「まだ、朝じゃないんだ」
むくっと起き上がる乃菊。
「あれ、窓が開いてる・・・」
ベッドから降りて、窓を閉めに行く。
「閉めたはずなのに・・・、もしかして?」
乃菊は、振り返る。
「うひひ、うひひ・・・」
髪の長い女だった。
「久しぶりだね、何年ぶりかしら・・・。でも、こんなところに来ちゃ駄目だよ、出て行きなさい」
乃菊は、窓を指さす。
「うひひ、うひひ・・・」
高校生の時に、幽霊屋敷に居た幽霊である。
「さあ、出てって!」
乃菊は、ワニのような瞳で、女を脅す。
「うひひ、うひひ・・・」
目の前から女の姿が消えた。
「うっ!」
乃菊は、後ろから何かで首を絞められた。
「うひひ、うひひ・・・」
女は、強い力で締め付ける。
「私を、殺しちゃったら、もう、遊べないよ・・・」
気を失いそうになったが、女が離れて行き、乃菊は、首絞めから解放された。
「ふ、何で絞めてたのよ?」
乃菊は、しゃがんだまま、首に巻きついたものを手に取ってみる。
「キャッ、蛇じゃない!」
床をニョロニョロと動き出す蛇。よく見ると、それは・・・。
「マムシじゃないの、この蛇。危ないじゃない、毒があるのよ、この蛇。あんたはいいかもしれないけど。それにしても、今時、よくこんなの捕まえられたわね」
蛇も災難である。
「うひひ、うひひ・・・」
女が、また蛇を捕まえて、乃菊に向かって来る。今度は、蛇の口を開いて握りながら・・・。
「国也様が起きちゃうでしょ!」
乃菊は、机のところまで行き、引き出しを開いて、袋を握る。
「うぎゃあああ・・・」
袋から勾玉と石のペンダントが飛び出す。すると、女は白い煙なって、窓から外へ出て行く。
「ああ、疲れた・・・」
乃菊は、窓を閉めてベッドへ戻る。
「国也様には、内緒だよ・・・」
乃菊は、布団の中で国也に抱きつく。
「初夜だったのにな・・・」
国也が寝返りを打つ。
「わわ・・・」
国也が、乃菊の上に寄りかかって来た。
「・・・」
自分が裸だったことに気づき、触れられて動けなくなってしまった乃菊。
「寝たままでいいから、いっそのこと、襲って・・・」
そんな思いが、寝ている国也に伝わるはずがない。乃菊は、そのまま朝を迎えることになる・・・。




