表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/64

花丸カレンダー

カレンダーの26日だけに、赤く二重丸が書かれている。

「もうすぐだあ。はあやあく、来い来い、ふふふふふ」

今月に入って毎朝、乃菊は、部屋のカレンダーを見て、この調子である。

「乃菊、遅れるから、駅まで送って行くよ!」

国也が、乃菊の部屋の扉を開けて、声をかける。

「はーい。今行きますう・・・」

乃菊は、引き出しから、赤いマジックを取り出し、カレンダーの26日に書き加える。

「やっぱり、花丸でなきゃ!」

カレンダーの26日だけ、花丸になった・・・。


「今日の大人少女23からのコメンテーターは、菊野、乃菊さんです!」

メインキャスター席に座る、アシスタントの女子アナ曽与風みどりが、ゲスト席の乃菊を紹介する。

「よろしくお願いします」

この月から始まった、テレビ東海道の夕方4時からのニュース&情報番組“フォーピーエム”に、大人少女23のメンバーが、隔週ではあるが、月曜日から金曜日まで一人ずつ、コメンテーターとして出演する。

この日、乃菊が初めて担当となったのである。

「今日の特集は、最近結婚願望のない若者が増えたことのリポートですから、月刊ウェディングラブの編集長に来て頂きましたが、大人少女23のメンバーの中でも、一番スキャンダル記事の多い菊野さんですから、若者の一人としていろいろ伺いたいと思いますので、よろしくね」

毒舌で知られる局アナ河野井夢太郎が、含みを持たせた言い方をする。

「はい、スキャンダル担当として、意見を言いたいと思います」

乃菊は、昨日までのメンバーとの対応の違いを感じて、闘争心が湧いていた。


「のぎちゃん、大丈夫かな?誘導尋問されないかな?」

亜美は、事務所の中をうろうろしながら、テレビを見ている。

「刑事じゃないんだから、誘導尋問なんてないよ」

ソファに座る田沢が、笑って言う。

「あのアナウンサー、胡散臭い顔してるでしょ。昨日、嫌な奴だって思ったの。私、あの手の顔は、嫌いなんです」

前日担当だった亜美は、その場で自分の嫌いなタイプだと、感じ取っていたのだ。

「これから何度もお世話になるんだから、少しはいいとこ探しなさい」

田沢と並んで座っているみおんも、落ち着くようにと、指でソファを指さして、座るように促す。

「絶対、のぎちゃんを陥れようと、何か企んでいそう・・・」

落ち着かない亜美ではあるが、とりあえずソファに座る。

「念のため、マネージャーと一緒にジュリアと真阿子も、見学に行かせてるから、もしもの時は、何とかしてくれるよ」

田沢も心配してるんだ・・・。


「じゃ次は、お待ちかねの今日の特集です」

なぜかニヤニヤしている河野井。若手アナウンサーが出て来て、最近の結婚事情についてのリポートをする。

「馬鍋編集長は、この現状をどう思いますか?」

河野井からの質問に、馬鍋は、データの書かれたボードを出して説明する。

「じゃあ、若いわりにはスキャンダルの多い菊野さんは、結婚についてどう思いますか?」

乃菊には、攻撃的なたとえをつけて言う河野井。

「私は、子供の頃から結婚願望が強いです。だから、今の若い人たちでも、実際は、結婚したいんだと思います」

乃菊の本音である。

「で、今、結婚したい人がいるんですか?」

河野井の質問に、隣の曽与風も当惑した表情である。

「なんで、あんなこと聞くのかなあ!」

ジュリアは、ディレクターの後ろで見学していたが、河野井の質問に腹を立てている。

「スクープのターゲットにしてるみたい」

真阿子が言う。

「話題になりたいのね。自分が聞きだしたって・・・」

ジュリアは、腕を組む。

「アイドルでなかったら、もう結婚してるかもしれませんね・・・」

そう言った乃菊は、ジュリアの姿を見る。すると、ジュリアが、口の前で親指と人差し指をくっつけて、横に引く。

「それは、特定の人がいるってことですかね?みんなが知りたがってますよ、きっと・・・」

さらにプライベートに入り込もうとする河野井。

「・・・」

乃菊は、少し考える。

「乃菊ちゃん、言わなくていいよ」

真阿子が呟く。

「あっ!」

曽与風が何かに気づき、横へ逃げる。

「うわっ!」

河野井は、腰をかがめる。

バタン!と音がして、セットの壁がメインキャスター席に倒れ、河野井の姿が見えなくなる。

「大丈夫ですか?」

曽与風が声をかけると。河野井が自分で壁を持ち上げ、立ち上がって来た。

「私は、不死身です。と言うか、こんなセットじゃいかんでしょ!」

本番中に、スタッフに怒っている河野井。

「これは、菊野さんのファンの気持ちじゃないですか?」

馬鍋が笑って言う。

「菊野さんに追及するからですかね。怖いですね、菊野さんのファンは・・・」

まだ、厭味ったらしいことを言う。

「私のファンは、優しい人ばっかりですよ。でも、復帰会見の時も、度の過ぎた質問をした記者さんに、天罰が下ったみたいですけど」

乃菊は、笑みを浮かべながら話す。

「怪我がなくて良かったですね。それでは、次の話題に移ります」

ディレクターの合図で、曽与風が番組を進行する。


「ほら、あの人、乃菊ちゃんを睨んでる。話が聞けなくて、悔しがってるのよ」

亜美は、とことん河野井が気に入らないようだ。

「とにかく怪我がなくて良かったけど、ビックリ何とかって番組に、取り上げられそうね」

みおんは、ホッとしている。


「真阿子、良かったね。話が切れて・・・」

ジュリアは、ホッとして真阿子を見る。

「乃菊ちゃんは、私が守る・・・」

真阿子が呟く。

「何?」

ジュリアが聞く。

「何でもないよ」

真阿子が答える。

その後は問題もなく、無事番組が終了した。

・・・誰にとって・・・?


「良かった。余計なこと言わなくて・・・」

十分余分なことを言っていると思うが・・・。

「これも、花丸を書いたおかげかな!」

乃菊は、笑顔でジュリアたちのところへ向かった・・・。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ