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スキャンダルの行方

数日後、スポーツ新聞の芸能欄に、ちょっとしたスキャンダル記事が載った。

「パッシーさん、今度は、悲劇のヒロイン、菊野乃菊さんが標的ですか!?」

記者たちが、テレビ局に入ろうとするパッシーを囲み、マイクを向けて詰め寄る。

「いや、違うんだよ。復帰祝いをしただけなんだよ!」

こんなことになろうとは、全く思っていなかったパッシー。ちょうど二人きりで店の外へ出た時の写真をスクープされたわけだが、中には、真阿子もいた。今までもこうした記事で痛い目に遭って来たことを思うと、運の悪さを痛感する。いや、自業自得でしょ・・・。

「菊野さんは、交際を受け入れたんですか!?」

この質問、何も進展していないから、なおのこと惨めである。

「だから、鈴木さんと一緒に復帰祝いしただけですって!」

とにかく、言い訳に終始するパッシー。

「菊野さんの事務所は、完全否定していますが、本当ですか?」

次々と質問攻めをする記者たち。

「何回言わせるんだよ、復帰祝いをしただけだって言ってるだろ!」

腹が立って来たパッシー、やや興奮気味になる。

「今回は、誘惑失敗っていうことですか?」

「離婚したばかりなのに、病み上がりの菊野さんを誘惑しようとするなんて、男として恥ずかしくないですか!?」

これは、女性記者だった。

「今回は、本当に復帰祝いです。彼女には、絶対に手を出しません。以上!」

本心ではないことまで言わざるを得なかったパッシー。記者を押しのけて中へ入って行く。


「あっ、菊野さんだ!」

数分後、タクシーが停まって、車の中からマネージャーと一緒に、乃菊が降りて来た。

「菊野さん!」

今度は、乃菊の周りに記者が押し寄せる。

「どうしたんですか?」

相変わらず呑気な乃菊である。

「パッシーさんとのツーショットは、お付き合いしている現場ですか?」

記者が質問する。パッシーの時とは違い、立ち止っている乃菊の周りを、少し離れて取り巻いている。

「真阿子ちゃんと一緒に、ひつまぶしをご馳走になったんですけど、それって、スキャンダルになるんですか?」

乃菊は、逆に質問する。

「じゃあ、パッシーさんに誘惑されたんじゃないんですか?」

乃菊は、腕を組んで考える。

「何も言われなかったと思うけど、面白い方ですし、何度か食事に誘われてたので、たまにはお付き合いしてもいいかなって、真阿子ちゃんも一緒だったから・・・、駄目ですか?」

記者も調子が狂う、乃菊の回答だ。

「駄目じゃないですけど、じゃあ、パッシーさんに、好意は持っていないってことですか?」

記者も諦めずに質問する。

「好意って、恋愛感情のことですか?」

記者が頷く。

「恋愛してる暇なんてないですよ。歌もテレビも店の仕事もあるから、気持ちだけでも疲れないようにしないと、身体が持ちませんから・・・。強いて言うなら、同じスキャンダルなら、おじさんの方が、気にしなくて済むから、楽かな。パッシーさんは、仕事だけのお付き合いで充分ですから、気まずくならないようにしてください。・・・お願いしますね」

微妙な話をした乃菊。記者も考えてしまう。

「それって、パッシーさんよりなのか、おじさんよりなのか、どっちですか?」

「すみません。彼女、まだ体調が良くないので、この辺りで、中に行かせてもらいます」

マネージャーが間に入って、乃菊を連れて行こうとする。

「最後に、そのおじさんは、記事を見て何かを言ってましたか?」

記者も答えやすい質問にしている。

「君も芸能人だなって、言ってました」

乃菊たちは、記者の間を歩いて行く。

「菊野さん、おじさんが好きですか?」

誰かが、乃菊に直球を投げた。

「はい、好きです。だから働いているんです」

乃菊も直球で返す。当然、それに対して記者たちがざわめく。

「それって、恋愛感情ですか!?」

急ぎ足で乃菊を連れて行くマネージャー。それを記者たちが追いかける。

「うわっ!」

急に乃菊が立ち止って振り返と、驚いて転ぶ記者や、機材を落とすカメラマンもいた。

「あ、大丈夫ですか?私はいいんですけど、必要以上に私に関わると、復帰会見の時みたいに、災いが降りかかるかもしれませんよ・・・」

真顔で言う乃菊に、言葉を失う記者たち。

「とにかく、必要があれば、恋愛のことも話しますから、それまでは、皆さんもご無事で・・・。バイバイ・・・」

乃菊は、笑顔で手を振り、テレビ局に入って行く。

「・・・」

記者たちは、しばらく立ちすくんだままだった。


可愛くてミステリアスなアイドル、菊野乃菊・・・。


この取材からは、乃菊の醜聞にはならなかったが、パッシーには、良い薬になったのではないか・・・?

ともかく、真阿子と亜美や加納の奮闘が役に立ち、乃菊たちのプライベートから、少し記者たちの目が離れて行ったようではあるが・・・。

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