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こんな夜もある

「おぎゃあああ・・・。早く帰って来て・・・」

乃菊は、眼を閉じる。最近、自分自身でも、体調の不良を感じている。身体の中にいる大蛇の影響なのか、それとも何かこの先を暗示するものなのか、不安に思うことが多くなってきた。

「国也様と離れ離れになんて、絶対なりたくない・・・」

なぜだか、涙が零れる乃菊である。


「いつか、殺してやる・・・」

女は、暗い部屋で、パソコンを開いている。

「あった!」

検索内容は、恨みを晴らしてくれる霊・・・。

都市伝説で、恨む相手を呪い殺したり、殺害を実行する霊がいると言われている場所がある。

たとえ人を恨んでいても、実行してしまえば、自分自身へのリスクが大きくなる。そこで、俗に言われる悪霊などが、自分の代わりに恨みを晴らしてくれれば、自分が罪に問われることはない。・・・しかし、そんな霊が本当にいればだが・・・。

「ここは、意外と近いんだ・・・」

日本の中にも、そんな都市伝説がいくつかあり、気味の悪い文字で紹介されている。

その中の一つをクリックする女。

「仇討ち・・・」

女は、ペットボトルのジュースを一口飲んでから、その内容を読む。

「これに賭けてみようか・・・。これで、あの女も・・・」

女は、机の隅にあるフォトフレームを見る。

その写真には、田沢羽流希とのツーショットが収められている。

女は、引き出しから1枚の写真を取り出す。週刊誌のグラビア写真を破り取ったもののようだった。

数人の女の子が写っているその写真の中の一人に、カッターの刃先を当てる。

そして、力を入れて切る。

キーッ。

女は、その女の子の首を切った・・・。


緒張市にある鈴木真阿子の自宅・・・。

「今日は、どうだった?」

帰宅した真阿子の部屋に、母親の緑葉が入って来た。

「今日は、乃菊ちゃんが休みで、亜美ちゃんとみおんちゃんがロケに行って、私とジュリアが、プロモの撮影だったの」

真阿子は、鏡越しに緑葉の顔を見て話す。

「真阿子ちゃん、あなたが乃菊ちゃんと国也さんの縁が切れてしまわないように、しっかりと赤い糸の役割をするのよ」

緑葉が、ドレッサーの前に座る真阿子の肩に手をやり、優しく話しかける。

「わかってる。私は、乃菊ちゃんの影でもあるから、ちゃんと乃菊ちゃんも国也さんも愛してるし、二人のために何でもするつもりよ」

真阿子は、笑顔で答える。

「だからこそ、あなたは、命を大事にしなくちゃいけない。病気にもならず、危険も回避して、二人を見守り続けるのよ」

緑葉は、両手で真阿子の肩を撫でる。

「お父さんは、まだ帰らないの?」

真阿子が聞く。

「今日は祭祀があって、神社の片付けで遅くなってるの」

緑葉が答える。

「祭祀の時も、あの格好でするわけじゃないでしょ」

あの格好とは・・・?

「ふふ、あれは普段着だから、祭祀の時は、それなりの格好をするわよ」

緑葉は笑う。

「良かった。あの格好じゃ、ライブにも呼べないでしょ。せめて神社に来る人の前では、ちゃんとしてほしいの」

真阿子の切実な願いのようだ。

「そうよね・・・」

緑葉は、そう答えて鏡に映る真阿子を見る。

真阿子は、黒い髪の毛を両手で撮り去る。

・・・カツラ?

「やっぱり、よく似てるわね」

鏡に映る真阿子を見て、緑葉が言う。

「こんなつけまつげなんかしなければ、自分でもそっくりだと思うわ」

真阿子は、ピンを取り、髪を下ろす。

鏡に映る真阿子の姿は、乃菊そのものだった・・・。




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